屋上の約束|せりふ三題噺
「本当に登るの?」
美香が私の隣で、不安そうに非常階段のハシゴを見上げた。学校の屋上は立ち入り禁止だと言われていた。でも今日だけはどうしてもここに来たかった。
「大丈夫だよ。私が先に行く」
私はハシゴを登り始めた。恐る恐る美香が後に続く。
屋上に着くと、風が気持ちよかった。街が一望できる。
「わあ、きれい」
二人そろって、言葉を忘れた。しばらくして私たちは、互いを見つめ合った後、屋上の端に座り込んだ。
「はい、これ」
私は冷たいソーダを差し出した。二人で乾杯の音を立てる。
「で、話って何?」
美香が聞いてきた。実は、まだ誰にも言えずにいることがあった。来月、父の転勤で転校することになっている。そして、もうひとつ。
「あのね」
言いかけて、また止まってしまう。美香は私の一番の親友だ。彼女に秘密を話すことが、こんなに辛いなんて。
「どうしたの?」
美香が心配そうに覗き込んでくる。
もう隠すのはやめよう。
「ドバッといっちゃお」美香の励ましの声は、私の心の声だった。
私は決心して話し始めた。転校のこと、寂しい気持ち、美香と離れたくないこと。そして憧れの彼に告白しようと思っていること。
美香は黙って聞いてくれた。そして最後に言った。
「寂しくなるけど、でも友達は友達だよ。どこにいても」
私は、知っていた。美香が私と同じ人を好きなことを。
屋上で飲んだソーダの味を、私は一生忘れない。
https://note.com/valley_/n/n20018197c87d
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