見出し画像

消しゴム|シロクマ文芸部

思い出の消しゴムを、私は今も使い続けている。 小学校三年生の時に買ったイチゴの香りの消しゴム。自分のお小遣いで初めて買った文房具。もうだいぶ小さくなって、香りもほとんどしない。でも、まだペンケースに入っている。

もちろん新しい消しゴムもいくつか持っている。きれいな色をしているし、よく消える。 けれどこの古い消しゴムを捨てようと思ったことはない。 最近では、ボールペンを使うことが多いし、なくなってしまうのが惜しくて、使う場面を減らしているけれど、つい手が伸びてしまう。

先日友達に「まだそんな古いの使ってるの?」と笑われた。

あの頃、算数のプリントで間違えるたびに使っていた。消しゴムのかすを指で丸めて、机の端に積み上げるのが楽しかった。 隣の席の田中くんが「いい香りがするね」と言ってくれたっけ。あの時は、嬉しくて顔が赤くなった。

あの教室の匂い、午後の陽だまり、黒板のチョークの音。この消しゴムはそんな思い出をよみがえらせる。大学生になった今、私は田中くんがどこにいるのかすら知らない。

この消しゴムは、中学の時の失恋も。高校時代の苦しかったバレーボール部の合宿も受験勉強もみんな知っている。

消しゴムは使うたびに少しずつ小さくなって、いつかはなくなってしまうだろう。その時、私は思い出も一緒に失ってしまうのだろうか。

代数のノートの間違いをゆっくりと消しながら、私は昔の自分と話している。





#シロクマ文芸部 #思い出の
#共創 #ショートショート #私の作品紹介 #スキしてみて

🧡 スキ 🤝 フォロー 💬 コメント…のいずれかでもいただけたら、とても励みになります!


いいなと思ったら応援しよう!