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「それ、AIに聞けばよくないですか?」にSAPコンサルはどう答えるべきか

この記事の三行まとめ
● 生成AIによって、「答えらしきもの」へのアクセシビリティは一気に高まった
● それでもSAPプロジェクトでは、「答え」より「問い」や「合意形成」が難所として残っている
● だからAI時代に価値が残るSAPコンサルは、「答えを知る人」ではなく、良質な問いで意思決定を前に進める人

この記事でわかること
● 生成AIがSAPプロジェクトで「できること/できないこと」
● AI時代のSAPプロジェクトで、なぜ意思決定が難しくなるのか
● 「答えを出す人」から「問いで前に進める人」になるために必要なこと

生成AI時代、SAPコンサルの価値はどこに残るのか
(答えを知っている人から、問いを立てられる人へ)

「それ、生成AIに聞けばよくないですか?」

ここ半年、SAPプロジェクトの現場でこの一言を聞く回数が増えました。

しかも、言ってくるのは若手だけじゃない。クライアント側の担当者からも、投げ掛けられるようになりました。
正直に言うと、「仕事が減るな」と直感的に思ったんです。

これまでは、SAPの標準機能や論点について、こちらがクライアントより多く知っていること自体に価値がありました。

でも現実はあまり変わっていない。なんなら、さらにややこしくなっている雰囲気もある。

生成AIがあるにもかかわらず、なぜ、プロジェクトは答えに辿り着けないのか。

本稿は、生成AI時代にSAPコンサルとしてキャリアを築こうとしている若手・中堅の皆さんに向けて書いています。

自己紹介

テクノロジーコンサルティング本部の河野(カワノ)です。
これまで20年以上、SAP導入の構想から要件定義、設計〜開発~移行〜運用まで、複数の業界でプロジェクトを経験してきました。
現在は実行責任者や品質保証の立場で、プロジェクト全体を統括しています。

1. SAPプロジェクト今昔物語(楽しかった)

2000年代初頭から、SAP導入は「職人芸」に近い側面がありました。
クライアント企業固有の業務に寄り添いながら、膨大な論点を整理し、意思決定を積み重ねて形にしていく。
当時、現場で強く求められていたのは、たとえばこんな力でした。

  • 要件を言語化し、資料に落とす力

  • 新技術をキャッチアップして適用する力

  • 情報を整理・構造化し、実行に移す力

加えて、若さゆえのタフネスさ。
クライアントファーストの号令のもと、早朝から深夜まで働き、世界中を飛び回った。
……いやー、楽しかった。

2. 生成AIの登場で、何が変わったのか

率直に言うと、私たちの「得意」だった領域の一部は、生成AIがかなりの精度でやるようになりました。

  • 業務要件の整理

  • SAP標準機能の調査

  • 仕様・論点の構造化

  • たたき台資料の作成

  • テスト観点の洗い出し(一定の粒度まで)

  • ソースコードのチェック

かつて若手が(徹夜して)必死にやっていた作業は、生成AIが「それっぽく」出してくる。しかも速い。

さらにERP自体も変わっています。テンプレート化、Fit to Standard、クラウド化、導入作業の自動化……。コアERPの実装は小さく・短くなるケースも増えました。

だからこそ、こんな声が聞こえてくる。
「昔みたいに、人を大量投入する時代じゃない」
「作業はAIがやるなら、人は何をするの?」

……「SAPコンサルに価値はない」

大事なのは、反射的に拒むことでも、ショックで思考停止することでもない。
まず「何が起きているか」を、目の前の事実から正確に捉えることです。

3. 現場で起きている、ちょっと厄介なこと

最近、クライアントからこう聞かれることがあります。
「XX(生成AI)と○○(別の生成AI)に聞いたんですけど、答えが違いました。アクセンチュアはどう思います?」

ここ、ポイントは3つです。

① 生成AIの答えは、揺れる
問い方次第で結論が変わるし、条件を足せば二転三転する。確信を持ったように断言してくることもある。

② そもそも「正解がない問い」が多い
ERP導入の論点は、ロジックだけじゃ決められない。組織の力学、現行のシステム運用体制、現場の慣習、将来の変化、監査対応、部署間の責任分界……。「最適解」ではなく「腹落ちする意思決定」を作る仕事が多い。

③ 知識がないと、善し悪しが判断できない
いくら生成AIが「それっぽい答え」を出しても、問いかける側に前提となる知識がないと、正しさも怪しさも判断できない。

そして経験が浅いメンバが対応すると、次のような状況になります。

  • クライアントからAIが出した質問を浴び続ける

  • 本筋とズレた論点に引きずられる

  • どこまで答えるべきか分からず消耗する

  • 「AIが正しいのか、自分が正しいのか」で揺れる

その後、生成AI同士の「答え合わせ」が延々続く、無限ループが起きます。

4. なぜAIの答えは「それっぽいのに不安」なのか

ここで、私自身の話をします。

私のキャリアはSAPが中心で、若いころは自分で何でもやりました。
だから生成AIを使うと、業務的・技術的な課題の多くは、驚くほど速く答えに近づけます。

ただし感覚としてはこうです。

  • 7割までは速い(仮説の補強・整理に効く)

  • 残り3割は怪しい(条件漏れ、前提の誤り、揺れ、網羅性の欠落)

生成AIは「思考のブースター」にはなるが、「思考の完全な代替」にはならない。

わかりやすい例があります。
わけあって、フランスの税制を生成AIに聞いてみたことがあります。
出てきた答えは、文章としては立派でした。でも、何度読んでもピンとこない。

結局、フランスのプロジェクト経験者に聞きました。「これ、正しい?」って。

なぜか。
私自身に前提となる知識がなかったからです。
その結果、生成AIが出した答えについて、正しさも、怪しさも、判断することができませんでした。

5. それでも残る価値:AI時代のSAPコンサルとは

ちょうど今、私は「生成AI時代のSAP新人トレーニング」を考えています。

議論の出発点として、こんな極端な問いを置いてみました。
「SAPの知識を覚えることに、もう意味はないのでは?」

結論から言うと、これは「半分だけ正しい」。(これ、よく生成AIが言いますよね(笑))

知識を「暗記すること」は目的じゃなくなる。
でも、知識はむしろ必要になる。理由はシンプルです。

生成AIは「キーワード」や「前提」(≒プロンプト)で動く。

検索エンジンで良い検索が良い結果を生むのと同じで、良い問いが良い答えを引き出します。
良い問いを立てるには、結局「知識」や「経験」が必要です。

  • 基幹業務を理解しているか

  • SAP標準機能のクセを知っているか

  • 周辺システムへの影響範囲(内部統制、IF、会計影響・権限)を想像できるか

  • 例外・運用・監査を想定できるか

よく言われる「答えより、問いが大事」です。

6. 「良質な問い」を立てるとは、どういうことか

これは学校の勉強に似ています。数式や光合成の知識それ自体は、あくまで手段です。
価値が生まれるのは、

  • その知識を使って何を考えるか

  • 何を生み出すか

  • 誰を、どの順番で、どう動かすか

  • 結果として何が変わったか

ERP導入プロジェクトは、これが極端に表れる世界です。システムは人が使い、運用は組織が動かす。その責任は人が負う。

だから現場で必要なのは、SAP標準機能の知識だけではありません。例えば、こういう問いです。

  • 「この要件、本当に業務の目的に必要?」

  • 「SAP標準に寄せたとき、現場運用で詰まるのはどこ?」

  • 「この例外処理、監査ではどんな指摘をされる?」

  • 「月次締め、権限、データ移行、IFまで含めた影響は?」

  • 「意思決定者が腹落ちする材料は何?」

生成AIはある程度の答えを出せます。
でも、これらの問いの「中身」や「最終的な判断」は、人が引き受ける部分です。

(プロジェクトはこれの繰り返し)

7. 結局のところ:生成AI時代のSAPキャリア仮説

ここまでをふまえて、私の仮説はこうです。

生成AI時代に価値が残るSAPコンサルは、「答えを知っている人」ではなく、「良質な問いができる人」だと思います。

ここでいう良質な問いとは、議論と意思決定を前に進めるための問いです。
だから、いきなりAIに聞くのではなく、まず問いの質を上げる。

そのために、今日からできる「AI時代のSAPコンサル」3つの習慣をまとめます。

1. AIに聞く前に「前提」を書く

  • 対象業務(どのプロセス/どの範囲か)

  • 制約(プロジェクト/運用体制/スケジュール)

  • 成功条件(何ができればOKか=ゴール)

2. AIの答えを「反証」する問いを必ず足す

  • 例外は?(運用対応の是非、締めタイミング、税対応、権限設計)

  • 影響範囲は?(移行、IF、周辺システム)

  • 監査や統制の観点で、どこが危ない?

  • それで事故るとしたら、どこ?

3. 「誰が決めるか」を問いに含める

技術・ソリューションは決められても、プロジェクトは動かない。
意思決定者が何を気にしているか、どこで腹落ちするかを問いに埋め込む。
※ただ、人間は不条理な生き物なので、生成AIに答えはあまり期待できないかな……。

おわりに:AIの議事録は読まない。でも、手書きメモは読む

プロジェクトを見ていて、一番変わったと感じるのは議事録です。生成AIが作った議事録は、正確で、きれいです。でも正直なところ、あまり読み返されない。

一方で、自分がペンで書いたノートは汚い。みんなで議論して書いたホワイトボードは、もっとめちゃくちゃ。でも、なぜかあとで見返す。

この差は何だろう?と考えると、結局こういうことだと思っています。

価値は「情報」ではなく、「納得」にある。

その納得を作るのは、いまも人間の仕事です。

生成AIは、判断材料を一定の水準で提示してくれる。
でもSAP導入の現場で重要なのは、答えそのものではありません。

その材料をもとに問いを立て、判断し、最後はそれを説明しきることです。

良質な問いの前には、知識や経験があり、その先を想像する力があり、そこから仮説が生まれます。

生成AIの登場で、情報へのアクセシビリティは格段に向上しました。
価値を出す場所は、「知識」そのものから、その先へと移っています。

だからこそ、若手・中堅の皆さんに求められるのは、ただ「情報を集める」ことではなく、知識や経験をもとに仮説を置き、何を問うべきかを考え続けることだと思います。
(結局これって、昔ながらのコンサル本に書いてあることなんですよね)

まとめQ&A
Q1:生成AIが普及しても、SAPコンサルの仕事はなくなるの?
なくならない。AIは整理・調査・たたき台作成などを高速化するが、“判断・納得形成・意思決定の支援”は人間にしかできない。特にSAPは業務・運用・監査・組織構造など多要素が絡むため、「正解がない問いに伴走する力」がより重要になる。
Q2:なぜAIの答えは「それっぽいのに不安」なのか?
・問いの立て方で答えが変わる(揺れる)
・前提条件の不足で網羅性が欠ける
・経験がないと「正しい/怪しい」が判断できない
つまり、AIは“思考のブースター”であって、思考の代替にはならないため。
Q3:AI時代にSAP人材が身につけるべき力は?
1. AIに聞く前に前提を書く力
    業務範囲・制約・成功条件を明確にする。
2. AIの回答に“反証の問い”を追加する力
    例外、監査、権限制御、IF、移行観点など。
3. 誰がどの基準で判断するかを組み込む力
    技術ではなく、意思決定を動かすための問いを立てる。
これらは 「良質な問いを作れるSAPコンサル」 の必須スキル。

著者紹介
著者:河野 智則(Tomonori Kawano)
所属:アクセンチュア株式会社 テクノロジー コンサルティング本部 SAPビジネスインテグレーション グループ
【専門分野】
 - 全社IT企画構想支援
 - BPR支援
 - SAP導入支援(大規模プロジェクト企画構想/実行管理/会計・原価計算領域)
【実績】
 - 製造、ハイテク、通信業界、インフラ・素材業における基幹システム導入プロジェクト(SAPほか)に従事
 - プロジェクト実行責任者、品質保障担当

[参考リンク]
Accenture Technology(アクセンチュア テクノロジー) 記事一覧
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