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ロックバランシング──石を積み重ねて作る繊細ではかないアート

石を絶妙なバランスで積み上げる芸術的表現「ロックバランシング」。
アーティスト池西大輔さんの作品づくりの現場にお邪魔しました。

京都市左京区。賀茂川と高野川の合流地点にある三角地帯、通称「鴨川デルタ」が、ロックバランシング・アーティスト池西大輔さんの活動拠点だ。

「9年ほど前にテレビで見たのをきっかけに、ちょっとやってみようかなと思って始めました。すっかりハマって、毎朝出勤前に石を積んでいるうちに、作品がツイッターで拡散されて話題になり、メディア出演の依頼が舞い込むようになったんです」

川で石を積む楽しみ

一つの作品が完成するまでの一部始終を見せてもらった。

石を吟味して用いたいものをいくつか選んだ後、土台とする石の前にチェアをセットすると、池西さんは足首の上まで水に漬かりながら尻を据えた。完成形のアウトラインは石を集めている最中に思い描くが、制作途中で変えることもあるという。

作品を仕上げる上で意識しているのは「いかに不自然で美しくできるか」ということ。そのため、積み上げる石同士の接点は驚くほどわずかだ。

 

「石の声を聞くことが大切。もう少し右、もう少し前、と手の中の石が教えてくれるんです」と池西さん。バランスの取れる位置を探りつつ、少しずつ石を動かすが、ガラガラと音を立てて崩れ落ちること数度。それでも何の動揺も見せずに池西さんは黙々と石に向き合い続ける。

「結果ばかりを求めていません。完成させられない日があってもいい。過程が楽しいんです。それと、川の流れも雲も、訪れている人も毎日違う。手に取る石とも一期一会。この石はどこから運ばれて自分に積まれることになったのだろう? 長い歴史を持つこの石もこんな経験は初めてだろうな、などと考えたりします。ここで石を積む楽しさはそんなところにもあります」

開始から約30分後、グラグラしていた石の動きがピタリと止まった。手を離しても石積みは倒れない。やさしく水をかければ、石が濡れて違う表情を見せた。

 

奇跡の瞬間を捉える芸術

「出来上がった作品は写真に収めた後、崩して帰ります。そのままにしておくと、崩れて誰かがケガをするかもしれませんから」

池西さんがフッと息を吹きかけると、作品はあえなく崩れて水に沈んだ。

「わずかな風でも倒れるほどに繊細で、はかない。だからこそ、形ある瞬間が奇跡だと思えます」

人生も同じようなものではないかと池西さんは考える。

「積み上げた石が崩れるように命にもいつか終わりが訪れます。だからこそ、生きている今の瞬間瞬間を大事にしたいと思います」

池西さん直伝 ロックバランシングに挑戦!

1)土台となる石を決め、凹みを見つけてそこに石を置く
2)池西さんいわく「石の声を聞きながら」少しずつ動かし、バランスの取れる位置を根気よく探る
3)石のぐらつきが止まる「ここだ!」という瞬間が訪れたら、そっと手を離して完了
1)安定した土台の上に石を2つ、間隔を開けて置く
2)アーチ型をイメージし、手で押さえながらの石の片方を起点に1つずつ石を増やしていき、もう片方の石に着地させる
3)バランスを探り、2人ともが「ここだ!」と思えたら、そっと手を離して完了


池西大輔(いけにし・だいすけ)さん

1974年京都府生まれ。高野整体院院長。ロックバランシング・アーティストと整体師の2つの顔を持つ。自身のSNSで作品を発表する他、新聞や雑誌、テレビなど数多くのメディアに出演。
instagram.com/daisuke__ism
x.com/IsmDaisuke
youtube.com/@nobalance.nolife.254

写真=高嶋克郎


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