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小学校教育が日本人の基礎を作る?映画『小学校〜それは小さな社会〜』の山崎エマ監督の実体験から。

え、掃除の時間がないの?

私が世界にはいろいろな考え方があることを知ったのは、中学、高校を約50カ国の生徒が集まる神戸のインターナショナルスクールで過ごしたからです。「掃除の時間がないな」と思っていたら、放課後に業者さんが掃除しに来たのを見て衝撃を受けましたね(笑)。というのも、小学校までは子どもたちが掃除するのが当たり前な大阪の公立校にいたんです。
それまでは言われたことをやっていたけど、インターナショナルスクールでは自分で考えて動かないといけない。日本の学校とは全く違う環境でした。あとは下敷きがなくてもOK とか(笑)。曖昧なルールと自由さもそこで知りましたね。

映画『小学校〜それは小さな社会〜』のシーンから。ほうきの使い方を教わる

渡米して気付いたこと

当時は、早くやりたいことを見つけなきゃという焦りがあり、中1のときに映画の仕事に就こうと決めたんです。憧れのイチロー選手がアメリカで活躍していたこともあって、高校卒業後は映画制作を学ぶためニューヨークの大学に進学しました。
渡米して驚いたのは、電車が定刻通りに来ない、歩いていると人がよけずにぶつかってくるなど、日本では当たり前だったことが当たり前じゃなかったこと。すると、それまで息苦しく感じていた日本の規律正しさがありがたく感じられ、過去を振り返るうち、小学校教育が日本人の基礎を作っているのではと思うようになったのです。

上履きがきれいにそろえて入れてあるのも日本ならでは?

公立小学校に1年密着

映画『小学校~それは小さな社会~』の舞台は児童数約千人の東京都世田谷区立塚戸小学校。この学校に限らず小学校では、上級生が下級生の面倒を見る習わし(映画では1年生と6年生が主に描かれる)があったり、先生にほうきの掃き方を教わって掃除をしたり、給食の配膳をしたり、児童が協力して生活に関わる作業をこなします。児童が学校運営の一端を担うことで、協調性や責任感を身に付け、社会の一員となるための訓練を行っているのです。
今の教育現場は「児童のありのままを認め、個を尊重すること」が大切にされています。だけど、私にとっては小学生のとき運動会でやった組体操のピラミッドが原点になっています。今では考えられませんが、膝から血が出る子もいたり(笑)。それでも、練習を重ねてみんなで作り上げた時の達成感は自信になりました。実力以上の何かを乗り越える機会を与えられたことにより自己肯定感が増したので、そのような経験を今の子どもたちも体験してほしいです。

階段には上り・下りの矢印が

日本式教育の評価

日本では子どもがいる・いないに関わらず教育への関心が低過ぎると思います。「日本の教育はダメなところばかり」みたいな雰囲気もありますが、その見方は雑過ぎるのではないでしょうか? 
海外では児童自ら教室を掃除したり、給食の配膳を行う国は多くありません。そんな中、掃除・日直制度・学級会などを行う日本式教育「TOKKATSU(特別活動)」は、エジプトの2万ほどの公立小学校で導入され、子どもたちの自主性を伸ばす試みとして高く評価されています。

給食の配膳シーン

映画を通して教育に関心を

私にとってのドキュメンタリーは、私というパーソナルな視点を通して現実を切り取り、見る人に気付きを得てもらうもの。観客に考えてほしいからテロップやナレーションは入れません。
私は日本と、米国をはじめとした海外の事情を見ているので、それぞれの文化を比べて長所短所に気付くことができる。それが強みだと思っています。
日本の教育をどうすればより良くしていけるのか。その答えは私にも分かりません。この映画を通して、少しでも多くの方の教育への関心を喚起できればうれしいですね。

『小学校〜それは小さな社会〜』監督・編集:⼭崎エマ 配給:ハピネットファントム・スタジオ 2024年12⽉13⽇(⾦)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開 shogakko-film.com ©Cineric Creative / NHK /Pystymetsä / Point du Jour

話:山崎エマさん(やまざき・えま)
兵庫県神戸生まれ。イギリス人の父と日本人の母を持つ。大阪の公立小学校を卒業後、中学・高校は神戸のインタナショナルスクールに通う。19歳で渡米、ニューヨーク大学映画制作学部を卒業。日本の小学校を“主人公”にしたドキュメンタリー映画『小学校〜それは小さな社会~』は、約1年をかけて公立小学校に密着取材。フィンランドやエジプトなど海外でも好評を得ている。同映画から生まれた短編版『Instruments of a Beating Heart』は第97回アカデミー賞短編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた。https://www.emaexplorations.com/jp/

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