毎月、同じ椅子に座っている
桃園国際空港、第一ターミナル4階。出国審査を抜けてエスカレーターを上がると、STARLUXのロゴが見える。
帰りの便までまだ2時間ある。毎回、わざと早く来る。
月に一度、台湾に来ている。観光ではない。かといって出張でもない。ただ通っている。友人に会い、夜市を歩き、路地裏で聞こえる中国語に耳を傾ける。それを毎月やっている。
だから空港ラウンジの景色も、もう見慣れた。
扉を開ける。いつもの木目調の内装。いつもの間接照明。いつもの静けさ。旅行者にとってラウンジは「非日常」かもしれない。僕にとっては「いつもの場所」だ。
席に着いて、油飯を頼む。毎回同じものを頼んでいる。台湾らしい、しっかりした味付けのおこわ。ラーメンも豆乳セットも選べるのは知っている。でも帰国前の最後の一食は、台湾の味で締めたい。この儀式だけは変えない。
京盛宇の台湾茶をもらう。香りが高くて、後味がすっきりしている。ペットボトルだからそのまま機内に持ち込める。これも毎回同じだ。
同じ場所で、同じものを食べて、同じお茶を飲む。旅行記としては最悪だろう。変化がない。発見がない。映えない。
でも僕はこの「同じ」が好きだ。
毎月ここに戻ってこられるということは、今月も台湾に来られたということだ。来月もたぶん来る。油飯を食べながら、もう次のことを考えている。次は台北のどこを歩こうか。あの路地裏の店はまだやっているか。友人に連絡しようか。
搭乗時刻が近づくと、毎回同じことを思う。
「もうちょっとここにいたい」。
でも1秒後には「来月も来る」と思い直している。
旅行者にとって空港ラウンジは旅の終わりだ。僕にとっては、次の台湾への接続地点でしかない。帰国便に乗ることは、台湾を離れることではなく、来月の台湾に向けて日本で準備を始めることだ。
スターラックスのこのラウンジは、僕の定位置になった。派手さはない。ただ静かで、清潔で、毎月同じ顔で迎えてくれる。それだけで十分だ。
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この記事は「Taiwan log」マガジンに収録しています。
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