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仮面ライダーWの48-49話見返したらそりゃとんでもないことにもなるわな

仮面ライダーWの48-49話見返したらそりゃとんでもないことにもなるので、その2話について思ったことを書いていきます。

※ヘッダーは23年1月に仮面ライダー展で撮影したものです。



第48話 「残されたU/永遠の相棒」

↑このサブタイ凄すぎる


「残されたU」というサブタイがもうヤバい。

『仮面ライダーW』のサブタイには、必ずアルファベット1文字を含むという法則が存在します。そこで今回は、48話の「残されたU」が意味するもの について考えてみます。


まず、アルファベットのWとUの関係について。

Wを「ダブリュー」と読むのは、
Wの形が2つのUを並べたように見えるため、
double U で 「ダブリュー」と読むようになった
という説があります。すなわち、

U は 「Wの片割れ」 なのです。

したがって、

「残されたU」
=残されたWの片割れ
=左翔太郎 

といえます。これが第一の解釈です。



さらに、Uは二人称「you」の略字としても用いられるので、

「残されたU」
=残されたyou
=残された君

と解釈すれば、残されたU=Wの片割れ=翔太郎 に対する呼びかけ、すなわち48話の最後に登場する〈フィリップが翔太郎に宛てたメッセージ〉の暗喩とも取れます。これが第二の解釈。

僕の好きだった街をよろしく 
仮面ライダー 左 翔太郎! 
君の相棒より

『仮面ライダーW』第48話 「残されたU/永遠の相棒」



そして、Wの前に立ちはだかる最後の敵、ユートピア・ドーパント/加頭順は、Utopia(理想郷)の記憶を宿しています。

ユートピア・ドーパントと仮面ライダーWがそれぞれ辿った運命を、〈2つのUが揃って1つのWになった〉という「ダブリュー」の読みに準えてみると、その結末はきわめて対照的です。

「U」 は、大切な女性と共に
二人でいたいと望みながら、
一人きりで息絶える。

「W」 は、大切な相棒を失って
一人になるが、相棒復活後は
二人でふたたび戦いを続ける。

二人になりたかった「U」 は一人で消え去った。
一人っきりになった「W」は二人で舞い戻った。


すなわち「残されたU」とは、「一人きりの理想郷」に取り残されて死んだユートピア・ドーパントを指しているとも取れます。そしてその末路は、もう一人の残されたU=翔太郎 とは対照的です。これが第三の解釈。


このように、『W』48話のサブタイには、翔太郎とフィリップと加頭のドラマが凝縮されていると解釈できます。どこまでが意図的でどこからが偶然なのかは分かりませんが、どちらにせよ濃いタイトルです。




ハード&ハーフの逡巡

第48話の開始時点で、

翔太郎とフィリップがあと一度でも仮面ライダーWに変身すれば、フィリップは消滅してしまう

ということが判明しています。

ユートピアに攫われた姉・若菜を救うためにも、フィリップ自身は既に変身する覚悟を決めています。しかし相棒を失いたくない翔太郎は、どうしてもこれを呑めません。

見かねた亜樹子の計らいにより、
二人は海岸でお互いの想いを打ち明けます。

フィリップ:なあ、約束してくれ。たとえ一人になっても、君自身の手で、この風都を守り抜くと。

翔太郎:約束なんてできねえ。俺は……自分に自信が持てないんだ。

(スタッグフォンの着信音が鳴る)

翔太郎:ジンさん……?

(翔太郎は軽く咳払いをしてから電話に出る)

翔太郎:なんすかー? 

『仮面ライダーW』第48話 「残されたU/永遠の相棒」

翔太郎はか細い掠れ声で「自分に自信が持てないんだ」と吐露します。そしてその直後、ジンさんからの電話に出る前に、一度咳払いを挟みます。

で、ここで少し気になったのですが、

翔太郎はなぜ咳払いをしたのでしょうか?

重い雰囲気を打破するための繋ぎ、
電話に出る前になんとなく挟んだ癖、
「こんな時に誰だ?」 という若干の苛立ち、
色々な理由が考えられますが、個人的には

掠れ声のままで電話に出たくなかった

のではないかと考えています。

実際、咳払い後の「なんすかー?」という声は、先ほどまでの掠れ声とは全く違う、明るくラフな普段通りの声でした。

すなわち、この何気ない咳払いは、辛い時でも声色ひとつ変えないハードボイルドな男への憧れと、昔から世話になっているジンさんには悲しみに暮れる姿を晒したくないという気丈な姿勢が、無意識に滲み出ている仕草と取れるのではないでしょうか。

第49話において、翔太郎と亜樹子はハードボイルドのことを「ひとりで踏ん張るやせ我慢」と説いていました。ハードボイルドへの憧れとハーフボイルドゆえの哀情が同時に現れたこのシーンは、まさにその一例だと思います。



約束

この会話はさらに続きます。

翔太郎:なんすかー? いま

加頭:来人くんはいますか?

(電話に出たのは刃野ではなく加頭。彼はユートピアの力で刃野や亜樹子を含む風都の人々を既に蹂躙しており、その様子をフィリップに見せつける)

フィリップ:僕のせいで……アキちゃんが……みんなが……

(シュラウドの「あの子が安心して笑顔で消えられるようにしてあげてほしい」という言葉を思い出す翔太郎。嗚咽するフィリップ)

翔太郎:俺のせいだ……ごめんな……フィリップ。

(翔太郎の目つきが変わる。荘吉から託された帽子を手に取り、加頭との決戦に赴く)

『仮面ライダーW』第48話 「残されたU/永遠の相棒」

翔太郎は、フィリップが求めた「一人になっても風都を守る」という約束を、「約束なんてできねえ」と拒みました。その約束を守るということは、すなわちフィリップを失うということだからです。しかし、翔太郎の決断が鈍った隙にユートピア・ドーパントが風都を奇襲。その凶行に涙するフィリップを見て、翔太郎は「俺のせいだ」と呟きます。


恐らくこのとき、翔太郎の脳裏には

〈俺が約束を守らなかったせいで〉

と強く後悔している出来事、
すなわちビギンズナイトの光景が
よぎったのではないでしょうか。

出典:https://www.kamen-rider-official.com/zukan/characters/2822(2025/6/27取得)

ビギンズナイトにおいては、翔太郎が師匠である荘吉から言われた「この場を一歩も動くなよ」という命令を守らずに勝手な決断をしたことが、巡り巡って荘吉の死の遠因になりました。その責任について、フィリップは翔太郎にこう語っています。

フィリップ:君の罪は勝手な決断をしたこと。僕の罪は決断をせずに生きてきたことだ。

翔太郎:フィリップ……

フィリップ:僕たちには一つになって二人の罪を償い続ける義務がある。だからWになったんだろう。

『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』

これを踏まえて48話を見てみると、最期の変身を決断しているフィリップは、「決断しなかった」という己の罪をすでに超克しています。一方で翔太郎は、あの夜とは逆に「決断しなかった」ために、大切な人を危機にさらしてしまったのです。

守れなかった荘吉との約束。だからこそ翔太郎は、せめてフィリップの命だけは、「おやっさんから託された俺の一番でっかい依頼」として、死ぬ気で救おうとしていました。しかしそのフィリップ本人から、「僕の命を犠牲にして変身すること」を約束してほしいと迫られたのです。

荘吉との約束を守れば、
フィリップとの約束が破られる。

フィリップとの約束を守れば、
荘吉との約束が破られる。

どちらかを決断せねばならない。
この板挟みに、翔太郎の心は引き裂かれます。

しかしそれでも、ユートピアの魔手にかかった仲間たち、シュラウドの想い、そしてフィリップの涙を見て、翔太郎はついにフィリップとの約束を守ろうと決断しました。

荘吉曰く「男の仕事の8割は決断」──この時点で、翔太郎のなすべきことはほぼ終わっていたのです。




フィリップを残し、たった一人でユートピアに立ち向かう翔太郎。触れた相手から感情を吸い取れるユートピアは、生身で飛び込んできた翔太郎を嘲笑います。勝利を確信してパンチを繰り出すユートピア。

しかし次の瞬間、翔太郎はその拳を帽子越しに受け止めました。「直接触れなければ感情を吸い取れない」というユートピアの弱点を突いたのです。

出典:https://www.kamen-rider-official.com/zukan/characters/2818(2025/6/27取得)

そしてこの帽子は、荘吉が翔太郎に託したもの。

ビギンズナイトにおいて凶弾に倒れた荘吉が、
「似合う男になれ」という遺言とともに、
翔太郎に被せた帽子です。

そして第48話の翔太郎は、「若菜を救い出してユートピアを倒す代わりにフィリップを失う」ということを覚悟した時点で、「地球に選ばれた子を救い出す代わりに大切な人を失う」というビギンズナイトと全く同じ末路を悟っています。

ただし今度は、約束を破って稚拙に決断したがゆえの過失ではなく、約束を守って「男の仕事」として決断したがゆえの帰結として。

あの夜と同じ状況で、
あの夜に託された帽子が、
あの夜の約束と決断を超える。


ユートピアの拳を受け止めた瞬間、
翔太郎は少しだけ、しかし確実に、
「似合う男」へと歩を進めた。
そんな気がするのです。




たった一人でユートピアを退け、メモリガジェットも駆使して見事に若菜を救い出した翔太郎。そこに合流したフィリップは、笑顔で翔太郎を讃えます。

一方、自らの野望を潰されて激昂するユートピア。
それに対して翔太郎は、次のような啖呵を切ります。

たとえおまえらがどんなに強大な悪でも、
風都を泣かせる奴は許さねぇ。
身体一つになっても食らいついて倒す。
その心そのものが仮面ライダーなんだ! 
この街には仮面ライダーがいる事を忘れんなよ。

『仮面ライダーW』第48話 「残されたU/永遠の相棒」

と、ここで思ったのですが……

この台詞の後半を文字で追うと、
〈フィリップに語りかけている〉
ようにも聞こえませんか?

身体一つになっても食らいついて倒す。
その心そのものが仮面ライダーなんだ! 
この街には仮面ライダーがいる事を忘れんなよ。

まるで、去りゆくフィリップに「俺は一人になっても戦い続けるから、この街には仮面ライダーがまだいることを忘れないでくれ」という餞別を送っているかのように聞こえます。この時の翔太郎は目線こそ加頭に向いていますが、フィリップは彼の背中から、その想いを確かに受け取ったのではないでしょうか。

特に「身体一つになっても」という部分。これは翔太郎が一人でユートピアを出し抜いたことを指すと同時に、先ほどのフィリップの台詞にあった、

フィリップ:なあ、約束してくれ。たとえ一人になっても、君自身の手で、この風都を守り抜くと。

という言葉への返歌としても解釈できます。

翔太郎は、「たとえ一人になっても自身の手で風都を守り抜くこと」を、ついにここで約束したのです。

一人で若菜を救出したのはその有言実行であり、それによってフィリップを安心させて、笑顔で送り出すためでもあるでしょう。

シュラウド:あの子が安心して笑顔で消えられるようにしてあげてほしい。

『仮面ライダーW』第47話 「残されたU/フィリップからの依頼」


約束を破り、軽々しく決断し、師匠を失った男が、
約束を守り、覚悟して決断し、相棒を失う前にその笑顔を守った。

出典:https://www.kamen-rider-official.com/zukan/characters/2819(2025/6/27取得)

こんなにも美しい成長譚があるでしょうか。




一人きりの理想郷

ついにWに変身した翔太郎とフィリップ。

最終決戦において、Wはユートピアを圧倒します。
ジョーカーサイドで先制パンチを炸裂させ、サイクロンサイドに詰まった「フィリップ最期の想い」はユートピアの吸収能力をも超越。結局ユートピアはWに一発のダメージも与えられないまま敗れ去りました。

出典:https://www.kamen-rider-official.com/zukan/phantoms/1334(2025/6/27取得)

メモリを砕かれ、塵となって消えていく加頭。

お前の罪を数えろだと……人を愛することが罪だとでも……?

『仮面ライダーW』第48話 「残されたU/永遠の相棒」



ユートピア・ドーパント/加頭順は、
あらゆる点で仮面ライダーWの鏡像です。


W(ダブルU)に対するU、実在都市「風都」に対する虚構都市「理想郷」など、表面的なモチーフからして逆ですが、その内面はさらに逆です。そしてそれゆえに、彼は『W』のラスボスたりえるのです。


まず、W最大の特徴は「二人」であること。
これに対して、加頭順はどこまでいっても「一人」のキャラクターです。

財団Xで共に働く上司や、一度死んだ自分に蘇生措置を施した部下こそいますが、彼の方から親しみや愛情を感じている相手はいません。唯一、園咲冴子のことは「愛している」と語っていましたが、冴子自身から拒絶されると即座に殺害しました。

2秒前まで心から愛していた人を
「殺す」と決めた瞬間の表情。


出典:https://www.kamen-rider-official.com/zukan/characters/2832(2025/6/27取得)

このような他者との向き合い方は、翔太郎とフィリップのそれとは真逆です。

第48話における翔太郎とフィリップは、決戦の直前までお互いの意見を違えながらも、かといって力づくで相手をねじ伏せるようなことはせず、最終的には心を一つにしてユートピアを倒しました。自分の意のままにならない者を即座に排除しようとした加頭とは対照的です。

すなわち、加頭順という男は
「二人で一人の仮面ライダー」の対極、
「一人で独りの孤独な怪人」と言うべき存在であり、
根本的に他者と共存できる人間ではないのです。

そしてこの「一人」という要素は、
Wの強敵たちの中でもだいぶ異色です。

琉兵衛は家族がいて、克己には仲間がいた。
井坂には冴子がいて、霧彦には雪絵がいた。

加頭には誰もいない。

家族も仲間も恋人もいない。
想い人は自ら殺めたのでもういない。
当然、相棒と呼べる人間など一人もいない。

加頭順は、まさに「数」という点で、
W最大のアンチテーゼだと言えます。




思えば、加頭が手にしたものはことごとく
「落ちる」運命にありました。

ティーカップは床に落ちて砕け散り、
エターナルメモリは克己の手中に落ち、
冴子は首を絞め上げられて地に落とされ、
亜樹子たちは感情を吸われて顔を落とされ、
加頭自身は最期にユートピアメモリを取り落とす。

出典:https://www.kamen-rider-official.com/zukan/characters/2832(2025/6/27取得)

あらゆるものが加頭の手をすり抜けて落ちていく。

どこまでも落ちずに飛んでいくエクストリームメモリや、落ちていく最中に翼を授かったゴールドエクストリームとは対照的です。ユートピアの杖が重力操作を主とするのも、「落ちる」にまつわる因果を感じます。

その手で触れたものすべてを「落として」しまう彼は、ゆえに誰とも手を結ぶことができない。他者を目の前に迎えても、ただ己の手をこまねくだけ。まるでユートピアメモリの図柄そのものです。

「一人きりの理想郷」の図

出典:https://www.kamen-rider-official.com/zukan/items/1925(2025/6/29取得)




そしてユートピア・ドーパントの能力も、
ことごとくWのスタンスとは対照的です。

触れた人間の希望や願望といった生きるための感情を吸い取って蓄え、それを自らのエネルギーに転換することで相手を上回る強さを獲得できる。

出典:https://www.kamen-rider-official.com/zukan/phantoms/1334(2025/6/27取得)

触れるだけで他者を傷つける力。誰とも触れ合えない加頭を体現したかのような能力です。

これに加えて、彼はガイアメモリ・NEVER・クオークスという3つもの力を持っています。人を殺せる力なら沢山持っているのに、人と共に生きる力だけは一切持っていないのです。二人で共に戦うWとはどこまでも逆です。

もっと言えば、
奪った他者の感情を力にするユートピアメモリは、
滾った自分の感情を力にするジョーカーメモリとも
似て非なる関係にあります。
それはすなわち、情に流され・情に涙し・情のままに突っ走る、翔太郎のハーフボイルド精神とも真っ向から対立するということです。

また、ユートピアに感情を吸い取られた者は顔を失ってのっぺらぼうのような状態になりますが、これは「仮面で顔を隠す仮面ライダー」のネガとも取れます。

他者の顔を消して、希望を奪うユートピア。
自分の顔を消して、希望を守る仮面ライダー。

目も鼻も口も、心さえも剥ぎ取るユートピアの力は、涙ラインさえ無に帰す無貌の呪いです。ゆえに彼の存在は仮面ライダーに対する最大級の冒涜であり、ラスボスに相応しい禍々しさを放っていると思うのです。




そんなユートピアは、Wの必殺技「ダブルプリズムエクストリーム」で葬られました。この技は、後に『風都探偵』にて、相手のエネルギー許容量を超過させて自壊させる技だと説明されています。

他者からエネルギーを奪うことしかできない加頭は、そうやって搾取してきたエネルギーの蓄積そのものに引導を渡されたわけです。まさに因果応報。



こう振り返ってみると、彼とUメモリが98%という驚異的な適合率を記録していたのも納得です。ユートピアメモリは加頭順そのものだからです。

そして彼がWに敗れた理由をあえて言葉にするなら、
その答えは実にシンプルだと思います。

1が、1+1を上回れるわけがないからです。





最終話 「Eにさよなら/この街に正義の花束を」

ハーフボイルドの勝利

「最後の変身」によってフィリップは消滅。翔太郎は悲しみに暮れますが、その裏でフィリップは若菜の尽力により一命を取り留めていました。そして一年後、たった一人で風都を守っていた翔太郎の前に、ついにフィリップが帰ってきます。


『W』最終回の白眉は、やはりこの時の翔太郎のリアクションでしょう。

翔太郎がね、爆泣きするんですよ。

フィリップが帰ってきて。

歓喜のあまり。

公共の場で、

人目も憚らず雄叫びを上げる。

全っっっ然ハードボイルドじゃない。

どこまでも半熟、完成されたハーフボイルド。

というか、正直この時はもはや半熟ですらない。

ドロドロでボロボロでグシャグシャ。とれたて生卵。


こっちも泣いちゃうって。
あんな景色見せられたら。



  この結末から気付かされるのは、
『仮面ライダーW』の全体を通じて、
「ハーフボイルド」という言葉の意味が
  最初と最後で180度変わっている
  
ということです。



当初の「ハーフボイルド」は、もっぱら翔太郎の甘さを表す言葉として用いられていました。
翔太郎が48話で「自分に自信が持てない」と吐露したのも、自分の甘さが荘吉の死に繋がってしまったことを、心のどこかでずっと後悔していたからではないでしょうか。
ゆえに「ハーフボイルド」は、当初の彼にとっては軽口どころか十字架であり、自分も荘吉のようなハードボイルドになることで、それを乗り越えようとしたのではないかと考えられます。


そんな翔太郎から「ハードボイルド」と称された男が、荘吉と初期の照井です。しかし荘吉はそれを貫いた結果、命を落とします。また照井は、翔太郎との出会いから程なくして「風都の仮面ライダーの流儀」(≒ハーフボイルド)に従うと決めました。そして何より、荘吉のサイクロンスカルや、照井のサイクロンアクセルエクストリームでは、ミュージアムを打倒できなかったと示唆されています。


一方で、翔太郎は完成されたハーフボイルド。
彼はどう頑張ってもハードボイルドにはなれません。フィリップを喪ってから一年間、「ひとりで踏ん張るやせ我慢」でなんとか誤魔化してきましたが、それでも実際に相棒との再会を果たすと、歓喜のあまり絶叫しながら、大粒の涙を流しながら、張り裂けんばかりに笑ってしまうわけです。これのどこがハードボイルドなのか。

鉄の仮面で涙を隠すハードボイルドではなく、たとえ仮面の上からでも涙の奔流(ライン)がありありと見えるくらいに、とめどなく湧き出る感情のエネルギー。半端で、未熟で、でも誰よりも優しい純情。これこそが翔太郎のハーフボイルドではないでしょうか。

そしてその精神性は、感情のエネルギーで上限を超えるジョーカーメモリと組み合わさることで、唯一無二の強さに変わります。最大の弱さが最大の強さに変わる。嘲られた捨て札が必殺の「切札」に転じ、全ての盤面をひっくり返す。エクストリームに至った時も、テラーのメモリを砕いた時も、ユートピアに一矢報いた時も、Wの「切札」は常に翔太郎であり、彼が秘めるハーフボイルド精神そのものでした。荘吉にも照井にも至れなかった究極のWへと至るための鍵、それがハーフボイルドだったのです。




そして何より、『W』を大団円で締め括ったフィリップの復活というサプライズも、元をたどれば翔太郎のハーフボイルドが影響しています。

若菜は、自らの身を捧げてフィリップを復活させる際、その理由を問われて真っ先にこう語るのです。

あなたの相棒の泣き顔、見てられなかったんですもの。

『仮面ライダーW』最終話 「Eにさよなら/この街に正義の花束を」

この動機がどこまで本心かは分かりません。
冗談めかしているようにも聞こえますし、その後に語った「園咲の使命に一番ふさわしいのは誰よりも優しいあなた」という旨の方がおそらく本意でしょう。フィリップの消滅を知った時点で、遅かれ早かれ彼の復活を計画していただろうとは思います。


しかし、もし仮に、翔太郎がハーフボイルドな情動を持ち合わせていなかったとしたら……

  • 相棒を失った泣き顔を若菜に見せることもなく、

  • 若菜を照井から庇った時、思わず「今彼女を傷つけたらフィリップはなんのために命を投げ出したんだ!」と叫んでしまうこともなく、

  • それによって若菜が「自分をユートピアから救うためにフィリップは消えた」と知ることもなく、

  • そもそも「悪魔みたいなヤツ」だったフィリップが、翔太郎や彼の周りに集まった人々との触れ合いによって人間性を取り戻し、「誰よりも優しい来人」として若菜を救うために身を挺することもなく、

  • ゆえに若菜がフィリップを復活させることもない

という世界線が考えられるのです。


すなわち、翔太郎のハーフボイルドこそが、
フィリップの復活を導いたのだと言えます。


第48話で迎えた「相棒を失った悲しみを背負ったまま孤独に戦い続ける」という結末は、それはそれで極めてハードボイルド的な展開でしょう。相棒のマツを失い、二度と家族と触れ合えない悲しみを背負ったまま戦い続けた、荘吉の半生そのものでもあります。

しかし『W』はあくまでハーフボイルドが切り開く物語。だから、第48話まででは終われないのです。その先に、ハードボイルドだけでは勝ち取れなかった景色があるからです。絶対に第49話が必要です。

すなわちフィリップの復活とは、

ハードボイルド譚としては蛇足かもしれませんが、
ハーフボイルド譚としては必然の大団円なのです。

第49話における、お世辞にもハードボイルドとは言えない翔太郎の大号泣。それは、彼がハーフボイルドだったからこそ掴み取れた最高の未来であり、『W』の集大成にふさわしい結末だと思います。




最後までサブタイ凄すぎる

「Eにさよなら/この街に正義の花束を」って凄すぎませんか。
いや、単純な響きだけでもめちゃくちゃカッコイイんですけど。

何がいいかって「花束」ですよ。
花束。ただの花じゃなくて、束。
一輪だけの花なら「束ねる」とは言わないでしょう。
花を「束ねる」ことができるのは、少なくとも二輪の花が揃った時から。
そう、 二輪です。



二輪の花束、すなわち翔太郎とフィリップの二人。


それだけではありません。


二輪
はバイク、すなわちライダーの象徴でもある。



───この街に、「二輪」の花束が帰ってくる。

出典:https://www.kamen-rider-official.com/zukan/items/1852(2025/6/28取得)


第49話の内容を踏まえると、「この街に正義の花束を」というフレーズはこれ以上ないくらいしっくりきます。意図的だとすれば見事なダブルミーニングです。


そして、「Eにさよなら」については……
このワード自体が、49話のラストカットに
紐づけられるのではないかと考えています。
それはすなわち、









『W』の終幕(Ending)に、

街を泣かせる悪党(Evil)に、

二人が永遠(Eternal)に 投げかけ続ける

「さよなら」の言葉────










さぁ、お前の罪を数えろ!



出典:https://www.kamen-rider-official.com/zukan/kamen_rider_members/289 (2025/6/28取得)




というわけでW48-49話の感想でした。

全49話のうちたった2話ですが、
普通に1万字書いてました。長。

「仮面ライダーWの48-49話見返したらそりゃとんでもないことにもなるわな」と銘打ちましたが、そりゃとんでもないことにもなりますよね。情緒がね。だって大好きな作品ですから。

『仮面ライダーW』は永遠です。
その記憶はこれまでもこれからも、
少なくともこの地球がある限り、ずっと。



ここまでお読みいただきありがとうございました。


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