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和魂和才の経営(89)|営業・売上編vol3【3/4】聞く力とは疑う力です。

前回は、ターゲットを絞り、努力のベクトルを顧客に合わせる「3C・STP」のお話をしました。
「よし、これでお客さんの声(VOC)をしっかり聞いて、要望に応えるぞ!」 そう意気込む経営者や営業マンに、私はあえて冷や水を浴びせるようなことを言わなければなりません。
「お客様の言うことを、真に受けてはいけません」
営業において、最も危険なのは「素直に聞きすぎる」ことです。 なぜなら、お客様自身も「自分が本当に解決すべき課題」に気づいていないことが多いからです。
1. 顧客は「ドリル」が欲しいと言いながら「安さ」を求める
有名なマーケティングの格言に「顧客は4インチのドリルが欲しいのではない。4インチの穴が欲しいのだ」というものがあります。
しかし、現場ではさらに複雑なことが起きています。 お客様は「4インチのドリルを、どこよりも安く持ってきてくれ」と言います。 ここで、素直すぎる営業マンは「はい!頑張って値引きします!」と応じます。これが「御用聞き」です。
一方で、できる営業(参謀)は、その言葉を一度「疑い」ます。 「なぜ、安さにこだわるのか?」「そもそも、なぜ穴を開けたいのか?」
もしかすると、穴を開けたい理由は「部品を固定したいから」かもしれません。だとしたら、穴を開けずに強力な接着剤を使ったほうが、工程もコストも劇的に改善する可能性がある。
お客様の「安くして」という言葉の裏には、必ず「今のやり方に対する不満や不安」が隠れています。それを引き出すのが「聞く力」の正体です。
2. 「安くして」は「助けて」のサイン
お客様が「安くして」と言うとき、それは「あなたの提案に、価格以上の価値を感じていない」か、「社内を説得するための強力な理由(大義名分)が欠けている」かのどちらかです。
「はい、わかりました」と安易に引き下がるのは、誠実(和魂)なようでいて、実は思考停止です。 「この人は言われたことしかしてくれない。じゃあ、値段で勝負してもらうしかないな」と、お客様に思わせてしまっているのです。
本当の「聞く力」とは、相手の表面的なリクエストを疑い、その奥底にある「真意」を掴み取ること。
では、具体的にどう行動すべきか?

現場の営業マンに伝えてあげてください。 「お客様の言葉を、そのまま録音して持ち帰る『マイク』になるな」と。
お客様は、不満や要望を「素人の言葉」で投げてきます。 それを、プロの知識(和才)を使って、「技術的な課題」や「経営的な解決策」に翻訳して社内に持ち帰るのが、営業の仕事です。

  • 客:「なんか使いにくい」 ↓(翻訳)

  • 営:「操作パネルのUIが複雑で、作業ミスを誘発しています」

ここまで解像度を上げて初めて、技術部門(開発)も「よし、改善しよう!」と動けます。
4. まとめ:聞く力とは、疑う力である
「和魂和才」の営業において、「和魂(誠実さ)」とは、言われたことをやることではありません。 相手のことを真剣に想うからこそ、「本当にお客様のためになるのか?」と、相手の言葉を一度疑うことです。
「安くして」と言われたら、「もしかして、他のことでお困りなんじゃないですか?」と切り返してみてください。 そこから始まる対話こそが、本当の商談です。
次回予告 「マインドも変えた。ターゲットも絞った。聞き方もわかった。でも、結局どうやって契約まで持っていくの?」 最終回は、これらを統合し、偶然に頼らず必然的に売上を作る「プロセスの科学(営業の標準化)」について解説します。


【最後までお読みいただき、ありがとうございます】
「今まで『はい!安くします!』と即答していた……」という方。 その素直さは美徳ですが、明日からはそのエネルギーを「質問」に使ってみてください。
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