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自閉症の子どもと家族を救うABA療育|ローリー・ユーナムが切り開いた保険改革と日本の課題

先日、JICA横浜で 自閉症とABA(応用行動分析学)に関するシンポジウム が開かれました。
これは、日本で初めてとなる ABA国際会議「つなげるABA自閉症サミット」(函館開催)に向けたプレイベントとして企画されたものです。

私はその場で光栄にもモデレーターを務めさせていただきましたが、本当に心を揺さぶられる時間でした。
中でも特に忘れられないのが、 アメリカでABA療育を医療保険の対象にする法律を実現させた立役者、そして 自閉症の息子を育てる母であり弁護士 でもある、ローリ・ユーナムさんの講演です。

私はこれまで「アメリカでABA療育が保険適応なのは、アメリカがASD(自閉スペクトラム症)とABAの理解が進んでいるからだろう」と考えていました。けれど実際には、ローリーが十年以上にわたり全米を奔走し、母親として、そして弁護士として、粘り強く働きかけ続けた努力の結果だったのです。

1人の母の声が法律を変えた

ローリーの長男ライアンは、2歳前に自閉症と診断されました。
医師からは「集中的なABA療育が必要」と告げられましたが、その費用は年間約一千万円。夫婦ともに弁護士だったユーナム夫妻でさえ、その負担は大きすぎました。

私たちですら払うのがやっとなのに、ほかの家庭はどうなるの?
同じように困っている家族を助けたい!

そこでローリーは、キッチンテーブルに座りながら法案の草案を書き始めました。
「ライアン法」と呼ばれるこの法律はやがて成立し、ついには全米50州でABAが保険で受けられる道を切り開きました。

草の根の力 -- 脳も臓器のひとつ

最初はなかなかうまくいきませんでした。
当初は保険会社や議会から強い反対がありました。
「ABAをカバーしたら保険料が上がる」という声に対して調査を重ねたところ、実際の負担増は 国民一人あたり月に数十円程度

子どもたちの未来を守るために必要なお金が、ジュース一本より安い

ローリーはこの事実を示し、反対の声を打ち破っていきました。

また「自閉症は教育の問題であり、医療の責任ではない」という偏見に対しても

医療保険は体の不調を治すためのもの。
心臓や腎臓の病気と同じように、脳の機能に違いがあるASDも、臓器の不調なのだから、その脳の機能を治療するABA療法も、他の治療と同様に、医療保険でカバーされるべき。脳も、体の大切な臓器の一つなのだから。

こうして少しずつ「自閉症は医療的支援を受けるべき対象だ」と、多くの人に認めさせたのです。

ABAが家族にもたらしたもの

講演では、ライアンの成長についても語られました。
幼い頃のライアンは攻撃的な行動も多く、外出や外食に行くことさえ難しい日々。家族の生活は制限だらけでした。

アメリカでABA療育が広まったきっかけとなった有名な論文、1987年のロヴァスの研究(UCLA Young Autism Project)では、2〜4歳の自閉症児に対して、週40時間以上の集中的なABA療育を2年以上行ったところ、約47%の子どもが通常学級に通えるようになったと報告されています。(ちなみに、療育を受けなかった子どもではその割合はわずか2%程度でした。)
その後の追跡研究や再現研究でも、20〜40%の子どもが通常学級に移行できる という結果が報告されています。

ローリーはこう言いました。

ライアンはABAの療育を続けていたものの、この47%には入れませんでした。でもABAのおかげで、彼は大きく成長しました。
家族で外食や旅行にも行けるようになり、私たちの生活はずっと穏やかで幸せになったんです。それが私たち家族にとって一番大切なことです

ABAはASDをなくす魔法ではありません。
でも、子どもと家族が安心して暮らせる未来をつくる力があることを、ローリーは強く訴えていました。

質の悪いABA療育では、子どもも家族も救えない

保険が使えるようになると、新たな問題が現れました。
ABAの専門性が十分でないまま療育を名乗る人たちが参入したり、コストを抑えるためにサービスの質を落としてしまうケースも出てきたのです。

質の悪いABA療育では、子どもも家族も救えない

そう考えたローリは、今度は 質を守る活動 に力を注いでいます。現在は、自閉症サービスの質を高める国際団体 CASP(Council of Autism Service Providers) の代表として、ガイドラインづくりや専門家教育を進めています。

日本の現状と私の挑戦

実は日本も同じ課題を抱えています。ABA療育を体系的に学べる専門教育機関が少なく、ガイドラインも存在していないため、なんちゃってABA」が広がってしまっています。

だからこそ私は、IBAO(国際行動分析機構)日本支部 で、

  • 科学的に正しいABAを広めること

  • 倫理を守る専門家を育てること

  • 家族が安心して支援を受けられる仕組みをつくること

に挑戦しています。

ローリがアメリカで道を切り開いたように、私も日本で 「本物のABA」 を広げていきたいのです。

一人の母の声が社会を動かしたように、私たち一人ひとりの声や行動からも、きっと新しい一歩が生まれます。

今回のサミットは、ただの学術イベントではありません。
日本に正しいABA療育を根づかせるための、大切な第一歩 なのです。

IBAO講座、いよいよ近日公開!

そしてその流れの中で、数ヶ月後に
IBAO(国際行動分析機構)の「行動療法士」講座を一般公開する予定です。
ご家庭でも、支援の現場でも安心して使えるように、正しいABAを一緒に学べる場にしていきたいと思っています。

興味を持ってくださった方は、ぜひ続報を楽しみにしていてください。
ここから始まる変化を、ぜひ一緒に作っていきましょう。


ローリーとご主人のダン
二人ともとっても気さくな楽しい人たちです!



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