涅槃図──極楽浄土とお釈迦さんの最期がひとつに
重要文化財 陸信忠(りくしんちゅう)筆 南宋時代・13世紀
絹本著色金泥 縦157.1cm×横82.9cm 奈良国立博物館

この絵に描かれてるんは、お釈迦さんが亡くなる場面、「涅槃(ねはん)」や。せやけど、よう見てみると──あれ? なんやちょっと違うやん? いわゆる定型の涅槃図とは、雰囲気も描かれ方もだいぶちゃうんよ。
異国ふうの人が踊ってる!?
特徴はこんな感じやで:
沙羅双樹の代わりに宝樹(極楽モチーフ)が立っとる
釈迦の周囲の弟子衆には、さほど悲しみの表情がない
胡人(こじん)風の人物が、香炉を挟んで舞う(胡人=中国から見た西方・中央アジア方面の人々)
涅槃の場面で人びとが舞うなんて、ふつうの涅槃図ではめったに見られへんで。
誰が描いたん?
右下付近に「慶元府車橋石板巷陸信忠筆」と落款がある。慶元府(今の寧波)で活動しとった仏画師・陸信忠の筆やとわかるんや。この人は日本にも作品がよう渡っとって、本図も伝来ののち、愛知の宝寿院に伝わったんやで。
彩色がものすごい
色づかいがとても鮮やかで、金泥も要所に使われとる。細かい文様もびっしりや。雲の湧き出すような描写や、供養台を真ん中に置いた群像の構図なんかも、定型の涅槃図とはちょっと違う雰囲気やな。
👀ここにも注目!
この絵で一番おもしろいのは、涅槃の場面に“極楽のしるし”がしれっと混ざっとるところや。沙羅双樹の代わりに立つ宝樹は、『観無量寿経』に説かれる極楽の景そのもん。つまり、お釈迦さんの最期と極楽のイメージを一枚に合わせたんやな。異国ふうの人びとも描かれて、南宋時代の国際色と信仰観がギュッと詰まった一幅になっとるんやで。
