クリスマスに牛丼
去年の冬の話をする。
12月24日、仕事を終えて家に帰ると、家の中は静かだった。
妻と娘は、友人宅に呼ばれてクリスマスパーティーに出かけていた。
テーブルには、夕食が置いてあった。
吉野家の牛丼のレトルトと、スーパーで買ったカット野菜。
温めるだけでいい状態で、ごはんにはラップがかけてあった。

クリスマスに、牛丼だった。
責めるつもりはない。忙しい中で用意してくれただけでも、十分だとは思う。
ただ、せめてチキンや、ピザくらいは食べたかった。
年に一度のクリスマスくらいは、多少浮かれた食事でもいいのではないかと思った。
冷蔵庫を開けると、ショートケーキだけは置いてあった。
一人分、きちんと箱に入って。
イチゴが乗った、ごく普通のショートケーキだった。
レンジで牛丼を温める間、リビングは静かだった。
温め終わった牛丼を、カウンター席で一人で食べた。
クリスマスらしいものといえば、あのケーキだけだった。
誰かと分け合うためのケーキではなく、最初から一人分として置かれていたものだ。
不満というほどのことでもない。
ただ、牛丼とショートケーキという組み合わせが、あの夜の自分の立ち位置をそのまま表しているような気がして、妙に記憶に残っている。
今年もまた、同じような夜が来るのかもしれない。
そのときは、せめて牛丼ではなく、チキンくらいは自分で買っておこうと思っている。
