M字と頭頂部で選ぶAGA治療薬は違う|フィナステリドとデュタステリドの使い分け
鏡の前で、前髪をかき上げる。
生え際の角が、去年より深くなった気がする。あるいは、洗面所の合わせ鏡で頭頂部を見ようとして、うまく見えないまま諦める。
そして「フィナステリド デュタステリド どっち」と検索する。
この順番、よくあると思います。薬を選べば解決に近づく気がしますから。
ただ、薬を選ぶ前に決まっていることがあります。自分の薄毛が、M字なのか頭頂部なのか。どの部位から進んでいるかによって、向いている薬が変わります。
5α還元酵素には2つの型がある
AGAの原因は、DHT(ジヒドロテストステロン)です。
テストステロンが5α還元酵素と出会うと、DHTに変換されます。このDHTが毛乳頭のアンドロゲン受容体と結合し、毛の成長を抑える信号を出す。
ここで重要なのが、5α還元酵素にはⅠ型とⅡ型の2種類があるということです。
フィナステリドはⅡ型だけを阻害します。デュタステリドはⅠ型とⅡ型の両方を阻害します。
だからデュタステリドの方が、DHTの産生をより強く抑えます。
2つの薬の作用の違いは、フィナステリドとデュタステリドの違いと選び方でも整理しています。
M字と頭頂部で効く薬が違う理由
問題は、この2つの酵素が頭皮に均等に分布していないことです。
頭頂部の毛包にはⅠ型が相対的に多いとされています。前頭部ではⅡ型の影響が大きいとされる。
つまり、頭頂部が薄くなっているなら、Ⅰ型も阻害できるデュタステリドの方が、理屈の上では届く範囲が広い。
前頭部の後退が主なら、Ⅱ型を阻害するフィナステリドで、原因の中心に作用できる。
「デュタの方が強い」という話は、この意味では正しい。ただ、強い薬が自分に合う薬とは限りません。
M字にフィナステリドを勧める、もう一つの理由
薬理だけで言えば、M字にもデュタステリドを使えばいい、という話になります。Ⅱ型も阻害するのですから。
それでも私がフィナステリドから始めることを勧めるのは、別の理由です。
フィナステリドの方が、処方価格が安いクリニックが多い。
AGA治療は、続けている間だけ効果が維持されます。やめれば、進行は再び始まる。2年で終わる治療ではありません。
薬を作る側にいたとき、私たちが評価していたのは有効性と安全性でした。でも実際に薬が効くかどうかは、その前提として「飲み続けられるか」で決まります。臨床試験の被験者は決められた期間服用しますが、日常の治療にそんな管理はありません。
完璧な薬を選んで3ヶ月でやめる人と、次善の策を5年続ける人。後者の髪が残ります。
月々の負担が軽い方が続けやすい。これは薬理より現実的で、そして結果を左右します。
M字と頭頂部が両方進んでいる場合
M字と頭頂部の両方が薄くなっているケースは、珍しくありません。
この場合は、Ⅰ型・Ⅱ型の両方を阻害できるデュタステリドから始める方が、対応できる範囲が広い。
それでも6ヶ月後に効果が不十分だと感じるなら、ミノキシジルの追加を検討する段階です。
フィナステリドやデュタステリドは、DHTの産生を抑える薬です。守りの薬と言ってもいい。ミノキシジルは毛包の血流を改善し、成長期を延ばす。攻めの薬です。
作用する場所がまったく違うので、併用すると互いを補います。
ミノキシジルには塗るタイプと飲むタイプがあり、効果と副作用が異なります。ミノキシジルは飲む薬と塗る薬どっちがいい?で整理しました。
なお、ミノキシジルの内服薬は、日本ではAGA治療薬として承認されていません。処方を受ける場合も、医師の管理下で使う薬です。
ここまで書いて、困ることがある
部位によって薬が変わる、という話をしてきました。
でも、自分がどの部位から進んでいるかを、正確に把握している人はほとんどいません。
後頭部から自分の頭頂部を見ることはできません。合わせ鏡でも、角度と照明の限界があります。毎日見ている顔まわりは、変化に気づきにくい。
M字が気になっている人が、頭頂部も同時に進行していることに気づいていない。あるいはその逆。よくあることです。
日本皮膚科学会のガイドラインでも、AGAの診断では経過や家族歴に加えて、生え際の後退、前頭部・頭頂部の毛髪が細く短くなっているかを確認するとされています。頭皮全体を見る、ということです。
薬理の研究でも、一つの測定値だけで結論は出しません。複数の所見を重ねて判断します。
自分の頭皮についても、同じことが言えると思っています。
自分がM字か頭頂部か、確認してから薬を選ぶ
薬の選択は、パターンの把握が終わってから始まります。
順番が逆になると、M字だと思ってフィナステリドを飲み続けて、実は頭頂部も進んでいた、ということが起きる。
AGAクリニックの初診カウンセリングは、多くが無料です。マイクロスコープで頭皮を拡大して見れば、細く短い毛がどこに増えているかが分かる。ハミルトン-ノーウッド分類のどの段階にいるかも、その場で示されます。
費用はかかりません。診察を受けるまでは。
自分のパターンを知る。それだけで、薬選びの精度が変わります。
あわせて読みたい
→ ミノキシジルは飲む薬と塗る薬どっちがいい?効果と副作用の違い
→ AGA治療は何歳まで有効?40代50代でも手遅れではない理由
参考資料
日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」
※この記事は一般的な情報提供を目的としています。診断や治療については医師へご相談ください。
