見出し画像

鍋の具は シロクマ文芸部


いぬまに   【500字】

「鍋の具は? だって? 食ってみりゃわかるってもんよ」
 大男は大きなヘラで鍋をかき回す。たしかにこれまでにはない、いい匂いがしている。
 口に放り込むと、肉がトロリと舌の上にほどけた。よくもこんな上等な肉があったもんだ。
 どうしたんだい? と大きな湯気の向こうに問いかけると、そいつはガッハッハと笑った。
「昨日、浜を散歩してると小舟が沖でゆらゆらしてたのさ。誰も乗ってねえようだった。浜に打ち上げられるのはわかってたから、しばらく経って行ってみると、案の定波打ち際で遊んでやがった」
「そこに肉がのってたって?」
 男はまた大きな声で笑った。何につけても豪快なやつだ。
 俺はお腹をたっぷり膨らませて、湯気の向こうにごちそうさまと言った。

 この島に逃れて来て一年が経つ。すっかり島の風習には慣れたが、食い物はどうも合わなかった。これを機に食事にも慣れればいいのだけれど。
 翌朝、潮が引く前にということで鍋の片付けを手伝った。大鍋は一人では持ちきれないほどの大きさだ。
 顔色の優れない男と二人で浜辺まで鍋を運び、次から次へと骨を海に放り込む。最後の丸い骨を男が手に取り、振りかぶった。
「青鬼ぃ、て、てめぇ。共食いさせやがったな!」
     了


知らねえよ


30日からアドベントカレンダー企画、始まるよヽ(´▽`)/


わって?


小牧部長さま
よろしくお願いします


いいなと思ったら応援しよう!