曼珠沙華は恋をする 毎週ショートショートnote
曼珠沙華は恋をする 【410字】
ふらふらとこの町にやってきた。それはたぶん帰巣本能のようなものに導かれて。
記憶にない森を毒の香りに任せて進んだ。
脚が、腹が、身体中が悲鳴を上げ、やがて開けたところに出ると、ついに倒れ込んだ。
どうしてここなのだろう。僕の思考も行動も夢の中までも、振り払っても何もかもがここに収束していく。
湿った土の匂いに目を開けると、やわらかい地面からいくつもの赤い花火が開いていた。なにかを祝うように、呪うように。
一年前、あの時は僕にもプライドがあった。短絡的だと笑ってくれたらいい。それで僕は満足だ。君を捕まえたのだから。
そもそもどうして君をここに連れてきたのかがわからない。それはもう定められていたとしか言いようがない。
僕はもうきっとここから離れられない。四六時中、横たわった君を思い描いていた。
無数に開いた満面の花火が僕をここに呼んだのだ。僕をここに埋めるために。
君を祝福する曼珠沙華は僕を呪う。血の色の言葉を花火にして僕を祟る。
了

たらはかにさま
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