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midorinohappa
【ショートショート】 『消しゴム大増殖』
「なにこれ?」
彼女に言われて、リケルは慌ててそれを奪った。
「か、かってに見るなよ」
「いいじゃない。なによ。あ、日記帳? 見せてー」
「だめだ。見るなよ!」
小学生の頃、リケルは好きな女の子の隣に座ったことが一度だけあった。
ある日、その子が消しゴムを忘れてきた。
「消しゴム忘れちゃった」
「貸してあげるよ」
「ありがとう。あ、この消しゴムかわいい」
匂い付きのケーキ型の消しゴムをかわいいと言われ、リケルはそれからお小遣いを消しゴムに費やすようになった。いつかまた彼女が消しゴムを忘れた日に貸せるようにと思って、かわいい消しゴムを見つけては買っていたのだ。カンペンケースは消しゴムだらけになった。
だが、二度と消しゴムを貸す日は来なかった。
日記にはそんな切ない日々の思いが綴られていた。
彼女が帰ると、リケルはその黒い歴史の書かれたページを消した。幸い、消すための消しゴムには困らなかったという。
