Photo by
tomekantyou1
【ショートショート】 『夢の危機一髪』
老人ホームで、元スパイと元爆弾処理班と元理容師とが話をしていた。
元スパイが言った。
「俺はスリルに憧れてスパイになったんだが、危機一髪の事態になったことなんて一度もなかったな。隣国でひたすら新聞を読み解いて本国に報告するだけの生活だった」
元爆弾処理班も言った
「俺も『赤い線を切るか青い線を切るか』みたいのにあこがれて爆弾処理班になったが、そんな事態なんてまったくなかったよ。それどころか、この国で爆弾事件そのものがなく、日々訓練をするだけで一生をすごしてしまった」
「そういう点では、俺がいちばんスリルのある人生を送ったな」と言ったのは元理容師であった。
元スパイと元爆弾処理班は笑った。
「おいおい。理容師のどこがスリリングだっていうんだよ」
すると元理容師は言った。
「俺の理髪店、磯野波平さんが通ってきてたんだ」
「#爪毛の挑戦状」
