朗読劇 『カフェのスパイス』
【登場人物】
・ユイ(女):カフェでアルバイトをしている女子高生。新メニュー開発に励むが、よくドジを踏む。
・ソウタ(男):カフェの常連で、大学生。落ち着いた性格だが、お人よしでユイの実験台にされがち。
・マスター(男):カフェの店主。温かい性格。料理の腕は良いが、よく仕入れついでに仕事をサボる。
・朗読者:状況やナレーションを担当。
【本編】
朗読者: ここは駅前の小さなカフェ。今日も一人の常連客が足を運んできた。
(カランコロン……ドアの開く音)
ソウタ: 「(ホッとした様子で)やっぱりこのカフェ落ち着くなぁ。さて、いつものマスターの名物ドリンクを――」
ユイ: 「(カウンターから顔を出して)いらっしゃいませー! あっ、ソウタさん!」
ソウタ:「(戸惑いながら)あれ、ユイ? マスターは?」
ユイ:「(ニコニコ)今日はちょっと仕入れで外出中! だから代わりに私がドリンク作るね!」
ソウタ: 「(警戒しながら)……いや、待って。その『代わりに』の部分が不安なんだけど。先日もシュークリーム作ろうとして、砂糖と間違えてクリームにクエン酸入れたよね。初めて食べたよ、あんな酸っぱいシュークリーム」
ユイ: 「(キラキラした目で)今度は大丈夫! マスター直伝のレシピ、ちゃんと見て作るから!」
ソウタ: 「(思い出すように)あのドリンクって、甘さと爽やかな酸味のバランスが絶妙で、最後にピリッとスパイスが効いてるのがいいんだよな。ちょうど先日テストが終わったところだから、疲れた身体に効かせたいんだよね。レシピがあるから大丈夫かな、今度は」
ユイ: 「(自信満々)そうそう! だから安心して待っててね!」
朗読者: ユイは張り切ってカウンターの奥へと消えていった。
(しばらくして、ガチャガチャと不穏な音が聞こえる)
ユイ:「(少し焦りながら)えっとー、こっちのボトルが……あれ? どっちだったっけ? ま、いいや! よし、完成! ちょっと色と香りがいつもと違うけど、多少の違いは問題ないでしょう!」
ソウタ: 「(心配そうに)……なんか音がすごいんだけど?」
朗読者: そうして完成したのは、透き通った琥珀色のドリンクだった。
ユイ:「(得意げに)できたよ! さあ、どうぞ!」
ソウタ:「(ホッとしながら)お、見た目は普通……じゃあ、いただきます。(飲む)」
(間)
ユイ:「(調理に使った瓶を眺めてハッとして)ああっ!? しまった!」
ソウタ:「(驚いて)何!? 何をやらかした!?」
ユイ:「(青ざめて)ハチミツと唐辛子エキス……間違えた……」
ソウタ: 「(絶望)はあああ!? ……って、あれ? なんか甘い? それでいてコクがあって……」
ユイ:「(困惑)え? なんでだろ……」
朗読者:「ユイとソウタはレシピを確認しながら、何が起こったのかを検証することにした」
(数分後)
ソウタ「元のレシピは何?」
ユイ:「(レシピと材料とを見比べながら)えぇと……、レモンでしょ、炭酸水、シナモン、コリアンダー、バニラエッセンス……、あっ! もしかして……バニラエッセンスの代わりに、こっちの瓶を入れちゃった!?」
ソウタ:「(怪訝な顔で)何それ?」
(カランコロン……ドアの開く音)
マスター:「(大きな紙袋とチラシを持って)ただいまー。いや〜、パチンコで思ったより勝っちゃってさー。そういや、駅前でカレー屋の店主がチラシ配ってたよ。なんでも開店5周年を記念して今度賞金が出るイベントやるってさ」
ユイ「おかえりなさい、マスター。って、また仕入れと言ってパチンコ行ってたんですね。ほんと、どっちがメインなんだか……」
マスター「ユイちゃん、まぁ、そう怒らないでよ。今度、料理教えるからさ……、(カウンターに紙袋とチラシを置いて)え、君たち……まさか、その瓶を使ったのか!?」
ユイ:「(ビクッとする)えっ!? マスター特製のドリンクを作ろうとしたんですけど、間違えちゃって……。だって、香りが似てたから……」
マスター:「(ため息)それは秘密のハーブだ。高いんだぞ。あーあ、パチンコで勝ったのに、これでプラマイゼロだー」
ユイ:「(ちょっとムッとして)マスター、このハーブにはどんな効果があるんですか?」
マスター:「辛いものを甘くさせる力があるんだ。それも辛ければ辛いほど甘く感じる。適量ならば数分で効果が切れるが……」
ユイ:「(恐る恐る)適量でないと……?」
マスター「効果が長期間持続するんだ。今回使った量だと長期間になるだろうな」
ソウタ:「(青ざめながら)……長期間って、どれくらい?」
マスター:「(渋い顔で)個人差はあるが、数週間。まぁ、一生続くものではないがな」
ソウタ:「(絶句)おいおいおいおい……」
マスター:「とにかく、うちの調味料勝手に使ったんだから、埋め合わせしてもらおうかなぁ……(ユイをチラ見する)」
ユイ「(マスターの背後でソウタに向かって申し訳なさそうな顔で手を合わせてながら嘆願している)」
ソウタ「(ユイと目があってため息をついて)仕方ない、僕も何かしますよ……。で、どうしましょう」
マスター:「(しばらく考えて)そうだ、良い考えがある。(さっきまで持っていたチラシを見せて)これだ!」
【数日後】
(激辛カレー完食チャレンジの会場)
ユイ:「(興奮気味)ソウタさん、頑張って!」
マスター:「(腕を組みながら)よし、今回のチャレンジをクリアすれば、パチンコ代……、(ユイに睨まれて言い直す)いや、ハーブ代はチャラだ。ガンバレ、ソウタ君」
ユイ:「マスター、パチンコは私に料理教えてからにしてください」
ソウタ:「結局マスターの一人勝ちな気が……(辛さを感じずに完食して)やった! 完食!」
店主:「激辛10倍のカレーを完食とは恐れ入った……。君、すごいね……。はい、これ賞金」
ソウタ:「えぇ、とても甘くて……、いや、野菜の甘みが引き立つ辛さで食べやすかったです、ハハッ……」
朗読者:「周囲が盛り上がる中、ソウタは内心、不安を抱えていた」
ソウタ:(心の声) 「もう10日経つけど、あと何日この効果、続くんだ……? って、あれ?」
朗読者:「その時、ソウタの舌に突如激しい辛味が襲ってきた」
ソウタ:「(顔は赤らみ、涙目になって)あ、すみません。僕……、これで失礼します(会場から口を押さえて走り去る)」
ユイとマスター「(顔を合わせて)今、効き目が切れたんだ……」
ユイ:「ソウタさーん!(ソウタを追いかける)」
マスター:「ソウタ君!(2人の後を追う)」
ソウタ:「(目録を持って走りながら)こんなスパイスは刺激が強すぎるよ……!」
【終わり】
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