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【初稿】移民・核武装そして今回の参院選 ―― トッドの警鐘にどう応えるか


🗣  私たちは、本当に未来を選び取る準備ができているだろうか。

フランスの歴史人口学者エマニュエル・トッドは、これまでも日本社会の“未来”に警鐘を鳴らしてきた人物です。

彼が日本に対して特に強調していたのは、「移民の受け入れ」と「核武装」という、いずれも日本人にとって重たいテーマでした。2025年7月現在、彼の警鐘は再び私たちに問いかけています。今回の参議院選挙を通じて、私たちはその問いにどこまで向き合えたでしょうか。


⚫トッドの言葉と、私たちの現実

トッドは2010年代以降、日本に対し「このままでは持たない」と繰り返してきました。少子高齢化と人口減少、保守的な国民性、そして安全保障上の脆弱性――。

だからこそ、「国の持続可能性」を考えたときに、“移民”と“核”の問題を避けては通れないというのが彼の持論でした。日本社会がこれまで回避してきた論点を、トッドはあえて突きつけます。

私たちはこの不快な問いを、“陰謀論”や“勇ましい主張”ではなく、現実の政策課題として真正面から受け止めることができるか。その感受性こそが問われているのではないでしょうか。


⚫ 移民政策の“見えざる争点”


今回の参院選でも、移民政策について正面から議論した政党はほとんどありませんでした。
参政党の『日本人ファースト』というスローガンも外国人問題に光を当てたという側面はあったものの、表面的な賛同と反発を生んだたけで、本格的な議論までには発展しませんでした。

しかし、実態はどうでしょう。技能実習生制度の見直し、難民申請者の扱い、川口市のクルド人問題……日本社会の“地殻変動”は確実に始まっています。

受け入れるべきか否かというイエス・ノーの話ではありません。問題は、「誰が管理するのか」「何を教えるのか」「どう共生するのか」という社会設計の議論が著しく欠けていることです。

日本が移民社会へと“事後的に”突入してしまう前に、社会契約の前提を市民が合意し直すプロセスが求められているはずです。


⚫ 核武装を巡る“沈黙”と、変化の兆し

トッドが核武装に言及したとき、多くの日本人は違和感や反発を覚えたことでしょう。

当然です。被爆国としての記憶、NPT体制下での立ち位置、そして戦後日本の“平和主義”の歴史を無視することはできません。

しかし、安全保障環境はかつてなく厳しさを増しています。防衛費は拡大の一途をたどり、「専守防衛」は事実上の転換点に立っています。

そして、核武装をめぐる国民の意識にも、わずかながら変化が見え始めています。かつては9割前後が反対だった世論も、近年では「状況次第で検討すべき」とする声が2~3割程度に増加しています(NHKや読売、共同通信など複数の世論調査において)。これは、あくまで支持の広がりではなく、「タブーではなくなりつつある」兆候と読むべきでしょう。

だからこそ私は思います。本気で核武装の是非を問うならば、その是非を政策当事者だけでなく国民全体で議論するべきだと。

核抑止の論理、予算の優先順位、倫理的ジレンマ……すべてを開示し、国民に判断を委ねるプロセスこそが、民主主義国家の責任ではないでしょうか。


⚫ 思想と政治のあいだで

今回の参院選は、ある意味で「大きな政策論争」が起きなかった選挙でした。

争点は多岐にわたるものの、政党間の争いはどこか抽象的で、選挙結果はむしろ有権者の“疲れ”や“あきらめ”を映し出していたように思います。

思想家や知識人の言葉を「現実に落とし込む」のは難しい作業です。しかし、思想が政治から切り離され、生活と無縁になったとき、社会は方向感覚を失ってしまうのではないでしょうか。


⚫ 問いを残して、終わりに

トッドは、私たちに「日本の未来に向けた準備はできているか?」と問いかけています。

それは決して、勇ましい国防論や排他的ナショナリズムへの回帰を促すものではありません。むしろその逆です。冷静な判断、誠実な議論、そして言葉にできない感情にも耳を傾ける知性の力が求められているのです。

政治を専門家に任せきりにする時代は、もう終わったのかもしれません。

私たちは、「移民」「核」「選挙」という三つの鏡を通じて、自分自身の中にある未来への希望と不安を見つめ直す必要があるのではないでしょうか。


✍️ あとがき

この原稿は、エマニュエル・トッドの主張を“正しい”とするものではありません。むしろ彼の提言には、多くの疑問や葛藤が伴います。

それでも、今このタイミングで彼の言葉を思い出すべきだと感じました。

すぐには答えの出ない問いと向き合いながら、少しずつ社会の空気を変えていく。そんな試みのひとつになればと思っています。
あなたはどう考えますか?



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