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漢方擬人化図鑑・小話①|補中益気湯は、倒れる前に気づいている

今日は魔法学校は休み。

次の実習で使用する生薬たちを準備するために、

補中益気湯と六君子湯は街へと降りてきていた。

「師匠、今日は陳皮と枳実、升麻の在庫が切れているので、あちらの店に……師匠?」

「ごめん、ちょっと行ってくるね」

行きつけの薬屋とは逆方向へ歩き出す補中益気湯に、

六君子湯はため息をついた。

自由奔放な彼の行動は、

残念ながらいつものことである。

「師匠……またですか?」

呆れ気味の六君子湯の声にも、

補中益気湯は振り返らない。

いつもと少し違う反応に、

六君子湯は首を傾げた。

いつもなら振り返って、

へらへらしながら、

「まぁまぁ」

なんて誤魔化して、

そのままいなくなってしまうのだが。

「あの人、もう少しで倒れると思う」

そう言って、

補中益気湯は人混みの中へ迷わず駆けていく。

その先には、

細身の女性がいた。

六君子湯には、

特別具合が悪そうには見えなかった。

けれど、

次の瞬間。

崩れ落ちる女性を、

補中益気湯が受け止めていた。

普段はおっとりしていて、

何を考えているのか分からない補中益気湯だが、

こういう時の彼の直感は、

間違いなく当たる。

普段からこう真面目であれば、

素直に尊敬できるのに。

こういうところが、

本当に厄介なのだ。

そんなことを思いながら、

六君子湯は何度目か分からないため息をつき、

補中益気湯の元へと駆けていった。

漢方薬紹介

補中益気湯

補中益気湯は、名前の通り、

「中を補い、気を益す」

漢方薬です。

ここでいう「中」とは、主に脾胃のこと。

食べたものから気を作る、

身体の土台のような場所です。

疲れが続いている。
食欲が落ちている。
声に力がない。
身体が重く、立っているのもしんどい。

そんなふうに、

気が不足して、

身体を支える力が弱っている時に使われます。

漢方では、

いくつもの生薬がそれぞれ役割を持って、

一つの処方を作ります。

中心となって働く生薬を君薬

君薬を支える生薬を臣薬

全体を補助し、バランスを整える生薬を佐薬

薬の働きを導いたり、処方全体をまとめる生薬を使薬と呼びます。

補中益気湯で中心となって働く生薬は、

黄耆です。

黄耆は、

気を大きく補い、

弱った身体を支える力を助けます。

そこに、

人参・白朮・甘草が加わり、

脾胃を補って、

気を生み出す土台を支えます。

当帰は血を養い、

陳皮は気の巡りを整えます。

さらに柴胡・升麻が、

下がってしまった清陽の気を

上へ引き上げるように働き、

生姜・大棗が胃腸を守りながら、

処方全体を調和させます。

補中益気湯は、

ただ元気を足すだけの処方ではありません。

弱った土台を立て直し、

気を作り、

巡らせ、

落ち込んだ力をもう一度引き上げる。

そんな、

身体の内側から元気を立て直す漢方薬です。

だから補中益気湯は、

「もう少しで倒れそうな人」に、

誰よりも早く気づくのかもしれません。

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