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音楽史年表記事編50.管楽器のための協奏曲創作史

 3楽章の協奏曲様式はトレッリによって創始されましたが、1709年までにトランペット協奏曲が出版されています。この時代のトランペットにはバルブがありませんでしたので、高音域が用いられたものと思われます。バロック時代の管楽器のための協奏曲としては、フルート、リコーダー、オーボエ、ファゴット、トランペットの曲が作曲されています。
 バッハはブランデンブルク協奏曲第2番ではトランペット、フルート、オーボエ、バイオリンを独奏楽器としたコンチェルト・グロッソの様式で作曲しています。ヘンデルは1706年(21歳)から1710年(25歳)までイタリアに滞在しましたので、イタリアの協奏曲様式でオーボエ協奏曲第1番と第3番をイタリアあるいはその後宮廷楽長に就任したハノーファーで作曲しています。
 古典派期にはホルンの高音域を使った交響曲が作曲されるようになりますが、ドレスデンのハンペルのシュトップフ奏法と呼ばれる奏法により半音や全音が出せるようになったことからホルン協奏曲が作曲されるようになります。モーツァルトは盟友のホルン奏者ロイトゲープのために4曲のホルン協奏曲やホルン四重奏曲を作曲します。モーツァルトはファゴット、オーボエ、フルート、クラリネットの音楽史における代表的な協奏曲を作曲しています。木管楽器奏者が協奏曲を演奏する場合、ほとんどの場合モーツァルトの協奏曲が選ばれます。クラリネットはモーツァルトの時代のウィーンの宮廷オーケストラのシュタードラーによって改良が行われ、モーツァルトは作曲者の立場で改良に協力し、クラリネット協奏曲やクラリネット五重奏曲などの珠玉の名作を残しました。また、ハイドンとフンメルはウィーンの宮廷オーケストラのトランペット奏者ヴァイディンガーが開発した半音階を演奏できるようにキーのついたトランペットのためにトランペット協奏曲を作曲しました。
 ロマン派ではウェーバーのクラリネット協奏曲、ファゴット協奏曲、リヒャルト・シュトラウスのホルン協奏曲、イベールのフルート協奏曲が主な作品となっています。

【音楽史年表より】
1783年5/27作曲、モーツァルト(27)、ホルン協奏曲第2番変ホ長調K.417
自筆譜の表題には「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、ろば、牡牛、馬鹿のロイトゲープを憐れむ、ウィーンにて、1783年5/27」と書かれ、モーツァルト最初のホルン協奏曲はザルツブルク、ウィーンを通じてモーツァルトの生涯の盟友であり、24歳年上のホルンの名手ロイトゲープのために作曲される。今日のバルブホルンが発明されたのは1830年頃のことであり、モーツァルトの時代にはヴァルトホルンと呼ばれる無弁の楽器が使用されていた。交響曲の発展に伴いホルンの役割は飛躍的に増大したが、ドレスデンのホルン奏者ハンペルは「シュトップフ奏法」を創始する。これはホルンの朝顔の中に右手を入れて倍音列にない半音や全音を得る奏法であり、これによってホルンはオーケストラの和音充填楽器としてばかりではなく、モーツァルトの4曲の協奏曲にみられるように名手の場合には旋律楽器としてもかなり柔軟な表現力を発揮する楽器となったのである。自筆譜は第1楽章の176小節とロンドのみがベルリン国立図書館に所蔵される。(1)(2)
1791年10月初め作曲、モーツァルト(35)、クラリネット協奏曲イ長調K.622
モーツァルトがクラリネットのために書いた唯一の協奏曲であるこの曲は、ウィーンの宮廷楽団に仕えるクラリネットの名手で、モーツァルトと同じフリーメイスン結社員でもあったアントーン・シュタードラーのために作曲された。モーツァルトの晩年の作品の特徴である清澄なスタイルのもとにクラリネットの情緒豊かな音色が死期の迫ったモーツァルトの澄みきった心情を見事に描き出すこの曲は彼の円熟した協奏曲様式を端的に示しており、モーツァルトのみならず古典派の管楽器のための協奏曲の最高傑作として親しまれている。マンハイム・パリ旅行の折にマンハイムでクラリネットを聴いて以来この楽器に魅了されていたモーツァルトではあるが、低音域の拡張に力を注ぎ、楽器の改良にも貢献したシュタードラーというクラリネットの名手と知り合い、親しくなったからこそ、モーツァルトはクラリネットという楽器の特徴を十二分に知ることができ、こうしたクラリネットの不朽の名作を生む出すことができたといえよう。(2)
1796年作曲、ハイドン(64)、トランペット協奏曲変ホ長調Hob.Ⅶe-1
この協奏曲はウィーン宮廷オーケストラのトランペット奏者アントン・ヴァイディンガーが半音階を演奏できるように開発したキーのついた当時最新のトランペットのために作曲される。初演は1800年3月ブルク劇場で行われる。(3)
【参考文献】
1.作曲家別名曲解説ライブラリー・モーツァルト(音楽之友社)
2.モーツァルト事典(東京書籍)
3.中野博詞著・ハイドン復活(春秋社)

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