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音楽史年表記事編21.モーツァルト、フランスを訪問する

 フランスに向かってザルツブルクを出発したモーツァルトは途中、各都市で演奏会を開いていますが、この演奏会ではウィーン宮廷で皇帝から所望されて行ったクラヴィーアの鍵盤を布で覆い演奏するということ行いました。この演奏は皇帝自らの希望で始めたもので演奏技術の高さを示すものでしたが、フランクフルト週報の記録では見世物的曲芸とされています。なお、フランクフルトでは14歳のゲーテがモーツアルトの演奏を聴いています。
 モーツァルトはブリュッセルなどを経由して、1763年11/18にパリに到着します。パリでは1764年の新年にヴェルサイユ宮殿にフランス国王ルイ15世に拝謁するなどの親善大使としての役割を果たし、ヴェルサイユでは国王はじめ多くの貴族から高価な金製品や多額の下賜金を賜ります。
 また、パリでは楽譜の印刷譜の出版が行われており、モーツァルトはクラヴィーアとバイオリンのためのパリ・ソナタK.6およびK.7を作品1として出版し、ルイ15世の皇女ルイーズ・マリーに献呈しました。

 モーツァルトの父レオポルトはパリ訪問を終え、ザルツブルクへの帰途に着く予定でしたが、パリの後援者からの強い勧めにより、イギリスのロンドンへ渡ることを決断します。ロンドン行きはモーツァルトにとっては作曲家として大きな成果を収めますが、モーツァルトの人生にとって大きな岐路となりました。モーツァルトがパリを訪問した1763年にはフランスとイギリスが海外の植民地をめぐって争った7年戦争が終結し、フランスは多くの利権をイギリスに明け渡しましたが、イギリスでは軽工業を中心とした産業革命が始まっており、またプロイセンの啓蒙思想の発祥の地でもあり、フランスの貴族にとっては敵対する国ではあったものの魅力の感じられる国でもあったようです。この、モーツァルト一家のイギリス訪問が女帝マリア・テレジアとの間に齟齬が生まれる原因のひとつと考えられます。マリア・テレジアにとっては産業的にも文化的にも勢いのあったイギリスの魅力とは無縁で、敵対するプロイセンの同盟国としてイギリスを敵対する国としか見られなかったのでしょう。

【音楽史年表より】
1763年8/18、モーツァルト(7)
フランクフルトで当時14歳だったゲーテがモーツァルトの演奏会を聴いている。フランクフルト週報によると姉弟の演奏会は単なる楽器の演奏だけではなく、ウィーン宮廷でも披露された見世物的曲芸が目玉となっていた。モーツァルトはクラヴィーアの鍵盤を布で完全におおい、なおかつその布の上から鍵盤が見えているかのように演奏を行った。
10/5、モーツァルト(7)
モーツァルト一行、ブリュッセルに到着、41日間滞在する。(1)
11/7、モーツァルト(7)
モーツァルト、音楽会を開く。この音楽会には皇帝フランツ1世の弟のオランダ総督カール・アレクサンダー・ロートリンゲン皇子が臨席される。(2)
11/18、モーツァルト(7)
午後3時、モーツァルト一行、パリに到着する。一行はパリの著名な音楽家、知識人、貴族と交友を重ねたが、なかでも一番一家を熱心に支援してくれたのは、オルレアン公の秘書を務めていたドイツ生まれのフリードリッヒ・メルヒオル・フォン・グリムであった。(1)
12/24、モーツァルト(7)
一行はグリムの計らいでヴェルサイユへ向かう。モーツァルト一家は王室礼拝堂で朝課三曲の聖なるミサの演奏に出席する。(2)
1764年1/1、モーツァルト(7)
モーツァルトは元旦、ヴェルサイユ宮殿で催された宴席でフランス国王ルイ15世に拝謁する。一家はパリに戻るまでヴェルサイユ宮廷の貴族と交流を重ね、ヴェルサイユ滞在中には金製の嗅煙入れや時計など、数々の高価な品を贈られパリに戻ったのちはヴェルサイユでの御前演奏に対し宮廷から1200リーブルを下賜される。(1)
2月初め作曲、モーツァルト(8)、クラヴィーアとバイオリンのためのソナタ ハ長調K.6(パリ・ソナタ)
モーツァルトはニ長調K.7とともに国王の次女ルイーズ=マリー=テレーズ・ドゥ・ブルボンに献呈し、作品1として出版する。(1)(2)
4/10、モーツァルト(8)
モーツァルト一家はパリを発ち、次の目的地であるロンドンに向かう。パリから帰郷する予定でいた父レオポルトは当初イギリス行きをためらっていたが、パリの後援者たちの強い勧めもあり決断する。パリで従僕のヴィンターが職を辞したため、あらたに二人の従僕を雇い入れる。カレーに自家用馬車を預け、ドーバー海峡を渡る。(3)
【参考文献】
1.モーツァルト事典(東京書籍)
2.アイブル編・武川寛海訳モーツァルト年譜(音楽之友社)
3.西川尚生著・作曲家・人と作品シリーズ モーツァルト(音楽之友社)

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