ローカルLLMを動かして、AIの採用試験をやってみた話
こんにちは。
町工場でひとり事業部を運営している40代のおじさんです。
前回の記事で「ローカルLLMって何?」を書きました。
今回はその実践編です。
「ローカルLLMってどう思う?」とAIに聞いた自分が、自分のパソコンで2つのAIモデルを比較試験して、採用モデルを決めるところまでやってみました。
かかった時間は半日。
追加投資はゼロ円です。
コードの中身がわからない自分でもできた手順を、そのまま書きます。
使ったパソコン
会社にあるデスクトップです。
・GPU:NVIDIA RTX A2000(メモリ12GB)
・メモリ:64GB
CAD/CAM用に組んだワークステーションなので、一般的な事務用パソコンよりは強めです。
ただ、ゲーミングパソコン級の環境なら同じことができます。
重要なのはGPUのメモリ(VRAM)で、目安は8GB以上です。
道具は「LM Studio」ひとつ
ローカルLLMを動かすソフトはいくつかありますが、自分はLM Studioという無料ソフトを使いました。
理由は単純で、普通のWindowsアプリとしてインストールできて、画面がチャット形式だからです。
黒い画面にコマンドを打つ必要は、一切ありません。
手順はこれだけでした。
公式サイトからダウンロードしてインストール
起動すると「最初のモデルをダウンロードしませんか」と提案されるので、それに乗る
ダウンロードが終わったらモデルを読み込んで、チャット開始
自分が最初に入れたのは、Googleの公開モデル「Gemma 4 E4B」でした。 ファイルサイズは約6GB。
ダウンロードの待ち時間を除けば、作業自体は30分もかかっていません。
正直、拍子抜けするほど簡単でした。
最初の質問で、実力と限界が見えた
記念すべき最初の質問は、これにしました。
「NC旋盤とマシニングセンタの違いを3行で説明して」
本業の質問です。
答えの正誤なら、自分が一番正確に判定できますから。
結果は、日本語は自然で、生成速度も十分。
でも内容に「多関節のスピンドル」という表現がありました。
機械を知らない方向けに言うと、実在しない構造をそれっぽく説明に混ぜてきた、ということです。
現場の人間なら一発で気づきますが、知らない人が読んだら信じてしまう間違いです。
しかも「3行で」という指示を無視して、長々と書いてきました。
つまり、知識で答えさせるとボロが出る。
じゃあ、知識ではなく「渡した文章の処理」ならどうか。
ここからが本番です。
採用試験:実際の改善記録を要約させる
自分の会社では、改善記録をWebツールで貯めています。
その実物の記録を1件、チャットに貼り付けて、こう指示しました。
「次の改善記録を50字以内で要約して」
見るポイントは3つ決めておきました。
・50字の指示を守れるか
・数字や用語を捏造しないか
・要点を拾えているか
結果、Gemmaの要約は内容は合格でしたが、字数は約60字でオーバー。 「50字以内厳守。超えたら失格」と追い打ちをかけると、今度は守りました。
ところが、です。
別の記録に移って同じ「厳守」を付けたら、今度は69字を出してきました。
小型のAIは、会話が進むと前の約束を忘れる。
この発見が、この日一番の収穫だったかもしれません。
二人目の受験者:Qwen3.5 9B
次に、Alibabaの公開モデル「Qwen3.5 9B」を入れて、同じ試験をしました。 Gemmaより一回り大きいモデルです。
要約の質は文句なし。
字数も一発クリア。
なのに、答えが出るまで3分かかったんです。
原因は「Think」という推論モードがオンになっていたこと。
AIが頭の中で長考してから答える機能です。
これをボタンひとつでオフにしたら、同じ品質の要約が約1秒で出るようになりました。
設定ひとつで3分が1秒。
エコモードのままアクセルを踏んで「この車は遅い」と言っているようなものでした。
道具は設定を知らないと実力を出せません。
試験結果
2つのモデルに、同じ記録で同じ試験をした結果です。
・字数の遵守:Gemmaは3回中1回、Qwenは3回連続でクリア
・数字の扱い:Gemmaは数字に触れず回避、Qwenは「1回あたり5分短縮」のような数字を正確に使った
・捏造:どちらもゼロ
・速度:どちらも実用十分
採用はQwen3.5 9Bに決めました。
ただし条件付きです。
字数のような厳密なルールは、AIを信用しきらず、プログラム側で文字数を数えて検品する。
AIには得意な「要約の質」だけを任せる。
AIに完璧を求めず、正確さが必要な部分は普通のプログラムで保証する。
餅は餅屋の分業です。
使ってみてわかったこと
・ローカルLLMの導入は、思っているより簡単(コマンド不要、無料)
・知識を答えさせると危ないが、渡した文章の処理なら実用になる
・小型AIは指示を忘れる。だから毎回指示を付け直す設計にする
・設定ひとつで速度が180倍変わることがある
・モデル選びは、カタログではなく自社の実データで試験するのが一番早い
この最後の一点が、自分の一番の推しです。
ベンチマークの点数を眺めるより、自分の仕事の実物を1件貼り付けて要約させる方が、10分で答えが出ます。
採用面接と同じです。
履歴書より、実技試験。
そして、ここからが本番です
採用試験に合格したAIは、まだチャット画面の中にいます。
次のステップは、これを自社のWebツールに組み込むことです。
記録を保存したら、AIが裏で働く。
「この不良、前にも似たことがなかったか?」と聞けば、過去の記録から探して答えてくれる。
目指すのは、チャット相手のAIではなく、本当のAI社員です。
外部にデータを出せない町工場でも、AIを社内の一員にできるのか。
この挑戦の続きも、記事にしていきます。
この記事は『ひとり事業部のAI奮闘記』シリーズの一つです。町工場のひとり事業部が、AIを使って業務を変えていく日々を発信しています。
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