🌸閑話58〜ほっこりな朝と、でこぼこの一日
世の中の学生さんは
いま春休み。
高校生の姪っ子が泊まりにきた。
いまのわたしたちには
ちょうどいいタイミングだ。
娘との距離感が
どうも近すぎて衝突ばかり。
姪っ子が
いい「緩衝材」になってくれている。
快晴の朝。
娘が仕事に出かけたあと
あまりの天気の良さに
じっとしているのが
もったいなくなった。
「ちょっと散歩に行こうか」
と姪っ子を誘い
外へ出た。
時刻は、8時半。
冬の朝のような
張り詰めた空気ではなく
ふわりと温かい
春の湿り気を帯びた風が頬を撫でた。
深い眠りの中にいた街が
もうすっかり目を覚ましている。
信号に並ぶ車の
低く唸るエンジン音。
冷たかった夜の名残を
まぶしい春の光が
ぐんぐんと押し広げていく。
一晩かけて溜まっていた静寂を
街の喧騒が
カラフルに塗り替えていく。
今日も世界がちゃんと
回り始めたんだな、と肌で感じる。
そんな活気の中に身を置くと
なんだかこちらの背筋まで
しゃんと伸びるような気がした。
仲通りにひっそりと佇む
石の鳥居の神社。
人の気配はないのに
たしかに、在る。
ざわめく街をよそに
そこだけが、しんと古かった。
そこから
もう少し足をのばして。
卵屋さんが置いている
プリンとシフォンケーキの自販機へ。
「自分の家の周りしか知らないから
こういうの新鮮!」
姪っ子は、少し大げさに笑った。
自販機でプリンを選んでいたら
お店の人が出てきた。
「固ゆでしすぎちゃった卵なんだけど
よかったらもらってくれない?」
そう言って
パックごと手渡してくれた。
思いがけないお裾分けに
姪っ子と顔を見合わせて笑う。
特別なことは何もしていないのに
ちゃんと世界がやさしくなる。
そんな朝だった。
なんか、いい気分。
足取り軽く帰ってきたら
なにか作りたくなった。
「そうだ、いちご大福作ろっか」
白玉粉でつくるレシピを
紹介してくださっていたので
姪っ子と一緒に挑戦してみた。
いちごを洗って
白玉粉を練って
あんこを用意して
包む。
……おや?
なんか、おかしい。

思ってたのとちがう。
どうやっても、包めない。
ビジュが……。
あんこがゆるすぎた?
お餅が少なかった?
それとも
いちごがでかすぎた?
横で、姪っ子が言う。
「食べちゃえば一緒だよ。
パーツはぜんぶ美味しいんだもん」
……ありがとう。
なぐさめてくれて。
ひとくちで、頬張る。
うーん。
美味しいけど……。
やっぱり、見た目も大事。
これは
リベンジしなきゃ。
でも。
口いっぱいに広がる甘酸っぱさと
姪っ子の楽しそうな笑い声。
不格好ないちご大福を囲む
春のひととき。
…ま、これはこれで、いっか。
完璧な朝の散歩と
ちょっと失敗した手作りおやつ。
その凸凹な感じが
今のわたしたちには
ちょうどいい。
そんな、春のいちにち。
