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AIと経済|仮想通貨は「投機」から「金融インフラ」へ向かうのか

米国の大手ステーブルコイン発行会社であるCircleが、野村ホールディングスと組み、日本企業向けに外貨の即時決済サービスを始めるという記事を読みました。

正直に言うと、私はこれまで暗号資産や仮想通貨にあまり興味がありませんでした。
ビットコイン、NFT、仮想通貨バブル、取引所破綻――。
そうした言葉から受ける印象は、どうしても「値上がり益を狙う投機」や「リスクの高い金融商品」というものでした。
ところが今回の記事を読むと、少し見方が変わりました。

今回の話は、単に仮想通貨の価格が上がるか下がるかという話ではありません。国際送金や外貨決済を、より速く、より安く、より効率的にするかもしれないという話です。
つまり、仮想通貨が「投機の対象」から、企業活動や国際金融を支える「金融インフラ」の一部へ移りつつあるのではないか。
そう感じました。

仮想通貨の役割の変遷

仮想通貨は、最初から投機商品だったわけではない

仮想通貨の出発点は、2009年ごろに登場したビットコインです。
当初の発想は、銀行や国の通貨制度に頼らず、インターネット上で個人同士がお金をやり取りできる仕組みでした。
つまり、もともとは「銀行を通さないデジタルなお金」という性格が強かったのだと思います。

その後、ビットコインの価格が大きく上昇し、暗号資産市場は投資・投機の対象として一気に広がりました。
2017年ごろから2021年ごろにかけては、ビットコインだけでなく、イーサリアム、NFT、DeFiなども注目されました。
この時期の仮想通貨は、多くの人にとって、「新しい金融技術」というより、「儲かるかもしれない資産」として見られていたように思います。

しかし、価格の急落や取引所の破綻、不正利用なども相次ぎ、仮想通貨には大きなリスクがあることも明らかになりました。
ここで、各国政府や金融当局は、仮想通貨を放置するのではなく、規制の枠組みに取り込む方向へ動き始めます。

今回の主役はビットコインではなく、ステーブルコイン

今回の記事で重要なのは、ビットコインそのものではありません。
主役は、ステーブルコインです。ステーブルコインとは、ドルや円などの法定通貨に価値を連動させるデジタル通貨です。
たとえば、米Circleが発行するUSDCは、基本的に1USDCが1ドルに近い価値を保つように設計されています。

ビットコインのように価格が大きく変動するものは、日常の決済や企業間決済には使いにくいです。一方、ステーブルコインは価値が安定しているため、送金や決済に使いやすい。
ここが大きな違いです。

今回の記事では、Circleと野村ホールディングスが組み、日本企業向けに外貨の即時決済を始めるとされています。
従来、大口の為替取引や外貨決済には、半日程度かかることもありました。
それがステーブルコインを使うことで、瞬時に近い形で決済できる可能性が出てきたわけです。

これは、かなり大きな変化です。

企業にとって何が変わるのか

企業が海外企業と取引する場合、円をドルなどの外貨に替え、送金し、相手側で決済する必要があります。
この過程には、銀行、為替市場、決済システム、時差、営業日など、さまざまな制約があります。
そのため企業は、急な支払いに備えて、あらかじめ外貨を多めに持っておくことがあります。

しかし、必要な時にすぐ外貨を調達し、すぐ送金できるようになれば、余分な待機資金を減らせます。
これは企業にとって、資金効率の改善につながります。

また、国際送金のコストが下がれば、海外取引のハードルも下がります。
大企業だけでなく、中堅企業やスタートアップにとっても、海外展開がしやすくなる可能性があります。

さらに記事では、株式や債券の即時取引にも応用できる可能性が示されています。
そうなると、ステーブルコインは単なる送金手段ではなく、証券市場の決済インフラにも関わってきます。

為替市場への影響は単純ではない

では、ステーブルコインが広がると、為替市場にはどのような影響があるのでしょうか。

短期的には、ドル円相場を直接大きく動かす主因は、これまで通り、日米金利差、日銀やFRBの金融政策、貿易収支、投資資金の流れ、リスク回避などだと思います。
ステーブルコインが出てきたからといって、すぐに円高・円安が決まるわけではありません。ただし、中長期では、為替市場の「配管」を変える可能性があります。

まず、ドル建てステーブルコインの利用が広がれば、世界中でドルを使いやすくなります。これは、ドルの国際的な地位をさらに強める方向に働くかもしれません。
一方で、日本企業が必要な時に外貨を即時に調達できるようになれば、あらかじめドルを多めに保有しておく必要は減るかもしれません。

これは、外貨の持ち方を変える可能性があります。
つまり、ステーブルコインの影響は、単純に「円安要因」「円高要因」と一方向に言えるものではありません。
むしろ重要なのは、為替市場の周辺にある決済・送金・資金管理の仕組みが高速化し、効率化していくことです。

政治経済の視点では、ドル覇権の話でもある

ステーブルコインは、単なる民間の便利な決済手段ではありません。政治経済の視点で見ると、これは通貨覇権の話でもあります。
現在、世界の主要なステーブルコインはドル建てが中心です。
ドル建てステーブルコインが普及すればするほど、世界中でデジタルなドル決済網が広がることになります。

これは、米国にとっては大きな意味があります。
ステーブルコインの裏付け資産として米国債などが使われれば、米国債への需要にもつながります。
また、ドル建て決済の利便性が高まれば、国際金融におけるドルの地位を補強することにもなります。

一方、日本にとっては、円建てステーブルコインをどう育てるかが重要になります。

もしドル建てステーブルコインだけが国際決済の中心になれば、日本企業の外貨決済はますますドル圏のインフラに依存することになります。
逆に、円建てステーブルコインが育てば、日本株、日本国債、不動産、証券トークンなど、円建て資産への海外投資を促す可能性があります。
ここには、単なる技術革新を超えた、通貨と金融市場の主導権争いがあります。

リスクも忘れてはいけない

もちろん、良いことばかりではありません。
ステーブルコインには、発行体が本当に十分な裏付け資産を持っているのかという信用リスクがあります。
また、不安が広がれば、一斉に換金が起こる取り付けリスクもあります。

さらに、国境を越えて素早く送金できるという便利さは、マネーロンダリングや制裁逃れ、不正送金にも悪用される可能性があります。
便利になるほど、同時に安全性や監督の仕組みも重要になります。

仮想通貨が社会インフラに近づくほど、「自由で速い」だけでは足りません。「安全で信頼できる」ことが不可欠になります。

仮想通貨を見る目を変える時期に来ている

今回の記事を読んで、私自身、仮想通貨に対する見方が少し変わりました。

これまで私は、仮想通貨をどちらかといえば、投機的で、自分にはあまり関係のない世界だと思っていました。
しかし、ステーブルコインを通じて国際決済が速くなり、企業の資金効率が上がり、証券取引や為替市場にも影響してくるとすれば、これは自分と無関係な話ではありません。
むしろ、今後の世界経済を考えるうえで、見ておくべきテーマだと思います。

仮想通貨は、
「銀行を通さない新しいお金」から始まり、
「投資・投機の対象」として広がり、
「規制と実用化」の段階に入り、
これからは「決済・金融インフラ」の一部になろうとしている。

もちろん、その未来が本当に実現するかはまだ分かりません。
しかし少なくとも、仮想通貨を単に「怪しい投機」とだけ見る時期は、そろそろ終わりに近づいているのかもしれません。

おわりに

今回のCircleと野村ホールディングスの提携は、一見すると、ひとつの金融ニュースに見えます。
しかし、その背後には、国際決済の高速化、ドル覇権、円建てデジタル通貨、企業の資金効率、為替市場の変化といった、大きなテーマがつながっています。

これまでの私なら、この記事を読んで「そういう動きがあるのか」と思って終わっていたかもしれません。でも、AIと対話しながら要点を整理していくと、ニュースの奥にある構造が少しずつ見えてきます。
古希を目前にしても、新聞やテレビの情報をただ受け取るだけでなく、自分なりに問いを立て、考え直す。
AIは、そのためのよい伴走役になるのだと感じます。

仮想通貨は、価格が上がるか下がるかだけを見るものではなくなりつつあります。これからは、国際決済や金融インフラの一部として、避けて通れないテーマになっていくのかもしれません。

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