見出し画像

第4章 #20 ただ、大好きと伝えたくて母親に会いにいった日。

🔬愛の根源研究lab

何年振りだろう。

玄関の前に立つと、胸の奥が少しだけざわついた。
チャイムを押す指先が震えているのを感じながら、
深呼吸をひとつ。

「……はい」

懐かしい声が聞こえた瞬間、
胸の奥が、じんわりと熱くなった。

扉の向こうに立っていたのは、
記憶の中より少し小さくなった母。

髪に混じる白いものが増えていて、
その姿を見ただけで、
胸がぎゅっと締めつけられた。

「久しぶり」

そう言うと、母は少し驚いたように目を見開き、
そして、ふっと笑った。

その笑顔を見た瞬間、
張りつめていた何かがほどけていくのを感じた。


あの後、セッションで教えてもらった
セルフワークを何度も繰り返した。

思っていたよりも、私は母に強い抵抗を持っていた。
母の前ではいつも緊張して、
「いい子でいなきゃ」と無意識に背筋を伸ばしていた。

自分の気持ちを丁寧に書き出すうちに、
心の奥で母に向けた
“怖さの正体”が少しずつ浮かび上がってきた。

それは“嫌いだから”じゃなかった。
むしろその逆だった。

――お母さんに、嫌われたくなかった。

――お母さんに、ちゃんと愛されたかった。

その思いに気づいた瞬間、
堰を切ったように涙が溢れた。

まるで、ずっと胸の奥で泣けなかった自分が
やっと泣く許可をもらったようだった。


そして今、
その気持ちを伝えるときが来た。

お茶を飲みながら、
私はゆっくりと、
言葉を選びながら話し始めた。

「私ね、
 うまく話せるかわからないんだけど…
 
 ずっとお母さんに言いたかったことがあるの。
 
 お母さんに言われたことで寂しかったり、
 自分を責めちゃったこともあった。

 でも、本当はね……
 お母さんに愛されたくて、
 抱きしめてほしくて、たまらなかったの」

少し沈黙が流れた。
母はカップをそっと置いて、
まっすぐ私を見つめた。

「……そうだったのね」

その声は、
思っていたよりもずっとやさしかった。

「お母さんもね、余裕がなかったの。
あなたに寂しい思いをさせて、ね。
頑張ってくれていたのを、
いつの間にか“当たり前”にしてしまっていた。

本当はね、あなたがいてくれる
それだけでよかったのよ。
辛い思いをさせて、本当にごめんね」

涙が止まらなかった。
母の目にも、静かに光るものが見えた。

気づけば、二人はそっと手を取り合っていた。
ハグをしたかどうか、もう覚えていない。

ただそこに、

“もう戦わなくていい”という静かな安堵だけがあった。


帰り際、母が小さな声で言った。

「いつでも、おいでね」

その言葉が、胸の奥であたたかく響いた。

外に出ると、
風が少し冷たくて、でもやさしかった。

心の中には、もうあの頃の私はいなかった。

代わりに、
母の愛と、自分自身への愛が、
静かに並んで座っていた。


小さなアファメーション

「私は、愛を受け取る準備ができています」
「愛は、過去を超えていま、ここにある」


ワークの締め

母との対話は、“誰かを変えるため”のものではありません。
それは、あなたが自分の中の小さな子どもに
「もう大丈夫だよ」と言ってあげる時間です。

たとえ相手の反応が思うようでなくても、
あなたの中で“愛を感じられた”なら、それで充分です。

あなたの愛は、確かに届いています。

今日もその愛を抱えて、
やさしく、あなたの歩幅で進んでください。

いいなと思ったら応援しよう!