キラリホー 雪原の唄
もう60も過ぎたのだ。
いい加減にしなければならない歳なのだ。
けれど私の美しい狼はまだハタチそこそこ、
手つかずの雪原を彷徨っている。
「キラリホー」と呼んでやる。 私の美しい狼は、「キラリホー」と哭き応えながら、雪まみれになって駆けてくる。
ああ、こうして歓喜のあまり私を雪原に押し倒しても、
あなたは全く気付いていないのだ。
分厚いコートの下、 私の乳房を、
あなたの美しい足が無邪気に押し潰しているということを。
私の美しい狼。
凍えるほどの空の下、 何も知らずに、 あなたはただ、笑っている。
私は痛みと歓びに震えながら、 声を上げることも出来ず、
豊かな毛並みの、 獣の匂いにむせる。
時は巡り、私は死へ赴き、 若い雄の狼は年老いるだろう。
だから今この時、 雪原は輝いている。
