5分前のシンデレラたち:第10話
12時の鐘と、それぞれの場所
——記録音声
(コンの声。)
「はい課長、調査の結果、時空の局所的歪みを確認しました。
原因は、巨大な太陽光フレアに、各地の紛争、特に沿岸部での大爆発の複合影響と推定されます。」
わずかな間。
「……はい、承知しました、保代課長」
ノイズ。
「——“あの地点”の観測を継続します」
——切断。
山の麓。
(若い3人。)
ミユ「ねえ、なんか…変な感じしない?」
リナ「さっきからそれ言ってる」
コン「……」
コンだけが、空を見ている。
ミユ「コンちゃん?」
コン「来たね」
リナ「なにが?」
コン「観測点が重なる時間」
リナ「は?」
——ゴォォォン……
重い鐘の音。
空気が震える。
ミユ「なにこれ!?」
リナ「お昼のチャイム…? 鐘?」
コン「そうだよ」
振り返る。
コン「12時だ!」
ミユ「え?」
コン「戻る時間さ」
リナ「……どこに?」
コン、少しだけ寂しそうに笑う。
コン「それぞれの時間に」
ミユ「意味わかんないよ!」
コン「だってさ」
間。
コン「——私は何回も見てるから」
ミユ「え?」
コン「この時間」
沈黙。
コン「——どっちにするかは、選べるけどね」
ミユ「え?」
リナ「どういうこと?」
コン「……さあね」
軽く笑ってごまかす。
空気が歪む。
景色がにじむ。
静かな部屋。
未来の3人。
ミユ「……今の、何?」
リナ「夢?」
コン「さあね」
——ゴォォォン……
ミユ「また…」
コン「ほら」
リナ「……」
コン「行きなよ」
ミユ「どこに?」
コン「“あなたの時間”に」
ミユとリナの輪郭が、少しずつ薄れる。
ミユ「なぜ? コンちゃんは!?」
コン「私は——」
少し、考えるように。
そして——
コン「ここにいるって、決めたから」
リナ「……どういうこと?」
コン「だって私」
少し笑う。
コン「仕事中だし」
ミユ「え?」
コン「ここ、離れられないんだよね」
一瞬だけ、優しい顔になる。
コン「でもね」
ミユ「?」
コン「——あの頃の事、本当に好きなんだ。宝物だよ。
人生ってさ、楽しい思い出だけが残っていくから。」
光。
音が消える。
「私たちは、あの日、何かを置いてきたのかもしれない」
「それとも——」
「今も、まだ、あの山にいるのかもしれない」
「でも」
「楽しさと笑い声、風の変化と、あの音だけは」
「どうしても、忘れられない」
「忘れたくない、輝く宝物」
遠くで、小さく——
カン……
—— 静寂 ——
また、戻って来るかな・・・・
