ほんわか台風|毎週ショートショートnote
市民から好かれる台風―そんな奇妙な台風があった。
気象庁が「第27号・ハーモニー」と命名したそれは、風速3メートル、気温はほど良く、通過した街では気圧がわずかに上がった。
「洗濯物が乾く台風」「気分がほんわかとなる台風」とメディアは大騒ぎし、観光ツアーは満員御礼となった。ハーモニーが通過した地域の経済指数は跳ね上がった。
そして、その経済効果に気を良くした政府は、ハーモニーを制御して、経済発展都市に留め続けることとした。
街は完璧な気候に包まれたまま、数カ月が経過した。
常に快適な温度、湿度、そして気分を保つ風。
誰も急がなくなった。
人々は働くことをやめ、笑顔でうたた寝をするのが日常になった。
そして、街から活気が消えた。
経済は、物理的破壊ではなく、普遍的な安寧によって、静かに凍りついた。
気象庁の職員は、窓の外で止まったままの工事現場を見ながら、記録を残した。
「究極の快適さは、人類にとって、動機の終焉を意味する。ハーモニーは、気象災害ではなく、心理災害となった。」
今回参加させていただいたのは、いつも感謝。
こちらの企画になります。
https://note.com/tarahakani/n/n870d98ffc353?from=notice
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