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偏平足和紙|毎週ショートショートnote

N氏の元に、足跡身分証発行機構の男が現れた。
「足跡身分証の発行にまいりました」
男は古風な和紙と奇妙な機械を取り出した。
N氏は機械に足を乗せた。和紙に足跡が美しく転写される。
「芸術品のようですね」
「伝統と科学の融合です」
一週間後、足跡が印刷された和紙のカードが届いた。

銀行で身分証明に使おうとすると、窓口の女性が首を振った。
「申し訳ございません。偏平足のお客様はお断りしております」
病院でも市役所でも同じことを言われた。街全体が、足跡一つで人を分けはじめていた。誰もが足元を見る日常が、新たな常識となった。

一ヶ月後、あの男が再訪した。
「いかがでしたか」
「私は偏平足ではありません!」
「すみません。システムのミスで土踏まずが薄くなってました」
男は新しいカードを差し出した。
「これが本物の足跡です。明日から元の生活に戻れます」

N氏はカードを受け取る際、ふと男の足元を見た。
男は完全な偏平足だった。

男は既に姿を消していた。街では、今日も誰かが足跡を見せながら、扉の前で立ち尽くしているだろう。N氏はカードを握る指先に、奇妙な震えを感じていた。これは優越感なのか、それとも、底知れぬ恐怖なのか。彼にはもうわからなかった。
(505文字)


今回参加させていただいたのは、いつも感謝。
こちらの企画になります。

https://note.com/tarahakani/n/n7f567b5fff68

#毎週ショートショートnote
#偏平足和紙



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