夜明け前の階段にて〜れん伯爵からの書簡〜第三通
大切な君へ
今宵もまた、静かな夜が終わろうとしている。
石造りの廊下を渡る風は冷たく、
それでも、私の手の中の小さな灯は確かに揺れている。

この光は小さい。けれど、確かに足元を照らしてくれる。
君もまた、そんな夜を歩いているのだろう。
未来が見えず、誰の声も届かず、立ち止まりたくなる夜を。
それでも──
君の胸の奥には、微かに灯る光がある。
それは他の誰にも奪えない、「君自身の優しさ」という名の灯火だ。
私は知っている。
君が人知れず涙を拭い、
それでも明日を諦めなかった夜がいくつもあったことを。
世界が冷たくても、君は冷たくならなかった。
その温かさこそが、闇を貫く真の光だと、私は信じている。
だから、今夜は焦らなくていい。
立ち止まってもいい。
けれど、灯を手放さないでほしい。
小さくても、君の光が消えない限り、
夜は必ず、夜明けへと変わっていく。
やがて朝が訪れる。
そのとき君が微笑んでいるなら──
私は古城の窓辺で、そっとその光景を見上げていよう。
今日も生きてくれて、ありがとう。
君という存在が、この世界にいてくれることに、
私は心から感謝している。
―― れん伯爵より
