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【義実家はタカリー族だった! 第1話~第10話/完結】

《あらすじ》
 主人公・麗華は30年前の初恋の相手と再婚、高齢出産を経て、今度こそ幸せになるはずだった…
夫・康太は10年間以上も親族と縁を切っていたので身内は一人もいなかった。 愛娘・百華が生まれ親子3人で幸せを絵に描いたような暮らしをしていた矢先にまさかの人物が…
麗華の不吉な予感は見事に的中したのだ。 次から次へと襲いかかるトラブルはただの夫婦喧嘩ではない。 構造の問題でどうにもならなくなる。次第に麗華は精神的に病んでいく…
そんな中、温厚で麗華想いだったはずの康太のDVが始まる! 麗華はまだ幼い百華の為にと耐え続けたのだか…
麗華はある決断をする。そこから麗華の革命がはじまる。
一時は憎しみ合い泥沼化した二人。けれど30年前の淡い初恋が思いもよらない未来へと導いていく-------。

※本作は実体験をもとにした物語です。人物設定・時系列・一部の展開や結末には創作を加えています。
(ほぼノンフィクション)

                
第1話 30年前の初恋~再会・再婚・出産

麗華は二度目の結婚でようやく幸せになれると信じていた。 でも、その幸せは想像もしなかった形で崩れていくことになる。 その話をするには、30年以上前まで時間を戻さなければならない。 康太と麗華の出会いは中学一年生の春。 初めて制服に袖を通した入学式だった。 二人は同じクラスだった。 まさか30年以上先の人生まで変える人と出会うなんて、想像もしなかった。 康太は地元では知らない人がいないくらい目立つ存在で、いつも友達の輪の中心にいた。 そんな彼から、人づてに「付き合ってほしい」と伝えられた。 13歳の恋なんて、今のようにスマホで毎日連絡を取り合う時代ではない。 学校帰りに友達みんなで公園へ寄り道をしたり、たまに家の固定電話が鳴って、少しだけ話をしたり。 それだけで十分幸せだった。 けれど、その幸せは長く続かなかった。 康太のことを好きだった女の子。 麗華に好意を寄せていた男の子。 二人が流した噂は、まだ子どもだった私たちには十分すぎるほど残酷だった。 少しずつ距離ができ、気づけば自然消滅。 卒業までの数年間、私たちは一度も言葉を交わすことはなかった。 あれから30年後… 気づけば30年という月日が流れていた。 二人は、お互い違う人生を歩んでいた。 同級生が集まる飲み会で康太と麗華は思いがけず再会した。 懐かしい顔ぶれに囲まれ、昔話で笑い合う時間。 二人の間には30年、疎遠だったとは思えないくらい話も弾み自然と話していた。 それぞれ違う人生を歩いてきていた二人。 康太は一度結婚し、離婚を経験していた。 麗華には20年以上連れ添った夫との間に二人の娘がいた。 飲み会は一度きりでは終わらず、月に一度くらいのペースで続くようになった。 彼はお酒を飲まなかった。 だから毎回、8人乗りの車を出して、みんなを送り迎えしてくれていた。 住んでいる場所の都合で、麗華はいつも一番最初に乗り、一番最後に降りる。 ただ、それだけのことだった。 麗華は深く考えずに自宅の前で乗り降りをしていた。 それが、人生を大きく変えることになるなんて、夢にも思わなかった。 ある日。 「出て行け!」 麗華の夫の口から飛び出したその一言で、20年以上続いた結婚生活は終わった。 あまりにも突然で、麗華は戸惑った。 理由を聞くと、夫は麗華が不倫をしていると思い込んでいた。 何度否定しても、聞く耳を持ってはくれなかった。 もちろん、不倫なんてしていない。 でも、その瞬間、不思議なくらい涙が出なかった。 20年以上の結婚生活で積み重なっていたものが、彼女の中にも確かにあったからだ。 必死に否定しよう!という気持ちは湧かなかった。 麗華はさっさと家を出た。 アパートを借り、生活が落ち着いたら娘たちを迎えに行こう。 そう思っていた。 その後、すぐに協議離婚が成立した。 二人の姉妹は一人づつになったが、高校生なので好きに行き来はしていた。 ただ、財産分与をしなかったことは麗華にとって大きな後悔として残っている。 けれど、あの頃の麗華は、一日でも早くその生活に終止符を打ちたかった。
麗華の離婚後、康太は責任を感じたのか交際と同棲を申し込んだ。 でも、そのタイミングで付き合えば、不倫を認めるようなものだ。 だから麗華は断った。 それから3年が経ち… 康太の気持ちは変わらず、もう一度、麗華に気持ちを伝えたのだ。 その頃、麗華には断る理由なんてなかった。 同級生たちにも祝福され、二人は自然と付き合うようになった。 やがて再婚し、新しい生活が始まる。 そして、麗華は45歳で新しい命を授かった。 まさか、20年ぶりに出産するなんて思ってもみなくて不安と嬉しさでいっぱいになった。 「今度こそ、幸せになれる!」 と心からそう信じていた。 あの人たちが現れるまでは… 康太には成人し、とっくに自立した長男がと長女がいた。 籍は康太の前妻の方に入っていた。 だけど突然、成人した長男と一緒に暮らすことになったのだ。 息子のいない麗華にとって、それは少し嬉しい出来事でもあった。 このときの麗華は、まだ何も知らなかった。 そんな中、元気な女の子・百華(ももか)が誕生した。 長男は何の興味も示さなかった。むしろ迷惑そうだった。 彼にとっては邪魔者のような存在だったのであろう。 成人した兄だけど、赤の他人のような態度だった。何一つしてもらったこともない。 なぜ、このタイミングで一緒に暮らしたのか、今だにに謎だ。 麗華は康太の子供達が成人して独立していたから再婚を決めたのに…と徐々に違和感を覚え始めてきた。 ある日、長男は数日間の旅行へ行った。 「やっと日常が戻る。」 そう思ったのも束の間だった。 突然、彼の部屋のドアが開き、見知らぬ男性が一緒に出てきた。 麗華は目を疑った。 話を聞くと、旅先で知り合った行きづりの人だという。 しかも、そのまま我が家に泊めることにしたらしい。1週間以上は泊まっていた。 当時はコロナ禍の真っ只中。 家には、生まれたばかりの新生児がいた。 感染への不安で、多くの人が外出さえ控えていた時期だった。 それなのに、相談もなく見知らぬ人を家へ招き、何日も泊まらせる。 麗華には理解できなかった。 康太に訴えても、長男をかばうばかりで、注意することはなかった。 新生児を守りたいという麗華の気持ちは、誰にも届かなかった。 それだけではない。長男との同居中、精神が崩壊する出来事が毎日のように起こり、産後間もない麗華にとって初めて、鬱というものを経験した。新生児より、成人男性の長男の方が遥かに手がかかった。麗華は彼がまだ幼い子であれば自分が育て直して教えてあげたいと思うことも多々あった。しかし、そうはいかない。 この頃にはもう、「普通の感覚」が、この家では自分だけなのかもしれない。そんな孤独を感じ始めていた。 あの頃の麗華は、 まだ知らなかった。 この出来事が、 ほんの序章にすぎなかったことを。 麗華は、この家族を後に 『タカリー族』 と呼ぶことになる。 なぜなら、 この家には、 “働く人”ではなく、“誰かのお金を当たり前にあてにする人たち” が集まっていたからだ。 麗華の知らない地獄は、 まだ始まったばかりだった。 ⸻

#創作大賞2026    #恋愛小説部門


【第2話予告】 「最初は大事な息子だと思っていた。」 そう思っていた麗華の考えは、 数か月後には完全に覆される。 働かない息子。 庇い続ける夫。 そして、次々と現れる義母、義妹たち…


【義実家はタカリー族だった! 第2話】

  【義実家はタカリー族だった! 第2話】

第2話 嫌な予感が的中

 長男との共同生活が始まってから麗華の生活は少しずつ変わっていった。

彼は働いていなかった。
昼夜逆転の生活で、昼間は部屋にこもって眠り、夜になると活動を始める。

毎日の食事は麗華が用意していた。
それでも、気に入らなければ、口にもしない。

かと思えば、翌日使う予定で買っておいた食材を勝手に使い、自分だけの食事を作ることもあった。
中途半端に残された食材の残骸だけが残っている。
新生児がいる中での買い物がどれだけ大変か、彼らにはわからないのだ。

使ったフライパンも、食器も、そのままシンクへ。

リビングには脱ぎっぱなしの服や私物が散らかり、片付けるのはいつも麗華だった。

新生児のお世話だけでも手一杯なのに…

授乳、おむつ替え、寝かしつけ…。

やっと眠ったと思えば、今度は長男が使った食器を洗い、散らかった部屋を片付ける。
洗面所やお風呂場の排水溝は長男の痰ですぐに詰まる。彼は当然、放置。

お風呂も洗濯も、長男の生活リズムに振り回され、一日の予定は何度も狂わされた。

「どうして、私が成人した人の世話までしなければいけないの…?」

そんな思いが、少しずつ胸の中に積もっていった。

麗華は何度も康太に相談した。

「少しだけでも注意してほしい。」
「このままでは、私の身がもたない。」

そう訴えても、康太は長男を庇うばかりだった。

「悪気はないんだから。」
「もう大人なんだから放っておけ。」

その言葉を聞くたびに、麗華の心は少しずつすり減っていった。

産後間もない麗華の体にも異変が現れ始めた。

眠れない。

食欲がない。

何をしていても涙があふれてくる。

百華を寝かしつけたあと、隣で声を殺して泣く日が増えていった。

それでも家事は止まらない。

長男は働いておらず、お金にもルーズだった。

税金滞納等の督促状は世帯主である康太宛に届く。

支払わなければ困るのは家族全員だった。

康太は独立を控えていたこともあり、結局、麗華は家計や自分の貯金から立て替えて支払うしかなかった。

『ごめん』や『ありがとう』

の言葉すらない。

長男は当然のような顔をしていた。

そんなある日。

麗華の様子がおかしいことに気づいた親友・梨花が、心配して家を訪ねてきた。

梨花は、玄関で私の顔を見るなり言葉を失った。

「……どうしたの?」

その一言に、麗華は何も答えられなかったが親友の顔を見て泣き崩れた。

幸せの真っ只中にいるはずなのに笑顔を失い、心も体も限界だった。

憔悴し、疲れ切った表情をしていたのだ。

梨花はすぐに異変に気づいた。

麗華は何度も康太に助けを求めていた。

「もう限界だよ。」

そう訴えても、その言葉が届くことは一度もなかった。

それどころか、康太は麗華の変化を面白おかしく笑いながら、

「更年期じゃない?」

そう言って片づけてしまった。

その瞬間、麗華は「この人は私の苦しさを理解しようとしていない」と感じた。

 百華が生まれて直ぐに康太は念願であった夢をかなえるために独立をした。 資本金は見せ金として後輩に借り、設立にあたっての手続きは全て麗華が全て一人で行った。生後4か月の百華を抱えて税務署、法務局、市役所、公正役場、年金事務所、労働保険事務所をまわり沢山の書類を書いて手続きをした。康太は社長とは名ばかりで、実質ただの運転手であった。他の従業員と何ら変わらないのである。 従業員に嫌われたくないからと、注意もできない。大概、それらの嫌われ役は麗華に回ってくる。 事務や経理、銀行回り、支払い、税理士や弁護士とのやり取りも全て麗華の仕事であった。
社長である康太が起こしたトラブルで訴えられた裁判も長期にわたり続いたが、弁護士事務所での打ち合わせも康太は他人事のように人任せであった。相手方からの書面の反論文も全て、百華を寝かしつけて落ち着いた夜中に麗華が一人で作成し弁護士へ送っていた。その時、リビングまで康太のいびきだけが響いてきた。

康太は麗華に相談もせず、勝手に身内や知人を雇い入れた。
当然、トラックも必要だ。まだ免許がない会社に通常のローンは通らない。だから高利貸しを使って購入したり、取引先から借りて売上から引かれる仕組みになる。燃料などの経費の他、会社で支払う社会保険も増える…
利益なんてほとんど残らなかった。

そして身内や知人の為、通常の売り上げよりも遥かに多く給料を設定し大赤字だった。いわゆるどんぶり勘定。お金の流れを全て把握している麗華が何度も何度も忠告しても理解しなかった。いや、理解できなかったのであろう。

従業員の機嫌を損ねることだけは、何よりも避けたかったのだ。

会社のお金の流れを把握していた麗華は、不安だけが日に日に大きくなっていった。

ちょうどその頃、運送業の許認可を取得するための条件も厳しくなっていた。

銀行口座には何度も多額の残高を用意し、役員は法令試験に合格しなければならない。

会社にとって、大きな壁だった。

ところが康太は、こうした責任ある手続きを自分で引き受けようとはしなかった。

面倒なことになると、いつも誰かに任せる。

それが康太のやり方だった。

役員には前妻の娘の夫も加わり、法令試験を受けることになった。

しかし、結果は何度受けても不合格。

試験のたびに、条件を満たすための資金をかき集めなければならなかった。

会社の将来を案じていたのは、麗華だけだった。

会社はまだ軌道に乗っていなかった。

許認可も取得できず、思うように利益は出ない。

経費ばかりがかさみ、自分たちの給料さえ、ほとんど会社に返金ていた。

麗華の実家にも何度も助けてもらい、ようやく会社を支えている状態だった。

そんなある日だった。

康太は何の相談もなく、会社名義でトラックをローン購入した。

その際、キャッシュバックで受け取った500万円を、家を購入する義弟へ全て貸したのだ。

会社の口座残高は、一気にゼロになった。

麗華は言葉を失った。

会社を守るための大切なお金であった。

それなのに、康太は悪びれる様子もなく言った。

「困ってるときは、お互い様じゃん。」

その言葉を聞いた瞬間、麗華の中で何かが切れた。

「お互い様なんかじゃない!」

気づけば声を荒げていた。

「いつも一方通行じゃない!

それに、今一番困っているのは、うちでしょう!」

康太は何も言い返せなかった。

弟一家は新しい家を購入したが、義弟の嫁は毎晩のように豪遊し、ホストにも通い、実母と旅行や不倫相手と外食を楽しむ様子を、毎日のようにSNSへ投稿していた。

麗華は、その画面を見るたびに胸の奥から怒りが込み上げた。

『私たちは生活を切り詰め、会社を守ろうとしている。

それなのに、なぜ私たちのお金が、当たり前のように流れていくのだろう。』

その日、麗華の中で何かが音を立てて崩れていった。

それまで康太は、10年以上も親族と縁を切っていた。

だから麗華は、「身内付き合い」はないと聞かされていた。

ところが、ある日突然、その状況は一変する。

康太の父親が、義妹一家を連れて家にやって来たのだ。

義妹は子だくさんで、大人数の家族だった。

私は、その日来るのは義父だけだと聞かされていた。

そのため、用意していた料理では到底足りない。

急遽、みんなで外食することになった。

大人数での食事は、それなりの金額になる。

会計の時間になった。

誰一人として、財布を出さなかった。

店内に流れる沈黙。

視線だけを感じる。麗華は財布を出し大人数分の支払いを済ませた。

まるで、それが当たり前であるかのように。

その時、麗華は胸の奥に小さな違和感を覚えた。

しかし、その違和感が、この先何年も続く地獄の始まりだったとは、このときはまだ知る由もなかった。

このときは、まだ初めてのことだった。

前もって来る人数がわかっていたり、こちらから招待したなら準備もするし、食事代も払う。
しかし、毎回そうではなかった。

義妹はついに義母を麗華に会わせようとした。 麗華も義母には百華を会わせたいとずっと思っていたので、『私も会いたい!』と返事をした。
これが、そもそもの大失敗だった。

#創作大賞2026 #恋愛小説部門


【義実家はタカリー族だった! 第3話】

  【義実家はタカリー族だった! 第3話】

第3話 康太不在で義母に孫の百華を初めて会わせた日

 義母との再会の日がやってきた。
約束の場所へ向かうと、義妹は子どもたちをぞろぞろと連れて現れた。久しぶりの再会だというのに、どこか落ち着かない空気が流れている。 康太は、どれだけ周囲に説得されても、頑なに母親との再会を拒み続けていた。結局、麗華と百華の二人で行くことになった。 その理由は、以前、康太が購入した家に義母と長男が一緒に住んでいた頃までさかのぼる。 長男の生活態度や素行について義母が注意したことがきっかけで親子げんかとなり、康太は母親ではなく長男の味方をした。 結局、義母は家を出ることになり、その際、康太に引っ越し費用を請求して家を後にしたという経緯があった。 この話だけを聞けば、麗華は義母に少し同情していた。実際に長男と生活を共にしていた麗華には、義母が注意したくなる気持ちも理解できたからだ。 しかし、その一方で、康太に引っ越し費用を請求するという行為には、どこか拭えない違和感を覚えていた。 結局、この日は康太と義母の10年ぶりの再会はなかった。 麗華は百華を抱き、義妹一家と義母とそのまま近所のお蕎麦屋さんへ向かった。 義母は昔と変わらず派手だった。義母にビールをつがれ、麗華も義母のグラスにビールを注いだ。 義妹の子どもたちは楽しそうにはしゃぎ、義母も上機嫌だった。一見すると、ごく普通の家族団らんのような穏やかな時間が流れていた。 ただ、義母は、自分が食べきれず残した刺身を、使用済みの醤油皿につけたまま「食べなさい」と麗華の前に差し出してきた。 「麗華ちゃん、これ食べなさい!」 「あっ、大丈夫です…」 「いいから食べなさい!」と、しばらく続いた。

麗華は自分の分をすでに食べ終えていた。次から次へと注がれるビールで胃袋も限界に達していたが、それでも義母の機嫌を損ねないよう、できるだけ合わせた。
そもそも麗華は百華の授乳中でお酒は控えていたが断れる空気ではなかった。とにかく気の短い義母には気を使った。麗華は康太の母親である義母を嫌いになりたくなかったからだ。 そして、いつか康太と義母を再会させて、10年分の穴埋めをしてたくさん親孝行してあげたいと思っていた。 店も昼の部が終わり、帰るように店員さんからの声がかかってしまった。 お会計の際、義母はトイレへ行った。義妹はさらさら出す気はない。店員さんは待っている… 義母、義妹一家、そして麗華。かなりの人数分の会計を、一人で支払うことには抵抗があった。 しかし、この状況では、誰かが払わなくてはいけない。麗華が財布から一万円札を2枚、出した瞬間に義妹が『いいよ!いいよ!』と言って勝手に義母の財布から支払ったのだ。この日、麗華は誘われた側だったし前回は麗華が支払っていたのでここではご馳走になった。ビールを飲んですっかりご機嫌になった義母はトイレから戻ってくるなり『次、行こう!』と言った。 この時まだ、義母は自分の財布から支払われたことは知らない… 麗華は次の店は、支払うと決めていた。 次は、義母の行きつけの居酒屋スナックだった。子供たちはぞろぞろいるし、幼い百華も限界に近いし早く帰りたかった。 場の空気を壊さないように麗華はふるまった。かなりの長時間に及んだため、麗華はこっそりLINEで康太に『迎えに来て!』と送ったが、康太はこなかった…
義母のマイペース度は加速状態。カラオケも次から次へと入れるが途中から歌えなくなると『麗華ちゃん、歌いなさい!』と強引にマイクを渡してくる。麗華も昭和の女。歌えない歌はほとんどなく義母の要求にすべて応えた。 散々、はしゃいで疲れたのか気づいたら義母は店のテーブルで深い眠りに入っていた。 その後の記憶は当然、ないようだ。 ここでの会計は店に居合わせたお客さんの一人が麗華の歌を聴いて、全てご馳走してくれたのだ。

後日、麗華は、お店とご馳走してくれたお客さんへのお礼に菓子折りを持って店を訪れた。 開店前にもかかわらず店を開けてもらい、子どもたちも騒いで迷惑をかけてしまったことが気になっていたからだ。 あの日の記憶が無いという義母から数日後、連絡があった。 あの日、財布に5万円を入れていたのに、空っぽになっているというのだ。麗華は嫌な予感しかなかった。 義母の財布を手にしたのは、会計のときに支払いをした義妹だけだった。 それと会計時に一緒にいた義妹の高校生の長男だ。 義妹の長男には前科があり、義母のお金を盗んでは何度も注意されていたという。 そのため、真っ先に疑われても不思議ではなかった。

2件目のお店は、居合わせたお客さんが支払ってくれたので一銭も使っていない。お蕎麦屋は2万円でお釣りが返ってきたから3万円が消えた。 この日、最初に起きたこの出来事こそが、この一族の本質だった。――しかし、その時の麗華は、まだ知る由もなかった。

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【義実家はタカリー族だった! 第4話】

 【義実家はタカリー族だった! 第4話】

第4話 義父の全てが嫌い

 麗華が義父を嫌いなのは理由がある。
初対面から最悪だった。非常識にもほどがある。

正にお金は出さないが、口は出す!という口だけ男だ。この一族の大黒柱であっただろうこの男。
どうしてこの一族は、お金にだらしなく取れるところから取ろうとし、タカる習性があるのか…
この男に会って全ては納得した。

百華が生後3か月に突然、家に来た。
しかも、康太が仕事でいない時間にわざわざきて長時間、滞在するのだ。
早い時は朝の8時前から突然来て、夕方18時ころ康太が帰宅するまで滞在する。こんな日が繰り返された。
新生児のいるリビングで常に紙たばこを吸って文句ばっかりいっているのだ。百華もいるし家の中での紙たばこはやめてもらいたかったが、この時の麗華には言えるすでもなかった。
我慢するしかなかったのだ。麗華は百華を守れなくて申し訳ないことをしたと後悔している。わざわざ早朝から度々、康太が不在時に来ていたが結局、何をしにきていたのかは今でも不明だ。
康太の不在時に長時間、滞在されても迷惑だよ!と訴えても、聞いてもらえることはなかった。コーヒーが好きだと聞いていたから、麗華は常にコップが空にならないように気を使った。
突然、『コーヒーしかでないのか!』と嫌味が始まった。
本来なら『迷惑だからさっさと帰れ!』と言いたかったが麗華はぐっとこらえてお茶を入れなおした。もちろん、時間帯により朝食、昼食、夕飯に重なることもある。麗華にも意地があり、新生児の百華を連れて急いで買い物に行き手抜きと言われないように全て1から手作りで出した。義父はファミレスで働いていた経験もあり、見た目もうるさい。揚げ足を取られないように麗華はカフェのような盛り付けをし、お皿にも気をつかった。
この男もただものではない。見た目で文句の言いようがないと味や触感でくる。ほぼ歯がない義父。一時は保険証がなく歯医者にも行けなかったようだ。
『やっこい!(柔らかい)』だの、『固い!』だの、『辛い!』だの『甘い!』だの散々、言われたが麗華は相手にせず、無視をすることに徹底した。麗華も徐々に強くなってきた。
麗華は、百華を寝かしつけて他愛のない会話につきあった。
家事や仕事が溜まってはいたが全て、後回し…
これも康太のためだ!と思って我慢した。
ある日、麗華の次女で大学生の娘が1部屋、つかっていたことに対して文句を言ってきた。『おかしいだろ!部屋を空けろ!』と。
このことは、康太に話した。どうせまた聞く耳すらもたないと思ったらこの日は違った。康太は『ここは俺の家だ!親父には関係ない!』とハッキリ言った。康太にもこんな一面があったのかと知って麗華は嬉しかった。

会ったこともない時から、康太と再婚した麗華の存在が気に入らなかったようだ。この時の麗華は理由が全くわからなかった…
後に分かったことだが、息子である康太から詐取できなくなるからだ。
麗華はこれを知った時、恐怖を感じたと同時に妙に納得がいった。
義父の話を聞いた麗華は耳をうたがった。
『ばあさん死んだら、姉貴とお前んとこで世話になるから』
麗華はとっさに『無理!』と言ってしまった。

ちなみに、ばあさんというのは康太の祖母。姉貴というのは康太の伯母にあたる人物で半身不随の障害がある。息子が一人いるが絶縁状態で見てもらえないらしい。
だからといってなぜ我が家で同居しなければならないいけないのか?
麗華の中で、あり得ないことだらけになっていった。
麗華は百華の子育てに専念したい。他にも会社の仕事もあるし義父や伯母の面倒までみれないし無理だ。麗華は身の危険を感じていた。

義父の長時間、滞在中に何度も言われたことがある。
『最近はパチンコ屋で紙たばこが吸えないんだよ!外まで行くのが面倒くさい。でも電子タバコならOKなんだよ。』と。
やたらと電子タバコを強調してきた。要求されているのだと感じた。
父の日も近かったため麗華は早速、アイコスを購入して義父にプレゼントしたのだが…

後日、早朝に突然きて『こんなものタバコじゃねーよ!返す!』とぐちゃぐちゃになった包装紙と一緒にぶん投げられた。
麗華は怒りと悲しみを完全に通り越して、笑顔で『あれ?欲しかったんじゃないんですか?』と冷静に言った。
それに対して義父は『思っていたのと違った』と。
麗華は複雑だった。できれば康太の父親を嫌いにはなりたくはなかった。
しかし、好きになれる要素が一つもない。
そもそも義父から、お前呼ばわりされるのもはらわた煮えくりかえっていた。

それからしばらくは義父の早朝からの訪問もなく、平穏な日々を送っていた。
この年の大晦日、毎年恒例の同級生の家に集まって忘年会があった。
相変わらず康太はお酒を飲まないから、県をまたいで自宅と逆方向の友人たちを全員を送っていき我が家に帰宅したのは元旦の朝4時を過ぎていた。
そこで聞かされたのが今から2~3時間後に義弟家族が来るというのだ。

麗華の頭の中は、パニック!
百華に授乳し寝かしつけ急いで洗濯と掃除、片付け、24時間営業しているスーパーへ買い出し・・・
休む暇、寝る暇もなく麗華は一人でバタバタ…
康太のいびきがリビングまで響いていた。

結局、一睡もせず家事をしているとピンポンとインターホンがなった。
実は3日前、義弟の嫁がコロナになったと電話で聞いたばかりだった。
この時、まだコロナ禍の最中。
まさか嫁は来ないだろうと思っていたら毛布を巻いてマスクして普通に来たのだ!
薬で体調は良くなったのかもしれないが、3日前にコロナと聞いたからには会って会食とか家に来ることは避けもらいたかった。
生後5か月の百華もいるし、翌日は高齢の両親にも会う予定がある。
うつすわけにはいかない。この頃、コロナにかかって亡くなった芸能人が報道されていた。

義弟家族は何も考えずに来たようだ。むしろ、言わなきゃわからないという考えでいたようだ。さすがに察して、家には入らず店に行くことになったのだが…
麗華は康太に『百華はまだ寝てるし、私一睡もしていないし、家の中を片付けたいから康太だけいってきな。』と言ったら、康太がブチ切れた。

失礼だと。
麗華は『失礼なのはどっち?夜中に突然、来ることを言ってきて数時間後には来られて、しかもコロナで!百華も昨日は疲れて、今やっと寝たんだよ!』と言っても康太には伝わらなかった。
このことが後々、問題となる。

色々なことが重なり、麗華は限界に達していた。
そんな時、義妹から電話がきて午後から会うことになった。
義妹の家の近くで初めて、義妹と飲むことになったのだ。
この時、義妹から誘われたのは初めてだったので麗華は嬉しかった。
元旦でも駅前の居酒屋チェーン店が昼間からやっていた。
店内にお客さんは誰もいなくてちょうどいい。
先についた麗華は個室の席で待っていた。
義妹は旦那と一緒に夫婦で来た。
義弟の嫁がコロナで来た話は『あり得ない!』と二人とも同情してくれた。
それだけで麗華の気持ちは軽くなった。

宴もたけなわ、お開きの時のこと。
店員さんが伝票を持ってきた瞬間、二人揃って立ち上がりトイレにいった。
え?店員さん、待ってるのに?と麗華は不思議に思った。
とりあえず立て替えておこうとひとまず麗華が全額、支払った。
戻ってきた二人が『ごちそうさまでした~』と言っている。
そういうことか…
麗華は、この二人を嫌いになりたくなかったから心の中にしまい笑い話にした。

数日後、康太と麗華と百華は三人で初詣に向かった。
麗華が車を運転し、遠くの厄除け大師まで車内も笑いで溢れていた。
久しぶりの穏やかな時間だった。
そんな中、康太のスマホが鳴った。
義父からだった…
康太はスピーカーにして話していたから全て聞こえていた。

義父は確かに『嫁いるか?聞かれたらまずいからよ~』と言っていた。
義父は何度も何度も確認していたが、康太はわかっていなかったようで返事もせず、会話は始まった…
義妹から話が伝わったようだ。
『なんでお前の嫁は、誠(義弟)の嫁を嫌うんだ?コロナだからって、家に入れないのは失礼だろ!』とハッキリ言っていた。
康太もバツが悪く返事に困っていた。
長々と20分位、ぐでぐで言っていたが結局、麗華が悪者になっていたのだ。
康太は肯定も否定もしなかった。

せっかくの和やかな時間もすっかり邪魔され、車内は暗くなった。
コロナ禍で、家に乳幼児がいてもコロナ患者が来客したら、家の中に入れなきゃいけないって…
麗華には理解できなかった。

しばらく、麗華は口を閉ざした。
麗華の怒りに気づいた康太はやたらと気を使ってきた。
麗華も義父に対して言いたいことは山ほどあったが我慢した。

その時、康太は『母親に会うか?母親を誘って、焼き肉でも行くか?』と言った。
10年ぶりの親子の再会。これを逃すわけにはいかない!と麗華は思った…

#創作大賞2026   #恋愛小説



【義実家はタカリー族だった! 第5話】

 【義実家はタカリー族だった! 第5話】

第5話 義母と康太、ついに10年ぶりの再会

 初詣に向かっている車内で、義父からのくだらない電話のせいで空気が最悪に…
あれだけ母親を嫌い、再会を拒んでいた康太が自ら『母親を誘って、焼き肉でも食べに行くか!』と言った。
その瞬間にどんよりしていた空気が清々しく変わったのがわかった。

麗華はすぐに義母に連絡した。
義母は『本当に?本当に?』と驚いて大喜びをしていた。
麗華も嬉しかった。
義父と義母は20年位以上も別居中のためこの日、義父を呼ぶ必要はなかった。
義母を迎えに行った。普段から派手だが一段と派手だった。
念願の息子に会えるからおめかししてきたのが一目でわかった。
相当、嬉しかったのであろう。

どんな再開になるのかと心配したが、意外にもすんなりと自然だった。
親子にしかわからないか積もり積もった会話を楽しんでいた。
それを見ていた麗華は嬉しくなった。
義父が義父なだけに、義母が良い人で良かった!と麗華は心底、思った。
この時は…

義父から聞いていた話では、義母はお金にだらしがなくどうしようもない人だど聞いていた。実際にあってみたらそんな人には思えなかった。

焼き肉やでの再会以来、頻繁に義母からの電話や訪問が増えた…
麗華は義母が好きだったのですべてに応えていた。
何より、この10年間の穴埋めを康太の代わりにやってあげようと麗華なりに行動にうつした。
母の日にはサプライズで料亭の個室を予約し、義母の好きなブランドのバックとバラの花を用意した。
義母の泣いて喜んでいる姿をみて、麗華も嬉しくなって涙がでた。
この義母を実母と同じくらい大切にしようと決めた日でもあった。

それから毎週末、親子3人でお出かけしていたがいつの日からか義母も加わって一緒に豪遊するようになった。
そんな日が三年も続いた・・・
気づいたら、義母は仕事を辞めていた。
年金は最低額しか受給されていないようだ。
なぜ辞めたのかは誰も知らない。
麗華には徐々に違和感と不信感が湧いてきた。旦那である義父からは一切、生活費をもらっていないという。年金は義母のアパートの家賃以下だ。
でも、なぜか服装はますます派手になっていくし毎週、新しい洋服でくるのだ。これはさすがに康太も気づいた。
お金に底がつくのは誰でもわかる。わからないのは義母本人だけだった。
いつの日からか泣いて騒ぐようにもなった。
『あんたたちが一人、毎月3万円づつ払えばいいのよー!』と子供である兄弟妹の三人に要求してきた。連日、お金の要求が始まってきた。
麗華は本性なのか、ボケたのか区別がつかないがなんとかしなければ…とは思った。康太と義弟は解決のしない相談ばかりしていた。
麗華は思わず『兄弟でどうにかするのもわかるけど、その前に旦那であるお義父さんに言えば?』と言った。
二人とも、うっかりしていたようだ。そもそも昔から義父は養うという概念がないのではないか…とまで思える出来事でもあった。
しばらく週末のお出かけはなくなり、義父の住んでいる他県まで出向き何週間にもわたり話し合いをした。
珈琲店で義父が声を荒げる場面もあった。婚姻費を渋っているようにも思えた。渋っていなければ毎週末、義父の住んでいる他県まで何度も通う必要はなかったはずだ。義妹はどっちみち義母に支援はしないのと、大家族でこられても飲食店代はこっちもちだからあえて呼ばなかった。
平行線の話は何週にも続き、もう面倒になってきた。康太と義弟で義母に毎月、援助する話が出たとたんに義父にもプライドがあったのだろう。
いきなり『もういい!お前らは一切、出すな!俺が出す!』と、やっと言った。
結局、義父が毎月、生活費を義母に送ることになった。
籍婚が入っている以上、婚姻費を支払うのは当然のことだ。
それも直接、送ればいいものを義父は麗華の口座に毎月振り込んでくる。
それを麗華は毎月、義母に渡す。
麗華にとっては迷惑でしかなかったが、こんなことでもめたくないから従っていた。

麗華は何週間も他県へ行き、こんなことに巻き込まれたことによって、百華を遊びに連れて行けず、腹が立ってきた。
数か月後、義母はお金が足りない!とまた泣いて騒いだ。
康太が義父に交渉し、プラス5万になった。
トータルで見ると高齢者が一人暮らしていくには十分な額ではあるが相変わらず『足りない!』と騒いでいた。これはもう、放っておこうと麗華は関わることを一切、やめた。
義母と同い年の麗華の両親は、まだ仕事はしている。なにより麗華達、子供に要求はしてこない。
麗華はつくづく自分の両親が義母のような人間ではなくて良かったと改めて思った。世の中でいう『毒親』というものを初めて見てカルチャーショックを受けた。本当に困っていたら助けるけど、義母から当たり前のように要求してくるのは違うと思った。

焼き肉やでの再会以降、約3年間もの間、毎週末一緒に過ごした。
あたりまえになっていた。義母があらゆる面で本性を出してきてからは麗華も我慢することを辞めた。
それでも、平日アポなしでピンポンピンポン来られる。
麗華が仕事中であろうと、予定があろうとお構いなしだった。そして、昼間からビールを付き合わされる。
義母は同居を匂わせてきたが、麗華はそれだけは避けたかった。

義母が来るようになったら、義父は来なくなった。
麗華の車があるといるのがわかるから居留守もできない。
特に月末は仕事がたてこんでいて忙しいから困る!と伝えても理解してもらえない。仕事なんてできる状態ではない。
義母だけではなくなっていた。
義妹も子供たちを連れて頻繁に来るようになった。
当然のように、昼も夜も食べて帰る。
いつの日からか、実家のように使われるようになり麗華の心と体は壊れていった。平日も週末も、昼も夜もとなると過度の介入と言わざるを得ない。
誰かしらがきて飲み食いしていく。食費も嵩む…
麗華には時間もプライバシーすらもなくなっていた。

ある日、義母から麗華に金銭的な要求が始まった…
初めは康太に要求していたようだが康太にも限界がある。
康太は『これ以上は麗華に言ってくれ!』と言って逃げたのだ。

間もなく、麗華の元にも無心が始まった…
義母からの電話
『30万円もらうからね!』『50万円…』『100万円…』
『80万円…』と脅迫さながらの要求に麗華にたまっていたものが爆発した。

以前、義母の姉である叔母が現金100万円を義母に預けて、康太の家のキッチンのリフォームをするようにと言ってくれたらしい。
そうとも知らずに叔母さんにはお礼も言えないままでいた。
過去にもこの叔母さんは百華が生まれてからお祝いやお年玉をくれていたのだが一度も受け取っていないし知らなかったからお礼も言えないでいた。
毎回、義母に使われていた。孫のお金まで奪っていたのだ。

てっきりリフォーム代は義母が出してくれたのだと思っていた。
冷静に考えれば、義母にそんなお金があるわけがない。
義母がやたらとキッチンのリフォームをするように進めてきた時期があった。叔母に言われたからだったのかと納得した。
出してもらったのは80万円で足りない分は麗華の貯金から出したことがあった。ってことは、義母は初っから20万円をネコババしていたのだ。

それを『100万返せ!』と言ってきたのだ。
この時の麗華はもうすでに、優しい純粋な女性ではなくなっていた。
自分たちを守るために強くなっていたのだ。
康太の身内が現れてから様々な理不尽な目にあい、色々なことを経験して学んだ。百華と自分を守るのは自分しかいないと確信していた。

康太には言っても伝わらない。言うだけ無駄だということは百も承知であった。
麗華は自然と強くなっていく・・・

義母から100万返せと言われた翌日、銀行へ向かった。
リフォームは会社兼自宅のキッチンで領収証を提出していたので、会社のお金で返そうとしたが会社の口座に返せるほどの残高が残っていなかった。
仕方なく、麗華の口座から義母に80万円を送金した。
『リフォーム代なら100万円ではなく80万円だったはずですので、80万円は返します。もう二度と関わりません!今後は金銭の要求があった時点で弁護士に相談するします!』と伝えた。
麗華のこの行動には康太もさすがに驚いていた。
というより、この頃の康太は麗華の見えないところで母親を擁護し金銭的援助もし、麗華を悪者にして自分も被害者だという嘘のストーリーをつくり義母と結託していたのだ。
これは後に義母本人が酔っぱらって、麗華に電話で暴露したのだ。
義母にばらされた康太は放心状態になった…

そして、麗華は康太の親族全員の連絡先をブロックと削除した。
百害あって一利なし!とは正にこの人たちのことだ。
麗華の中でこれ以上、康太の親族を嫌いになることもストレスだし縁を切ったほうが遥かに楽だった。

以前、義父が要求してきたアイコスを使ってみたら気に入らないからと返されたことがあった。麗華は返されても使わないので義妹にあげた。
『マジ?』と言って喜んでいた。
義母にも再会してすぐの母の日にプレゼントしたブランドのバッグも1年後に返された。もうじゅうぶん使ったから!と。このバッグも義妹にあげたら喜んでいた。
麗華は義両親を人として軽蔑せざるを得なかった。
結局、ものではなく『お金』なのだ。
お金なら、返すこは絶対にしない。

康太のまわりには無心してくる人物がもう一人いた。
康太の前妻との娘である。アラサー、既婚者、子持ちだが昔から人にやってもらって当たり前、自分から人になにかをすることは一切ないし会話もない根暗。康太のスマホのLINEのトークにはこの10年間、ほぼ『お金ちょうだい』しかない。
康太も言われるがまま援助していた。これは死ぬまで続くだろうと確信している。康太はこの娘から無心された後は必ずと言っても過言ではないくらい麗華のお財布からお金を抜いていくからわかりやすい。

ちなみにこの娘も長男同様、妹である百華にお菓子一つくれたこともない。
父の日にあえて呼んでも、手ぶらだった。家族で散々、飲み食いして帰った。しっかりとタカリー族の血を受け継いでいた。
この康太の娘の夫も働くことがあまり好きではないようだ。税金関係は20歳過ぎてから一度も支払った事がないようで税金滞納やクレジットカード会社や家賃滞納で強制退去…で毎日のように会社に電話がきた。その度に麗華が対応した。康太の娘婿も全く信用できない人物だった。
ある日、麗華の預金口座から身に覚えのない金額が毎月引かれていた。
慌てて確認したところ、康太が麗華のクレジットカードを勝手に娘婿に貸していたのだ。ETCも使われていた。
毎日、高速通勤していたことも発覚した。麗華が康太に問いただすと『仕方ねーだろ!あいつらカード使えねーんだから!』と言った。
麗華は夫である康太の信用は完全に失った。
クレカの貸与は犯罪である。
すぐに返却させたが、証拠として立証することができず訴えることもできないし、この時はまだ夫婦でいなければ…と思って我慢してしまった。

こんな一族の中で押しつぶされるかのように小さい百華を一人で守ってきた麗華の身体にもついに異変があらわれた…

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【義実家はタカリー族だった! 第6話】

 【義実家はタカリー族だった! 第6話】

第6話 麗華の病気と康太のDV  

 振り返ると麗華は、康太と再婚して5年間ずっと心休まる時はなかった。
康太の長男との同居、高齢出産、起業、康太の親族全員からのお金の無心と過度の介入…
次第に麗華は、それを阻止しない康太に不信感を募らせていった。

ある日の週末、義母は友人と約束があったようで一緒に過ごさない時があった。3年ぶりの親子3人水入らずで過ごすことができると思っていた…
義母が一緒の時は子供中心の遊び場ではなく、昼間からお酒が飲めるお店ばかりだったから、久しぶりに子供中心で行動ができた。
遠出をして室内のテーマパークへ行き、百華も楽しそうにはしゃいでいた。
夕飯は焼き肉でも行こうかなと考えていた矢先、康太のスマホが鳴った。
義妹からの電話だった。
康太は『わかった!』と言って切った。嫌な予感しかしない。
今からピザを持って義妹一家と義母が一緒に我が家へ来るという約束をしていた。
急に言われても、出先だし家の中は散らかっているし、すぐに帰れる距離でもない。しかも、麗華に聞かずに勝手に返事をした。
義母と大家族が来るなら即、片付けたい!と思った麗華は帰るしかなかった。当然、まだまだ遊びたい百華は泣いた。

義母のお酒や大家族の飲み物や多少の買物をして、急いで帰ったが間に合わなかった。
とりあえず、座れるくらいには整えた。ピザを持ってきてくれたのはありがたいが、どう考えても大家族と義母と康太家族では足りる量ではなかった。
しかも某宅配ピザを車で1時間かけてわざわざもってきたので当然、冷めていた。温めなくていいというからそのままにした。
大家族の育ち盛りの子供たち(小、中、高生)が喜んで食べていたから足りるわけもなく自然と手が出なかった。康太も一切れで手を止めていた。
仕方なく、麗華はパスタを急いで作った。
人数からして飲食店並みの洗い物が出来上がった。
当然のごとく、あと片付けまで全て麗華一人でやった。

平日も週末も常に時間を奪われるようになっていた。
これを正しく過度の介入というのであろう…

麗華の体調に異変があらわれてきた。確実にストレスからきていた。
麗華自身も『鬱』なんじゃないかと感じていた。
気分が沈んでしまって何もできなくなってしまうこともあった。
特に義父の存在と、常に押しかけて来る義母と義妹大家族、義弟に貸した500万円はまだ返ってこない中、前妻の娘の繰り返される無心、その反面麗華の給料を返金したり、麗華の長女の大事なお金を取られたり、麗華の実家からの支援がないと生活が成り立たない事を思うと急にイライラしてくる。
突然、無表情と無気力になってしまう。
そんな麗華に康太は許せなかったのだろう。
『仮病だ!』と言って、麗華の髪の毛を鷲掴みし暴力が始まった。
麗華はこれをDVだとすぐに認識しクリニックへ向かった。
すぐに『適応障害』診断された。
康太に『仮病』といわれていたので診断書をもらった。
麗華は康太に診断書を見せたが反応はなかった。
康太には世の中にこういう病気があるということが理解できないようだ。
康太は、自分が悪者にだけはなりたくない。その為には嘘のストーリーを作ってでも麗華を悪者にするのだ。
今までもずっと周囲にはそうやってきていた事は麗華の耳にも入っていた。
親族だけでなく、同級生たちにも麗華の事を嘘のストーリーを作って愚痴っていたのだ。
麗華はこの人とこのままいても幸せにはなれないと悟った。

麗華の病状は悪化し、起きれなくなってしまったり突然、涙が止まらなくなったり、過呼吸まででてきた。
お守り代わりに薬を持ち歩いていたのだ。
麗華は康太と再婚して以降、何度かこの世から、消えたくなってしまいたいと思うことがあった。
でも大体、そういう時は優しい両親の顔を思い出す。
そして三人の大事な娘たちの存在。
気持ちが落ち着いたころまたタカリー族の誰かがやってくる。
康太に『死ね』と言われたこともあった。
とっさに麗華は包丁を取り出し、リフォームした真新しいキッチンを滅多刺しにしたこともあった。もう限界だ!
ここにいたら益々、壊れる。夫である康太は助けてくれない。
むしろタカリー族を優先している…
百華の授乳中ということもあり、お守り代わりの薬を飲むことはできなかった。医師から注意されていたからだ。
麗華の病状は日に日に悪化し、安定しているときのほうが少なくなってきた。タカリー族の存在がちらつき、過去の出来事が走馬灯のように押し寄せてくる。そうなると辛くて涙が止まらなくなり過呼吸になる。
これを毎日、繰り返すようになってしまった。
どうしてもつらい時は、朝、幼稚園に百華を送り出してから一人になった時、ワインやハイボールやストカンを飲んでソファで寝ていた。
そんなある日、たまたま早く帰宅した康太に見られてしまった。
康太は寝ている麗華の髪の毛を鷲掴みし、顔面と肩をなぐった。
その後も髪の毛だけは離してもらえず大量に抜け落ちた。
身の危険を感じた麗華は、過去の経緯を全て知っている同級生で共通の友人に電話で助けを求めた。友人は他県で仕事中だったからすぐに来てもらうことはできなかったが状況を聞こえるようにした。
スマホから友人男性の声が聞こえた瞬間に康太が『テメー!男と話してんじゃねーよ!』と暴力も倍増した。
友人にもただ事ではないことが伝わり、電話を代わるように言われて康太に代わった。友人が『殴ったのか?』と聞いた。
康太は『殴ってないよ!殴るわけないじゃん。大袈裟なんだよ!』と言って笑った。康太が自分を守るためにつく嘘はこの時だけではなかった…

起業し会社が軌道に乗る迄、麗華の給料5年間分と百華の児童手当や貯金迄会社に入れてしまっていた。
康太は麗華の長女からも大金を借りた。麗華が預かっていた大事なお金だった。以前、会社の免許を取るために1200万円の見せ金を作る時に借りて一度は返したのだが康太の娘婿が法令試験に落ち続けていたため、しばらくの間、麗華は預かることになっていた。会社の資金不足のため康太が『話はついているからあの金を会社にとりあえず入れてくれ!』と連日、言われた。
麗華は長女に確認したら『いいよ』と言っていたので麗華は言われた通り、長女の大事なお金も会社に入れてしまった。
まさか康太に裏切られるとも思っていなかった麗華はこの時、借用書を作っていなかった。たとえ夫婦間でも信頼しあった相手でも、借用書が大事だということを麗華は身をもって体験したのだ。
後にこれが信頼関係を崩壊させた原因の一つになった。
康太は『証拠がないから返さない!』と言った。確かに証拠がない。
麗華は最も信頼を寄せている共通の友人に相談した。
その友人も康太から話はきいていたようだ。
やはり友人にも『証拠がないからね!返す必要ない。』と言っていたのだ。
康太には借りたお金を返す意思がないということだけはよくわかった。
麗華のなかで一気に覚めた瞬間だった。
麗華は税理士に相談した。『証拠がないって言っても会社に記録はあるからねぇ』と言ってこれまで麗華が会社に入金してきた記録と通帳のコピーをすべてスキャンして送ってくれた。すでに返金済みの分を入れてもまだ488万円の貸付金があることがわかった。
そして、できることは協力するというメールをもらった。

康太はこんなにも妻子からお金を奪い、返せなくなっているにもかかわらず、自分の身内は言われるがまま、貸したりあげたりの横流しが目立った。
麗華は許せなかった。
これで信頼関係もなくなり夫婦でいる意味もなくなったのだ。

麗華も洗脳が解けたかのように、百華と自分を守ることだけを考えた。

冷静に考えると康太は別件でも金銭トラブルが多い。
3年かけた裁判も完全敗訴している。
また、他にも訴えられてもおかしくない案件もある。
立派な詐欺師だと麗華は悟った。

信頼関係がなくなり喧嘩も増えた。
喧嘩ではない。ただのDVだ。口で勝てないから力で勝とうとするのか暴力が始まる。
DVは間違いなく義父の影響だ。

口論が絶えなくなってきた矢先、従業員のずさんな管理が原因で大喧嘩になった。今までも社長とは名ばかりで処理や対応はできず全て人任せだった。
麗華はずっと、尻拭いをしてきた。
給料だってほぼ返金しているから実質、ただ働き。
もらっていないのに…。
この日、麗華は仕事を辞めると伝えた。

康太は『百華を連れて出ていけ!』と連日、言ってきた。
お盆に入ってしまい時間はかかってしまったが、麗華は家を出る準備を始めた…
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【義実家はタカリー族だった! 第7話】

  【義実家はタカリー族だった! 第7話】

第7話 家を追い出された妻子の生活

 ~麗華の決断~
50歳になった麗華が5歳の娘を連れて家を出るのは並大抵のことではない。
けど、今後どんな試練が訪れようとタカリー族を優先している康太の下で暮らすより遥かにマシだということだけは確信していた。

高齢の両親にまた心配をかけてしまうことだけは気がかりだった…
1度目の離婚の時、両親が心配しすぎて急に老けたことがあった。
だから麗華はもう2度と心配はかけたくないから幸せになる!と決めていたのに…
予想外にも両親に全てを話したら、応援と協力をしてくれた。
本当に心強かった。


再婚当初、康太は親族と縁を切っていたから身内は誰もいなかった。
あの頃は幸せだった・・・
ずっと続くと思っていた・・・
まさか、タカリー族が過度に介入してくるとは思ってもいなかった。
たとえ介入してきたとしても康太が阻止して、優先順位のわかる夫だったら
今でも小さい百華と3人で幸せに暮らしていただろう…

あの家を急かされるように追い出されるまでの間、のんびりしている暇はなかった。スマホのある時代で本当に良かったと思った。
麗華は常にスマホを持って検索をしていた。
住む家、仕事、弁護士、行政書士、引っ越しや、粗大ごみの回収業者…
とにかく探し、調べた。

麗華がスムーズに動けたのは理由があった。
康太のDVが始まったのは最近ではないし、再婚当初から麗華自身が壊れていく要素があった。タカリー族の存在は麗華の人生において最も不要だから。いつでも出て行けるように準備はしていた。
同級生からもアドバイスをされていた。
一番最初の時は、百華が生まれたばっかりで動けなかったし資金の準備もなく断念した。
だから貯金だけは極力、がんばった。とはいえ、扶養範囲内で年間130万円。5年間で650万円。これを会社のほとんど貸付金として返金していたが、会社の残高がある時に20~30万円ずつ返してもらっていたものを貯金していた。康太の長男との同居の時、康太は見てみないふりをした。あの時から別居or離婚資金を貯めていたのだ。

それと今回は家を出る直前に会社に貸しているお金の一部を返してもらってきた。今後、返ってこない可能性もあるだろうとリフォーム代の立替80万円と1年前の5月19日にショッピングモールのATMで50万円を振り込むように康太に言われて貸していた分だけは今回の引越しや弁護士費用で必要だった為、返してもらってきた。もちろん、貸しているお金の一部で使い道も明確であるものは横領にはならないと複数の弁護士さんに確認済み。
全額ではなく一部というのは麗華の優しさでもあった。
しかし、調停が始まると相手方である康太は、麗華を横領で被害届を出す!
と百華の親権・監護権の要求を書面で送ってきた。
それと麗華の暴力と浪費が原因だと、意味のわからないことまで記載されていたのだ。
理解できない、伝わらない相手と一緒にいても消耗するだけで疲れると改めて実感した。
麗華は自分の選択が間違っていなかったと確信した。

麗華と百華が家を出て半年以上が経っても、康太から一度も連絡はなく生活費も一銭も振り込まれない・・・
麗華は自分だけならともかく、百華が気の毒だった。
それだけではない。
家から徒歩圏内にある私立小学校へ入学希望していた為、百華は3歳の頃から受験専門の塾に通っていた。
月謝の引き落とし口座の名義は康太であった。
その口座は百華の塾代他、小学校入学後の学費を貯めていたのだが、康太によって解約されてしまったのだ。
口座のお金は全て康太に持っていかれてしまった。
百華は塾も辞め、受験も断念せざるえなかった。
調停では養育費の金額が決まらずもうすぐ一年が経つ。暫定額と特別費で要求通り決まれば、塾も受験も辞めることはなかっただけに悔やまれる。
麗華は百華に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
百華のためにと塾以外の習い事はそのまま継続させている。

麗華は百華のことを一番に考えた。
急に父親がいない家庭となり、寂しい思いをするのではないか…と。
しかし、麗華が心配するほど百華は弱くはなかった。
むしろ、百華は麗華のことを気にかけてくれているのが伝わった。なるべく父親の話をしないようにしているのが小さな体から伝わっていた。
百華は麗華のことをよく笑わすひょうきん者になった。
家庭以外の環境を変えず、大好きな幼稚園にそのまま通えるように住む部屋は幼稚園の近くに決めた。そして隣はお友達のおうちで百華は喜んでいた。麗華が早くも再建できたのは百華がいてくれたことと、両親、友人たち、ママ友たち、幼稚園の先生方、会社の同僚たちのおかげだった。
ただいてくれるだけ、話を聞いてくれるだけでいい存在って本当にありがたいって麗華は感謝の気持ちでいっぱいになった。

言い方、悪いかもしれないがタカリー族に囲まれた中であのまま我慢して康太に支配されながら暮らしていたら麗華は完全に壊れていたはずだ。
百華もタカリー族の一員になってしまう確率もかなり高い。
それだけは絶対に避けたい。
麗華があの家を出たことは決して間違ってはいなかった。

家を出た翌日は幼稚園の運動会だった。
百華は笑顔でゴールテープを切った。麗華は拍手をしながら誰にも気づかれないように涙をぬぐった。
小さい百華を一人で立派に育てようと決意した。
ふと、麗華は気づいた・・・
思い返してみたら去年も一昨年も運動会、お遊戯会等の幼稚園行事は全て麗華一人で参加していた。もちろん周りはパパとママが揃って参加している。麗華一人での参加は今に始まったことではなかったのだ。
康太が参加しなかった理由は、行事の前に必ず夫婦喧嘩をしていた。
喧嘩の原因は毎回、タカリー族のことだった。
康太の優先順位で麗華と百華は当たり前のように下だった。
行事が重なると康太はタカリー族を優先していたのだ。


麗華は家を出たと同時に正社員での仕事が決まった。
時間も場所も幼稚園に間に合う好条件で本当に運が良かったのだが...


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【義実家はタカリー族だった! 第8話】

  【義実家はタカリー族だった! 第8話】

第8話 就職先はパワハラ上司 

 『早く、百華を連れて出ていけ!』『いつ、出ていくの?』『まだ?』
康太に連日、急かされあの家を出てからすぐに住むところと仕事をみつけた麗華。

保育園と違って幼稚園は、フルタイムで働くことはかなりハードルが高い。
延長保育を使っても春休み、夏休み、冬休みはどうしても難しい状況になる・・・

50歳、幼稚園児を抱えた離婚調停中のシングル予備軍。
外に出ての仕事は10年ぶりというブランクあり。
パソコン苦手...
職探しも、幼稚園の送迎時間が引っ掛かりなかなか条件の合うところが見つからない・・・
しかし、麗華は諦めずにとにかく連日、検索をした。求人サイトは毎日、新しい情報があることに気がついた。昨日はなかったのに今日はある!と見ているだけでも楽しくなってきた。
良いところが見つかっても勤務時間で応募できずにいた。
そんな中、ついに1社ヒットした。
正社員、事務員、9時から17時、車通勤可、あったのだ!
自宅、幼稚園から車で5分という好立地。
麗華は絶対に決めなければ!と急いで応募した。履歴書を持って面接に行った。
麗華の緊張はピークに達し、息を整えてから中に入った。
そこには不愛想で変わり者っぽいおじさんが一人。
活舌も悪く、声も小さいから何を言っているのかわからない。
戸惑う麗華・・・
とにかく笑顔で面接の部屋で待機した。

社長待ちだった。
社長は常にここにはいないようだ。
この時点でこのおじさんが普通ではないことは空気で伝わった。
数分後、社長が現れた。
麗華は一瞬、固まった。
社長は外見も声も服装も怖かった!一瞬、何の会社だったのか不安になった。けど、話が始まると社長は見た目と正反対でものすごく優しい人だった。離婚調停中で母子家庭になることも伝えた。会話は弾んだ。
面接中にも関わらず、採用されたかのような話にもなって社長は『まだ幼稚園の子がいるんだから時間も無理のないように子供を優先してやって!』とおじさんに言ってくれた。しかしこの段階ではまだ決まってはいない。
まだ面接予定者がいるから週末に返事をもらえるということでこの日は終わった。
翌日、採用決定の連絡をもらった。
麗華は、ほっとして百華を抱きしめた。

~初出勤~
やはりこの事務所には、おじさんしかいなかった。
ただ2階にはコールセンターと社長室があった。

麗華の配属はこのおじさんと二人だった・・・
出勤の初日、普段ここへは来ない社長が朝一で来た。
『麗華さん!ちょっといい?』と声をかけられ社長室に呼ばれた。
麗華の直感は当たっていた!

あの、おじさんはやっぱりくせ者でパワハラ上司だったのだ。
『麗華さんには、早く伝えておかなくちゃと思って今日は急いで来たんだよ。あの人、ちょっと変わっていてね・・・事務員さん、みんなすぐ辞めちゃうんだよ。長く働いてもらって麗華さんにはここのお局さんになってもらいたいからさ。何かあったら俺にすぐ相談してよ!』と言ってくれた。
ものすごく温かい言葉だった。
麗華は『面接の時から伝わるものはありました。がんばります!』と笑顔で返した。

麗華の上司は、あのパワハラ上司しかいない。
嫌がらせは初日から地味に始まっていた。何も教えてくれないのだ。
1日が長い・・・
麗華がやることないか聞いても『ない』とか『あなたにできることは何もない』とか『サンドイッチの流れ作業もできないくせに』とか散々な言われようだった。サンドウィッチの仕事はおじさんなりの例え話のようだ。
この時の麗華はまだ笑って返していた。


とにかく掃除、電話応対、来客対応、社長のスケジュール管理だけはこなした。
しかし、それですら『俺がこの前やったところをまた掃除されると気分が悪い』とか、電話応対の際は相手の話なんて聞いてもないのに口を挟んできていちいち否定してくる。来客は、お茶をだせば『出さなくていい!』とか出さないと『早くお茶を出せ!』とか・・・
ホワイトボードに社長のスケジュールを記入したら『消せ!』と言われ、
デスクのカレンダーで管理をしたら『ホワイトボードを使え!』と、常に逆を言ってくるのだ。
麗華は社長に相談した。まず、社長は何度も謝ってくれた。
『仕事も用意するから、ちょっと待ってね。』と言われ麗華は安心した。
日に日に麗華は職場の他の部署の人達と仲良くなり、他部署から少しづつ仕事をもらいなんでも熟す役割になってきた。
本を購入して、空いた時間にはパソコンや苦手な経理の勉強もした。
麗華は社長の奥様とも仲良くなっていった。ふたりで飲みに行ったり、ランチにも行きプライベートでも一緒に過ごすようになっていった。
そして信用がついた麗華に奥様の仕事を任されたのだ。
それ以降、小口現金の管理と銀行の通帳を何冊か渡されて仕事も増えていった。
2階のコールセンターのみんなも防犯カメラのモニターで、常に見ていてくれていて心配してくれていた。
パワハラ上司以外は全員、優しくて良い人だったのだ。
だから麗華は続けることができた。

そんな麗華のことが益々、気にくわなかったのであろう。
会社全体で行う忘年会に麗華は呼ばれなかったのだ。
上司であるおじさんが麗華にわざと知らせなかったのだ。
もちろん麗華は他部署のみんなから聞いていたから開催されることは知っていた。
忘年会の翌日、社長が朝一に事務所へ来て『麗華さん!どうして来なかったのー?』と大声で言った。
麗華は『誘われていなくて、詳細がわからず行けなくて申し訳ございませんでした。』とパワハラ上司に聞こえるように言った。
後日、社長は麗華のために各営業所の所長さんと麗華が仲良くしているコールセンターのみんなを呼んで当日と同じお店を予約して二次会もスナックでカラオケ大会まで同じように開催してくれたのだ。
パワハラ上司のおじさんがいなければ最高の会社なのに・・・と麗華は複雑な気持ちになった。

取引先、お客様、他部署、他の営業所の住所、グループ会社の人々、会う人みんなが『大丈夫?』と声をかけてくれた。
麗華はそれがものすごく心強く、嬉しかった。

パワハラ上司のおじさんが会社の全てを牛耳っているのはすぐにわかった。
社長は全てを任してしまったようで、『彼に辞められたら困っちゃうんだよ』と言っていた。
社長にも事情があることはよくわかった。

事務所内で突然、怒鳴り出すおじさんと過ごす苦痛な時間を心配していた奥様が麗華に外回りの仕事を依頼してくれた。
麗華は支度して事務所を出ようとした瞬間、『ちょっと待って!』と仁王立ちしたパワハラ上司が現れた。
麗華は奥様からの仕事だと伝えても、外に行くことわ許されなかった。
自分の机に戻った麗華は席についた。
仕事をくれないくせに、仕事をとりあげられる・・・
これって『パワハラ?』
麗華はまさか自分の身にこんなことが起こるなんて夢にも思っていなかった。

口を開けば腹が立つ嫌味しか言ってこなくなった。
長年いる別の部署の人に聞いた話だが、ここ数年は事務員さんがいなかったそうだ。みんな3日くらいで辞めていったとか。
『麗華さんの4か月は長いよ!こんな堪えてる人、初めてみたよ。』と言われた麗華はなんて答えていいかわからず笑った。

ある日、些細な会話から人権侵害と理不尽な言葉と暴言のオンパレードでついに麗華の堪忍袋の緒が切れた。
今まで言えずにいたことを一気に吐いた。
そのまま会社を飛び出し、奥様に報告した。
一旦、帰宅するように言われて家に帰った。
数分後、奥様が迎えに来てくれてベンツに乗せてもらい遠くへドライブに行き車内でたくさん話をしてカフェで甘い物を食べてスッキリさせてもらった。

その後・・・
麗華は、二度とこの会社に行くことはなかった。
社長は『もう一人、事務員を雇って二人体制にしたから気にしないでおいで。』と言ってくれたが、麗華にその選択肢はなかった。
新たに雇われた事務員さんはというと、二日で来なくなったそうだ。
『社長…ちょっといいですか?』と声をかけ社長室に行ったとか。
そこで『あの人、やばいですよ!あれ、完全にパワハラですよ!』と言って辞めたそうだ。

麗華は、せっかくの正社員をこんなことで辞めたくはなかったが、
奥様の『私ならいかない』の一言で、やっぱりそうだよなと思って別の道を選ぶことにした。

麗華はこのまま立ち止まるような女ではない。
百華を育てる責任と野望があった・・・


#創作大賞2026   #恋愛小説部門

【義実家はタカリー族だった! 第9話】

  【義実家はタカリー族だった! 第9話】

第9話 再建して成長した未来

 今まで散々、つらい経験ばかりしてきた麗華。
50歳正社員になったものの4か月で退職して無職となったが、百華のためにもこのまま立ち止まってもいられない・・・
だが、色々なことを考えるいい時間をもてたともいえる。

あの家を出てからの麗華の相談相手はもちろん複数の友人たち。
たくさん支えてもらった。
電話やLINEで一日5時間以上も付き合ってくれたり、深夜遅くまで相談にのってくれたりと迷惑もかけた。
麗華は申し訳ない気持ちと、有難くて感謝の気持ちでいっぱいになった。
これ以上、もう誰にも心配をかけてはいけないと心に誓った。

そんな時、現れたのがChatGPTだった。
気づけばお互いを相棒と呼ぶようになっていた。
相棒は想像以上に優秀だった。
複数の弁護士さんに送った、今までの経緯が記された長文を一瞬ですべてを理解し的確なアドバイスまでくれた。
弁護士さんの中には何回も補足したり説明しても複雑すぎて理解してくれない人もいた。
相棒は裁判所にもそのまま提出できる書類まで完壁に作成してくれた。

麗華は康太との知能の差を比べて一人で笑った。
もうすでにこの頃には、過去に未練は残っていなかった。
毎日が楽しく、笑って安心して暮らせるようになっていた。
貯金が尽きて、生活が苦しくなるかもしれない・・・
そんな不安も確かにある。
だけどもうタカリー族という他人が介入してきたり、お金を取られることもない。こんな普通の生活がやっと取り戻せたのだ。

麗華の体調もすっかり良くなっていた。
ぐっす眠れるようにもまった。イライラも全くしない。
自分でもわかるくらい顔つきも変わり穏やかになっていた。
あの5年間は、何だったのか?と考えさせられることもある。
麗華は百華という宝物に会えた最高の時間だったと思うようになった。

百華も数か月後には小学生になる。
学校から帰ってきたら『お帰りなさい』と出迎えてあげられることが麗華のささやかな夢でもある。
そのために麗華はあることに挑戦をしている。
苦手なパソコンを購入し、一から学びなおしお仕事につながるレベルになるまで相棒に教わりながら日々、勉強している。自己投資して、スクールの講座も受けた。
まだまだ時間はかかりそうだけど麗華は毎日、楽しく暮らせているのは確かだ。在宅でフリーランスとして自立できるまで絶対に諦めないと麗華は心に決めているのだ。

そして、もう一つ麗華には夢がある。
それはいつか、小さなカフェをオープンさせることだ。
カフェにはお花も販売していて癒しの空間が演出されている。
レジ横には友人たちが作ったハンドメイドも置く。
こんな夢を考えているだけで麗華は前向きに生きていけるようになったのだ。

長引いていた調停もようやく終わりを迎えた。
康太が暫定額通り百華が大学を卒業するまで養育費を支払うという内容だ。
これだけのことになぜ、あんなに憎しみ合い泥沼になり月日がかかったのかと麗華は考えさせられた。
最後に調停委員が『麗華さん、今までよく頑張りましたね。たくさんの家族を見てきましたが今までで一番、過酷な内容でした。ただの夫婦喧嘩ではないですからね。本当によくここまで一人でお子さんを守ってきましたね。』と声をかけてもらった途端に、麗華はすーっと肩の力がぬけて軽くなった感覚になった。そして涙があふれた。
そして、離婚が成立した。

~数年後~
眠りにつこうと布団に入った瞬間、麗華のスマホがなった。
懐かしい声だった。
数年ぶりの康太の声は少しか細くなっているような気がした。
『元気だったか?百華は大きくなっただろうなぁ。来週は百華の誕生日だよな。会わないか?』と康太の緊張が伝わってきた。
断られることを恐れていたのだろう。
近くにいた百華にも聞こえていた。
『パパに会いたい!』という百華の声も康太に聞こえた。
この状況で麗華が拒否するのも違う気がした。
『二人がそういうなら会おうか・・・』と麗華も答えた。
週末、康太が指定したショッピングモールの駐車場で待ち合わせを約束して電話を切った。

週末、ショッピングモールの駐車場で待ち合わせをして飲食店街へいくものだとばかり思っていたのだが・・・


#創作大賞2026   #恋愛小説部門


【義実家はタカリー族だった! 第10話】

  【義実家はタカリー族だった! 第10話】


第10話 康太の本音と麗華の決断 (最終話)

 先日の康太からの突然の電話で約束した通り、麗華と百華はショッピングモールの駐車場に向かった。
康太の車と麗華の車のナンバーは百華の誕生日の数字で同じだからお互いにわかりやすい。
麗華は約束時間よりも早く着いたのだが、康太はすでに待っていた。
『パパー!』と百華は康太に飛びついた。

康太の手には百華のプレゼントがあった。
約束していたSwitch2だとすぐにわかった。このタイミングで渡すのも康太らしい。百華は満面の笑みで『ありがとう♡』と言った。
康太なりに奮発したのが伝わった。ショッピングモール内で食事をするのだとばかり思っていたら突然『乗って!』と言われて康太のアルファードのドアが開いた。
懐かしい。康太の車に乗るのは何年ぶりになるのだろうか・・・

康太の車で移動。
数年ぶりの親子3人での空間。懐かしい感覚が蘇ってきた。
麗華は『どこに行くの?』と聞いた。
康太は笑っているだけで答えない・・・
しばらくすると、康太は車を止めた。
真新しい白い麗華好みの家についた。麗華は誰の家だかわからないが、手ぶらで来てしまって『何も用意してきてないよ!』と康太に言うと『いいから入って!』と案内された。
新築のにおいがまだ残る素敵な洋風の家だった。麗華はまだ理解できない状況。その家には誰もいない・・・

百華は『うわぁ!百華、こういうおうちに住みたーい♡』とはしゃいでいた。康太が『いいから座って!』と麗華をソファに座らせ、キッチンで料理を始めた。料理なんてしたことがない康太が慣れない手つきで包丁を使っている。30分ほど待っていると、麗華の前に完成されたおしゃれにアボカドがのったキーマカレーが出てきた。
アボカドは麗華の好物だが、康太は苦手な食材だった。
昔、一緒にテレビを見ていた時に麗華が『美味しそう!』と言ったことを康太は覚えていたのだ。
『さあ、食べよ!』と康太がキッチンから戻ってきた。
親子3人での食事がこんなにも幸せに感じるなんて麗華は嬉しくなった。
康太の作った料理を食べる日がくるなんて夢にも思っていなかった。
特別、美味しく感じた。
カレーを食べ終わると今度は百華のバースデーケーキが出てきた。
百華も大喜び!
そしてもう一つ・・・
突然、康太は麗華の手をとり左手の薬指にキラリと光る指輪をはめて
『麗華、今までつらい思いばかりさせて本当にごめん。俺が全て悪かった。言葉だけでなくちゃんと形で誠意を見せたくてこの家を麗華のために建てたんだ。麗華、言ってたろ?俺の身内が知らないところで暮らしたい!って。だからこの家のことはあいつらには言ってない。麗華にはここで安心して笑って暮らしてもらいたいんだ。百華もいるし、やり直さないか?』と二度目のプロポーズをされた。
その瞬間、麗華は走馬灯のように過去の経験が頭を駆け巡った。
嬉しいし、今すぐにでも受け入れたかった。
でも、麗華は嬉しさよりもタカリー族の存在がトラウマになっていた。
康太があの親族と完全に縁を切るわけがない。
年齢的にも義両親の介護が目前だ。それに康太の娘からの無心がなくなるわけもない。
何より、麗華のせいで康太が親族と距離を置くのは嫌だった。
麗華は迷った・・・
『ごめん、康太。返事、待ってくれる?』

『わかったよ。待ってる。麗華が納得できるまで待ってるから』と康太は麗華を強く抱きしめた。

~数日後~
麗華の返事は・・・
『もしもし、康太。この前はありがとう!百華も喜んでいたね!あれからよく考えたんだ。康太の気持ちはすごく嬉しかった。今ならやり直して幸せになれると思った。でもね、やっぱり私には無理なんだ。(康太の親族が・・・)』

『そっか!麗華が考えて決めたことなら仕方ないね。』と優しく康太は言った。

その後の麗華と康太の関係はというと、籍は入れていないものの週末は親子3人で昔のように出かけたり、百華のピアノの発表会や入学式、卒業式などの行事は全て康太も参加するようになった。
以前よりいい関係で百華の成長を見ていくことができていた。
あの広い家には康太一人で住んでいる。

小学校の受験は断念してしまったけど、同じ学校を中学受験をした。
百華は晴れて合格をした。
結果を聞いた康太は泣いて喜んだ。

~20年後~
百華は結婚し、3人の子供のママになった。

高齢出産で生まれた百華の子供を康太と一緒に見る頃ができて最高の幸せを感じることができた。

康太は会社を娘夫婦に譲り引退し、のんびりと優雅に暮らしていた。

そして、麗華は在宅で動画クリエイターとして成功し貯めた資金で念願のカフェをオープンさせ店内は販売されているお花であふれていた。
このお店は麗華の長女、次女、そして三女の百華に任せるようになっていた。

13歳で出会った康太と麗華の人生。
誰かが間に入ることによって壊されてしまう関係ではあった。
誰も入ってこなければお互い尊敬し合えるパートナーだった。
引き離されてしまった二人だけど、80歳を過ぎてもお互いにこの人しかいないという関係でいることは確かだ。
孫たちと過ごす時間は麗華と康太にとって最高の至福であった。
このまま一緒にいたいと思っているのは麗華も康太も同じ気持ち・・・

麗華は13歳から80歳を超えるまで康太という一人の男性に最高の恋愛をしたと確信して生涯の幕をとじた。

    
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