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【小説】忘れえぬ女(ひと) 第2章 第2話

   第2話

 濡れた頭にタオルを巻きつけ、風花はスマホを開いた。入浴の直前まで見ていたページだ。

 タップして、クリエイターネーム『ガラヤン』のページをタップする。
『フットサルメンバー、久しぶりに勢ぞろい!』のタイトルで、楽し気な様子が短い文章から伝わった。

 片手で顔に化粧水を沁み込ませながら、写真をピンチアウトする。ユニフォームに身を包んだ上目遣いの五十嵐くんが、わずかに口元を緩ませている。後ろには小さく他のメンバーも写っていた。休憩中らしく、ペットボトルを片手にベンチに座っている人もいる。

 つい見入ってしまう。記事はいつもチェックしているが、たまに上げられる写真は風景や食べものばかりだ。自撮りなんてめったにない。姿を見るのは久しぶりだった。

 嬉しすぎて、『スキ』をつけるだけでは物足りなく、コメントを残した。

『ホットなサル? わたしはホットなブタマン』

 五十嵐くんからの反応はまだない。

 中学を卒業して会えなくなってからは、こうしてSNSで五十嵐くんのことをチェックしている。

 友達経由で『ガラヤン』を見つけ、どきどきしながらフォローした。「久しぶり」というコメントと共にフォローバックしてくれた時は本当にうれしかった。

 それでも五十嵐くんとの間にある大きな壁を感じずにはいられない。同じ教室で机を並べていた頃に比べて、今はSNSのつながりしかない。それだって、こちらが一方的に記事を読んでいるだけだ。

 さっきの自撮り写真をもう一度見る。フットサルのメンバーの中には女子も混じっていた。いいなあ、わたしと代わってよ。

 風花はスマホを置くと、棚から卒業アルバムを取り出して開いた。就職と同時に一人暮らしを始め、昔の荷物はあらかた実家に置いてきたけれど、五十嵐くんの載っている小学校と中学校のアルバムは欠かせない。

 癖のついてしまったページを開くと、はじけるような五十嵐くんの笑顔が目に飛び込んできた。心臓からきゅんと音がする。

 見開きの反対側にある自分の写真が視界に入った。目を背ける。

 普段から写真を撮られる時は、必ず変顔をしていた。卒業アルバムの撮影でも同じように変顔をしていたら、カメラマンさんに何度も取り直しをされ、とうとう先生から叱られた。真面目にやりなさい。

 だから卒業アルバムには、ぎこちない笑みを浮かべた赤羽風花が写っている。ひょうきんもののブーちゃんではなく、ただのデブ女。こんな笑えないものに、なんの価値がある?

 その隣に映っている一人の女子に目を止める。見ているうちに、風花は自分が眉をひそめた険しい顔になっていくことに気づいた。彼女を目にした人は、みんな無意識のうちにこういう顔になってしまうだろう。

 写真の中の彼女は片方の目が半分塞がっており、そのせいで片目だけを釣りあげているようにも見える。

 鼻の先は削れているため、鼻の孔が縦に長かった。上唇は歪んでめくれあがっているため歯がむき出しで、相手を嘲笑しているようにも見える。まるで骸骨だ。

 幸田久子──不吉なほどに醜い彼女は、クラス中の全員から嫌われていた。

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