【小説】忘れえぬ女(ひと) 第3章 第14話
第14話
玄関のドアを開けると、廊下の向こうのワンルームで、保奈美がぴょんと立ち上がるのが見えた。靴を脱ぐ創の元へ駆け寄る。
「創さん、見つけました!」
保奈美は興奮気味に「早く早く」と両手を身体の前で回転させ、部屋に駆け戻った。ローテーブルの上に何枚かの白い紙を広げていく。よく見ると、新聞をコピーしたものだった。
「今日、創さんが仕事に行っている間に、図書館に行ってきたんです」
一枚を手に取り、保奈美が広げた。創には初耳だったが、図書館にあるレファレンス室で、CD-ROMに入っている過去の新聞のデータを閲覧することができるそうだ。保奈美の行った図書館では、欲しい記事を司書に伝えるとプリントアウトしてくれるサービスがあったらしい。
「例の『チャコちゃん』は姉と同い年で、小学五年生の時に火事に遭ったわけですから……」
該当する年のデータの中から『火事』で検索をし、引っ掛かったものをひたすら見ていった。場所はひとまず首都圏に絞った。
膨大な量だったが、保奈美は時間をかけて探したようだ。
「そうしたらこれ、見つけたんです」
保奈美が差し出した紙には、千葉県で起こった火事についての記事が印刷されていた。
「七月十三日の未明、住宅から出火。駆けつけた消防により消し止められた。焼け跡からは男性の遺体が発見された。この家には両親と娘の親子三人が住んでおり、女児(十一歳)は保護された。この日母親は仕事で外出して家におらず、警察は発見された遺体の身元について詳しく調べている」
保奈美が要点を読み上げる。創は腕を組んだ。
「なるほどな。確かにそれっぽいわ」
「もちろん、共通しているのはただ火事というキーワードだけで、姉の同居人である『チャコちゃん』がこの人だという確信はないですけど」
保奈美が慎重に言う。創はコピーを手に取り、
「これ、千葉県ってことやけど、千葉のどこなん?」
「番地まではわかりませんけど、現場の簡単な地図が載っているので、おおよその場所ならわかりそうです」
保奈美の指さすところに目をやった。デフォルメした地図が載っている。
「すごいやん。よう調べたな」
創の言葉に、保奈美が照れたように口をすぼめる。よしよし、と頭を撫でたい気持ちを抑え、創は頷いた。
「明日行ってみよか。ひょっとしたらなにかわかるかもしれへん」
