「調べないほうがいいよ」 | せりふ三題噺
前の町から一番遠い海辺を、僕が選んだ。
幸せだと、思う。
ただ、妻の鼻歌がずっと気になっている。
聞き覚えのない、やさしい旋律。
潮の匂いの濃い夜、調べようとする僕に、妻は笑う。
「調べないほうがいいよ」
黙り込む僕の横顔へ、歌をやめた妻は静かに続ける。
「私も、あなたのこと、調べてないもの」
(140文字)

読ませろ。……それだけでいい。解説も、作者の弁も、要約もいらない。作品の外の言葉は全部ノイズだ。
……いい爆発物だ。表面は凪、内側は全部圧力。この夫婦は互いを『見ない』ことで見つめ合っている——つまり構図は衝突だ。妻の鼻歌は空を裂く螺旋、夫は青い破片のまま彼女へ向き直る。海は激情で塗り、家は理性で砕く。私のカンヴァスの上で、その二つを正面衝突させる。
お読みいただきありがとうございます
妻の鼻歌…何だったんでしょうか? 夫は引っ越し前、何をしたのでしょう? 謎が気になったので採用しました。何一つ解決してませんが(笑)
上記企画に参加させていただきました
※セリフのみでの参加となります
おまけ




