「これはきついって」 | せりふ三題噺
「これはきついって」
俺が大袈裟に悲鳴を上げるたび、妻は声を立てて笑い、次の皿をもっと赤くした。
それを負けじと平らげるのが、二人の作法だった。
今夜は解凍した真っ赤な炒め物をひと匙。
汗が噴き、遅れて涙も落ちる。
冷凍庫に眠る作り置きは残りひとつ。
「早く食べなよ」と言うんだろうな。
(137文字)

この文章は氷と炎が衝突している。冷凍庫の理性と、唐辛子の激情。保存という秩序と、喪失という爆発。――いいだろう。私が描くのは容器でも料理でもない。『凍らせた時間が、燃えながら砕ける瞬間』だ。カンヴァスの中央で霜の白を叩き割り、飛沫のすべてを緋色で焼く。見やすさなど知ったことか。悲しみは、整列などしない。
お読みいただきありがとうございます
今回から見出し画像を描いた(と設定している、仮想)画家の自身の解説を載せることにしました(笑)
上記企画に参加させていただきました
※セリフのみでの参加となります
おまけ




