週刊バブルウォッチ(2026年1月15日号):なぜAI関連株は連日重いのか
文・武智倫太郎(週刊バブルウォッチ編集長)
2026年1月、相場は『材料』ではなく『空気』で売る。
ソフトバンクグループ(9984)の株価が重い。本日(2026年1月15日)の終値は4,069円(前日比 -192円 / -4.51%)。前日も下げており、短期のトレンドとしては明確に下向きだ。
ここで重要なのは、いま起きているのが『SBG固有の悪材料での崩落』というより、指数・テーマ・需給の三重苦としての下落だという点である。
SBGは日経平均に対して寄与度が大きく、下げ局面では重しとして目立ちやすい銘柄で、実際に本日も値下がり寄与の上位として言及されている。
さらに、2026年1月に入ってからは株式分割(1→4)によって『売買の回転』が上がりやすい状態に入った。分割自体は企業価値を変えない。だが市場は、企業価値だけで動かない。市場が動くのは、いつだって空気だ。
分割が効力発生日2026/1/1、比率は1株→4株。分割後の株価で見た終値の推移は次の通りだ。2025/12/30:4,400円、2026/01/05:4,615円、2026/01/06:4,719円、2026/01/07:4,653円、2026/01/08:4,300円、2026/01/09:4,263円、2026/01/13:4,447円、2026/01/14:4,261円、2026/01/15:4,069円。

分割後のチャートは、綺麗に言えば荒い。悪く言えば呼吸が浅い。上げても続かず、下げたら止まらない。
いまのSBGが売られやすい理由は、構造的に三つある。
第一に指数の寄与度だ。指数が崩れるとき、個別の理屈は後回しになる。寄与度の大きい銘柄は、良くも悪くもまとめて処理される。SBGはその代表格であり、本日も寄与度の観点から名前が出ている。
第二にテーマ株としてのAI連想だ。AIの相場は、上げるときは『未来』で買われ、下げるときは『疑念』で売られる。特に米国ハイテクが重い局面では、日本の関連銘柄も『輸入された空気』で重くなる。
第三に需給の軽さだ。分割は買いやすくする。同時に投げやすくもする。この『回転の上昇』は上昇局面では追い風だが、下落局面では燃料になる。
つまり、いまのSBGは『悪材料で崩れる銘柄』ではなく、『空気が悪い日に、先に殴られる銘柄』になっている。ここを読み違えると、相場の説明が全部ズレる。
ここからは同じ構造を、物語として描いてみる。
哭きの禿 2026。分割の卓、4000点のリーチ、四槓子、VIX跳躍
この卓は株の卓だ。牌に企業名が焼き付けられている。点棒は点棒ではない。信用だ。担保だ。呼吸だ。
そして、この卓には一つ、現実の市場に似すぎた儀式がある。株式分割。
分割が入ると卓は買いやすくなる。同時に投げやすくなる。買う手つきが軽くなり、切る指も軽くなる。この軽さを優しさだと思った者から死ぬ。
孫正義はその夜、持ち点4000で座っていた。4000点。勝負をする点数ではない。生存を許される最低ラインでもない。ただの、最後の息だ。
対面の親が笑う。点棒がある者ほど、弱者を笑う。
『禿、今日は随分と軽いな』
孫は頷いた。その頷きが妙に静かだった。
『軽いのは点数じゃない。卓ですよ』
親が鼻で笑う。
『何を言ってる。分割は投資家に優しいだろ。買いやすくする』
孫は笑わない。笑わないまま牌を並べた。
『株式分割は買いやすくするためじゃない。売りやすくするためなんです』
場が一瞬止まる。
『やっぱりね、案の定ひねた打ち方。株式分割とは常に小口個人投資家をはめることばかり考えてきた人間の発想。痩せた考え…』
誰も言い返せない。言い返した瞬間、この男の世界に引きずり込まれるからだ。
孫は続ける。
『分割で単価が下がると、みんな軽く触る。軽く買う。軽く含む。軽く投げる。それで出来高が増えたと喜ぶ。違う。血が薄まっただけです』
孫が指で点棒を弾く。軽い音。
『だから、今日の卓は軽い。軽いから、死ぬ』
孫の持ち点は4000。ここで彼は千点棒を出した。リーチ。残り3000。
卓が笑う。空気が笑う。下家が心の中で言う。(ヤケだ)(見栄だ)(死に際の花火だ)。
孫はその視線を受け止めて呟く。
『どちらが完全に禿げるまで。勝負の後は毛の一本も残さない』
この瞬間、孫の狙いは達成されていた。誰もが終わりの人間を見た。終わりの人間には放銃したくない。終わりの人間にツモられるのはもっと嫌だ。
だから手が止まる。手が止まると卓の速度が落ちる。速度が落ちると押し引きの判断が遅れる。孫は千点棒で時間を買った。時間の正体は恐怖だ。
孫の河はわざと雑に見えるように作られている。筋を消し、意図を薄め、読みを散らす。対面の親は止まれない。親番の価値は連荘で増える。相場も同じだ。一度上がったものは、上がり続ける前提で回る。
親は思う。(この3000点を潰す)(今なら潰せる)(放っておけば勝手に死ぬ? それは甘い)(ここで息を吹き返されたら、場が壊れる)。その『場が壊れる』という感覚が、すでに壊れていることに気づかない。
この卓のドラ表示牌は普通の牌ではない。人物牌が出る。人物牌は手牌に入らない。ただ、銘柄をドラに化けさせる。
めくられたのはアルトマン牌(ALTMAN)。
孫が言う。
『アルトマン牌が出たら、OAI牌がドラに化ける』
札が置かれる。
OAI:ドラ四。ドラ四。この卓ではドラが一枚で四翻相当になる。
相場の誇張ではない。相場の現実の方が誇張だ。
対面が唇を噛む。
『ドラ四……?』
孫は淡々と言う。
『CEOの一言で四倍動く。それがAI相場です』
孫は手の中でNVIDIA牌(NVDA)を四枚揃えていた。
NVDA NVDA NVDA NVDA。
暗槓。カン。乾いた音が卓を切る。
そして禿卓には、もう一つ市場に似すぎた計器がある。
電光掲示板。VIXが表示される。
VIX:18 → 23。
誰かが息を呑む。カンするとドラが増える。期待が増える。同時に恐怖も増える。
孫が言う。
『ドラが増えるのは欲です。VIXが上がるのは恐怖です。欲と恐怖が同時に増える。市場が一番狂う瞬間です』
次に孫はARM牌(ARM)を四枚揃えていた。
ARM ARM ARM ARM。
暗槓。カン。
VIX:23 → 30。
場がさらに固くなる。固くなるというのは安全になることではない。固くなるのは神経だ。この卓ではAI一色が役満だ。緑一色と同格。理由は単純だ。ここは相場卓だからだ。
孫の手はAI銘柄牌だけで染まっていく。AI一色。役満が見え始める。見え始めた役満ほど危険なものはない。見え始めた瞬間、人は押し始める。押し始めた瞬間、判断が軽くなる。分割の卓の軽さが、ここで効く。
孫はTESLA牌(TSLA)を四枚揃える。
TSLA TSLA TSLA TSLA。
暗槓。カン。
VIX:30 → 40。
対面の親の指先が震える。この震えは恐怖ではない。欲だ。役満を見たい欲。潰したい欲。自分だけが場を支配したい欲。
孫は目を細める。
『押す理由が増えましたね。ドラが増えた。VIXが上がった。どっちにしても押す』
親がカンしようとする。孫が先にカンする。
MSFT牌(MSFT)を四枚。
MSFT MSFT MSFT MSFT。
暗槓。カン。
同時にドラ表示牌がめくられる。
ゲイツ牌(GATES)。札が置かれる。MSFT:ドラ四。
掲示板が跳ねる。VIX:40 → 55。
場が終わる。終わるというのは誰かが飛ぶという意味ではない。合理性が飛ぶという意味だ。ここから先は、誰も麻雀を打っていない。市場を打っている。
孫は手牌を整え終えている。四槓子。四暗刻。AI一色(役満)。役満が三つ見える。さらにドラが化けてドラ四が積み上がる。
点数はもはや点数ではない。ニュースだ。見出しだ。煽りだ。
孫の手牌にはもう余分がない。残っているのは最後の一枚だけ。
OAI牌(OAI)。孫はその牌を卓に立てて見せた。
『オープンリーチ』
禿卓ローカル。待ちを公開する代わりに降りられない。自分で逃げ道を燃やし、相手に『押せ』という命令を出す。
孫が言う。
『見えている地雷ほど。踏まれます。市場がそうだから』
対面の親は笑おうとして笑えない。公開されている待ち。切ったら死ぬ。誰だって分かる。だが親は親だ。親は止まれない。親は流局を嫌う。親は合理性を嫌う。親は勝ちたい。
そしてVIXが55。この数字が意味するのは一つ。世界が揺れている。揺れているとき、人は早く終わらせたくなる。早く終わらせたいとき、人は踏む。
親がツモる。手の中に入ってきたのはOAI。親の指が止まる。
止まった瞬間、孫の世界に入ってしまう。孫は黙っている。黙っているのに、声が聞こえる。押せ。押せ。押せ。
親は自分に言い聞かせる。(公開待ちだ)(切れば死ぬ)(だが切らなければ遅れる)(遅れれば場が崩れる)(崩れるなら、先に潰す)。
分割の卓の軽さが、ここで最悪の形で効く。軽い判断。軽い切り。軽い押し。親は切る。OAI。
陶器の音が落ちる。その音が、相場の終わりの音に似ている。
孫の『ロン』の声。
孫が倒す。
暗槓:NVDA(NVDA×4)、暗槓:ARM(ARM×4)、暗槓:TSLA(TSLA×4)、暗槓:MSFT(MSFT×4)、単騎:OAI。
役満手が三つ。四槓子(役満)、四暗刻(役満)、AI一色(役満)。トリプル役満だ。
そこにドラが化ける。アルトマン牌でOAIがドラ四、マスク牌でTSLAがドラ四、ゲイツ牌でMSFTがドラ四。ドラ合計は14相当。
数字が狂う。だが狂っているのは計算ではない。この卓そのものだ。ここは麻雀の卓ではなく、市場の卓である。
孫は言う。
『点数は、もう意味がない。意味があるのは、あンたが見ている地雷を踏んだ事実だけ…』
対面が呻く。孫は静かに続ける。
『分割で単価を軽くした。軽くなったのは株じゃない。判断です』
そして最後に言う。
『軽い判断は、軽い切りになる。軽い切りは、必ず刺さる』
掲示板のVIXが、まだ揺れている。55のまま下がらない。
孫はリーチ棒を指で弾く。
『VIXが高いときに起きるのは、暴落じゃない。見えてるのに踏むの連鎖です』
そして孫は笑った。3000点の男の笑いだ。だがその笑いが卓を支配する。点棒が増えたからではない。恐怖が増えたからだ。
つづく…
