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ソフトバンクと楽天では、どちらが健全な企業か?

 皆さんは『横浜DeNAベイスターズ』という野球チームをご存じでしょうか? 私はこの球団名どころか『DeNA』が何なのかも知りませんでした。しかし、このチームについて調べたところ、私が日本にいた頃は『横浜大洋ホエールズ』という名前だったことが分かりました。

 それだけではなく『ダイエーホークス』が『ソフトバンクホークス』に変わっていたり、いつの間にか『楽天ゴールデンイーグルス』が誕生していたりと、日本のプロ野球の変化に驚かされました。そのため、『ソフトバンクが負けて楽天が勝った』と言われても、最初は何のことか理解できませんでした。

 このように、私はソフトバンクにも楽天にもそれほど興味がありませんので、今回の話は、忖度なしの生成AIに関する一般常識としてお読みください。

ソフトバンクと楽天は何が違うのか?

 多くの日本人にとって、両社とも『スマートフォン関連の企業』というイメージが強く、携帯電話を販売したり、キャリアを変更すると料金が安くなったりする程度の認識ではないでしょうか。

 私はSkypeが普及し始めた2004年からSkype以外の通話ツールは使わず、その後、2011年以降はWhatsAppやFacebook Messengerなどで通話やビデオ通話を利用しています。そのため、現在も電話やFAXを使っている人がいると聞くと、驚いてしまいます。

 このように、20年近く電話をほとんど使わなかったので、電話料金を気にしたことがなく、昔からNTTドコモに加え、滞在先の国々のキャリアを利用しています。

 また、海外生活が長いこともあり、以前からSIMフリーのデュアルSIM端末を使用しています。しかし、かつての日本のスマートフォンにはSIMロ掛かっており、おり、SIMカードも1枚しか挿せなかったため、非常に使い勝手が悪いものでした。このようなガラパゴス化したスマートフォンを製造し続けた結果、日本のスマートフォンメーカーは国際競争力を失い、次第に衰退していったのです。

虚業のSBGと実業の楽天

 通信キャリアであるソフトバンクの親会社のソフトバンクグループ(SBG)は、巨額の借入金を抱えながら投機を行う、非常にリスクの高い企業です。この点については、以下の記事で詳しく解説しています。

 一方で、楽天についてはこれまで詳しく解説していなかったので、今回はソフトバンクと比較しながら、楽天が如何に堅実な企業であるかを説明します。

 両社には『借入によって成長した企業』という共通点があります。しかし、楽天の投資は楽天モバイルや楽天銀行など、自社の成長戦略に直結しています。一方で、SBGの投機は主に『他社の成長』に依存しているため、楽天のほうが相対的に『実業』に近い企業だと言えます。

ソフトバンクグループ(SBG)は『虚業』なのか?

1.事業モデル
SBGは投機会社としての側面が強い
・SBGはもはや『通信会社』ではなく、『投資持株会社』としての側面が強くなっています。
・代表的な投機先には、Alibaba、Arm、Uber、WeWorkなどがあります。
・ビジョン・ファンドを通じて、世界中のテクノロジー企業に博打的な投機を行っています。
・成功すれば莫大なリターンを得られますが、失敗すれば巨額の損失を被ります。

実業の経営にはあまり関与していない
・ソフトバンク株式会社(通信事業)はグループの一部に過ぎません。
・本業である通信事業は比較的安定していますが、グループ全体としては投機事業が主力となっています。

2.SBGが『虚業』とされる理由
資産の多くが『未実現利益』
・SBGの経営の中核は、株式投機による含み益(評価額)です。
・株式市場の動向に大きく左右されるため、実際にキャッシュを生む部分は限定的です。

投機が『実体経済』に直結しにくい
・例えば、WeWorkのように投機に失敗すると、多額の損失が発生するだけでなく、実体経済へのプラスの影響もほとんどありません。
・企業価値の向上は、資本政策(株式売買、借入によるレバレッジ)によって実現されることが多いです。

ものづくりやサービス提供を直接行わない
・半導体企業であるArmを保有していますが、自社で製造は行っていません。
・AI、IoT、ロボットなどの『未来技術』に投機を行いますが、自社で技術開発を行うわけではありません。

結論:SBGは『投機によるリターン』で成り立っており、資本市場や株価の影響を強く受けるため、『虚業』に近いビジネスモデルであると言えます。

楽天は『実業』なのか?

1.事業モデル
多くの事業がリアルなサービス提供を伴う
・EC事業(楽天市場):国内最大級のオンラインモールを運営。
・フィンテック事業(楽天カード・楽天銀行):金融サービスを提供。
・通信事業(楽天モバイル):通信インフラの整備を推進。
・その他(楽天トラベル・楽天証券など):実生活に直結したサービスを提供。

『楽天経済圏』を形成
・ECとフィンテックを中心に、ポイント制度を活用して消費者の日常生活に根付いています。
・消費者の購買活動、決済、貯蓄・投資など、実体経済への影響が大きいです。
・私はポイ活には興味がなく、楽天よりもアマゾンや近所の商店街、スーパーなどで買い物をすることが多いので、楽天経済圏の影響を一切受けていません。しかし、ポイ活が趣味の人にとっては、重要なポイントかも知れません。

2.『実業』とされる理由
売上の大部分が『リアルな消費・取引』に基づく

・楽天市場での商品販売、楽天カードでの決済、楽天モバイルの通信サービスなど、実際の経済活動に密接に関わっています。
・投資主体のSBGとは異なり、『商品やサービスを販売して収益を得る』ビジネスモデルです。

事業運営のリスクもリアル
・楽天モバイルは基地局整備などの設備投資が必要で、巨額の資本を投じています。
・通信事業の成否が楽天の財務状況に大きく影響を及ぼします。

SBGほど株価に依存しない
・もちろん楽天も上場企業ですが、企業価値はECやフィンテックなどの実業の収益性によって支えられています。
・投機ではなく『サービス収益』が主力である点が、SBGとの最大の違いです。

結論:楽天は『実体経済と密接に関わるビジネスモデル』を持っており、実業の要素が強い企業だと言えます。

最終的な評価

 楽天は『サービスを売る実業』で、SBGは『投機主体の虚業』だと言えます。どちらも投資市場に依存する側面はありますが、楽天のほうが実業に近いビジネスモデルを持つと言えるでしょう。

楽天の生成AIの最新技術動向の解説

1.楽天が開発する大規模言語モデル『Rakuten AI 7B』と『Rakuten AI 2.0』
Rakuten AI 7Bとは

・『7B』は、モデルの『パラメータ数』が約70億個(7B)であることを意味しています。
・フランスのベンチャー企業『Mistral AI』が公開した『Mistral-7B-v0.1』というモデルをベースに、追加の学習を重ねて作られました。
・日本語と英語の膨大なインターネット上の文章を使って再学習しているため、日本語の漢字や語彙にも強いのが特徴です。
・『トークナイザ』という仕組みを日本語向けにカスタマイズし、文字をまとめて処理できるよう最適化。その結果、処理スピードや性能が向上しました。
・大規模言語モデルを評価するベンチマーク『LM Evaluation Harness』の日本語スコアで、同規模(7B)モデル中トップクラスとなる69.8点を記録。英語でも60.5点と、高い性能を保っています。

進化版『Rakuten AI 2.0』
・2024年12月に公開された新モデルで、『Mixture of Experts(MoE)』という構造を採用。8つの小さなモデル(専門家=エキスパート)のうち、入力された文章に応じて最適な2つが動的に選ばれます。
・これにより『実際に動くパラメータ』は13B相当(約14億)に抑えつつ、8つのモデルを合わせた処理能力は実質56B(約560億パラメータ)に近い高性能を実現。
・通常の大規模モデルと同等の性能を、約4分の1の計算コストで出せることが強みです。
・日本語・英語データで『エキスパート(専門役)群とルータ(選び分け役)』を学習し、より幅広い質問に対応できるようになっています。

 小型モデル『Rakuten AI 2.0mini』

・パラメータ数が約15億(1.5B)の小規模言語モデル(SLM)。
・ゼロから日本語・英語データで学習したモデルで、スマートフォンなどエッジデバイスでも動作可能。
・プライバシーや低コストを重視する用途に適しており、小さくても高精度な文章生成ができるのが特徴です。

学習データと品質向上の工夫

・楽天が独自にフィルタリングやクレンジングを施した高品質データセットを使用し、不要なノイズや不適切な内容を取り除いています。
・社内独自の多段階データフィルタリングやアノテーション(メタデータ付け)により、モデルの精度をさらに高めています。
・ファインチューニング(微調整)では、指示に従った回答や対話に特化させるための追加データを使っています。例えば『SimPO(Simple Preference Optimization)』という最新手法を導入し、人間の好みに沿った回答を安定的に得られるよう工夫しています。

評価結果

・日本語と英語で多様なタスクをテストする『LM Evaluation Harness』でRakuten AI 7Bはトップクラスのスコアを獲得しました。
・さらに指示チューニング後のモデルを評価するため、日本語の高度な質問集『日本語版MT-Bench』でテストしたところ、Rakuten AI 2.0が同等規模の競合モデルを上回る最高性能を示しました。
・小型モデルのRakuten AI 2.0miniも1.5Bクラスとしては世界トップレベルの日本語能力を達成しています。
・これらのモデルはApache 2.0ライセンスで公開されており、商用利用可能。楽天のHugging Faceリポジトリから誰でもダウンロードできます。

2.幅広い活用例:ECからサポートまで

EC(電子商取引)分野
・楽天は多数のサービス(楽天市場、楽天トラベル、グルメ情報、フィンテックなど)を持ち、その横断型のAIアシスタント『ユニバーサルコンシェルジュ』を開発中です。
・2024年8月のイベント『RakutenOptimism2024』で発表され、ユーザーからの自然な質問に対して商品検索や提案を行うデモが披露されました。
・たとえばレモンタルトの写真をアップして『材料を教えて』と聞くと、AIがすぐに必要な材料を提示。そこから『小麦粉はどれがいい?』という質問にも、楽天市場の商品データと連携して最適な製品をリストアップしてくれます。
・予算や用途に合わせて商品を絞り込めるので、新しい買い物体験として注目されています。

カスタマーサポート
・楽天証券では2023年に『投資AIアシスタント(β版)』をChatGPTベースで公開し、投資初心者の疑問にAIが回答する仕組みを提供しました。
・今後は楽天独自モデルへの置き換えも視野に入れ、AIによる問い合わせ対応を幅広く展開していく見込みです。
・すでに社内カスタマーサポートでのAI活用が進んでおり、メール対応やレビュー返信の下書きなどをAIがサポートする機能も検討されています。

検索エンジンとマーケティング
・楽天市場の検索機能で、これまでの『キーワードマッチ』だけでなく、『文脈を理解する検索(Semantic Search)』を導入。ユーザーのあいまいな要望にも対応しやすくなっています。
・レコメンデーションにも生成AIの技術を応用。レビュー内容などを総合的に理解して、関連商品を提示することも可能になります。
・広告やマーケティングでは、ユーザーの嗜好に合わせた広告文の自動生成やSNS投稿文のドラフト作成などにAIが使われ始めています。

モバイル領域
・2024年11月に楽天の携帯電話アプリ『Rakuten Link』に『Rakuten Link AI』という対話型AIが追加されました。利用回数に上限はあるものの、無料で質問や提案を受けられるチャットサービスです。
・将来的には、AIとの対話から直接『楽天市場で買い物』『Rakuten Travelでホテル予約』『Rakuten 証券で投資のアドバイスを受ける』といったシームレスなサービス連携が見込まれています。

法人向けサービス
・『Rakuten AI for Business』という企業向けの生成AIサービスも展開し、ドキュメントの要約や翻訳、アイデア出しなどに役立つテンプレートを提供しています。
・社内のエンジニアがコード自動生成やリファクタリングにAIを活用しており、プログラミングを効率化。さらに楽天市場の加盟店や宿泊施設の業務を手助けするAIツールも検討されているようです。

3.開発の背景・体制と提携

背景
・ChatGPTの登場でAIブームが加速する中、楽天は自社が持つ大量のEC購買データや行動データを活かし、競争力を高めたいという狙いがあります。
・2023年にはOpenAI社と協業に合意し、ChatGPTなどの技術を楽天サービスに取り入れてきました。
・一方で、独自のAIモデル『Rakuten AI 7B/2.0』を内製してオープンソース公開するなど、『外部との協力』と『自社開発』の両輪で展開しています。

開発体制
・社内には、AI研究開発をリードするCAIDO(Chief AI & Data Officer)をはじめ、海外含む多国籍の研究者やエンジニアが在籍。110名以上がHugging Faceのチームに登録し、活発に開発しています。
・楽天技術研究所やテクノロジー本部と連携し、大規模データを処理できるGPUクラスタを内製。短期間で高性能モデルを仕上げられる体制を整えました。
・オープンソースのコミュニティとも連携し、外部の優秀なモデル(Mistralなど)を学習ベースに、再訓練したノウハウをフィードバック。モデル自体はGitHubやHugging Faceで公開・共有しています。
・東京工業大学や産総研など国内の研究機関とも協力関係があり、日本語向けのAI技術の研究を互いに比較・検証する動きが進んでいます。

今後の展開
・楽天の大規模言語モデルは、社内のサービスはもちろん、他企業にも使ってもらう『楽天AIエコシステム』の構築を目指しています。
・『Rakuten AI for Business』などの法人向けサービスを通じて、企業が自社データと組み合わせてAIを活用できるよう支援しています。
・モバイル通信のインフラ面でも、全国的にAIを活用できる土台を整え、『AIの民主化』に貢献したい考えを示しています。
・オープンソースで積極的に技術を共有する方針のため、独自に特許を囲い込むよりも、モデルの標準化や共同開発を重視しているのが特徴です。

4.競合モデル(ChatGPT・Claude・Gemini・LLaMAなど)との違い

ChatGPT(OpenAI)との比較
・ChatGPTは数千億〜数兆パラメータ規模ともいわれ、日本語以外にも多言語や高度な数学能力など『汎用性』が非常に高いとされています。
・一方、楽天AIは日本語と英語に特化し、『コンパクトさ』『自前クラウドでの実用性』『ECサービスとの連携』の点で差別化を図っています。
・日本語の固有名詞や表現については、Rakuten AIのほうが得意なケースもあるとされ、楽天のECデータなど専門分野で優位性を発揮します。

Claude(Anthropic)との比較
・Claudeは安全性(有害な出力を避ける対策)に注力し、非常に長い文章(10万トークン超)にも対応できる点が強み。
・楽天AIは現状数千トークン程度の処理が標準ですが、その分軽快に動作しやすい利点があります。
・ClaudeはAPI経由でしか提供されずモデル自体は非公開ですが、楽天AIはオープンソース化しており、企業が自由にカスタマイズできる点が大きな違いです。

GoogleのBard / Geminiとの比較
・GoogleのBardは『PaLM2』というモデルをベースに多言語に対応し、Geminiはコード生成や画像処理まで含むマルチモーダル対応を目指しているとされます。
・ただしGoogleのモデル群はクローズドソース。直接モデルを入手してカスタマイズはできません。
・楽天AIはあくまでもオープンソース。日本市場でのEC連携や企業向け需要に応じた独自路線を強めています。

MetaのLLaMAとの比較
・LLaMAは7Bから70Bまでバリエーションがあり、多くの派生モデルがコミュニティに登場していますが、英語圏向けの学習が中心です。
・楽天AIは、Mistralベースをさらに日本語に最適化しており、同じ7Bクラスでも日本語のベンチマークで頭ひとつ抜けた成績を出しているのが特徴です。
・国内にも産総研や東大などが独自の大型LLMを公開し競合は激化していますが、楽天はEC・トラベルなど実サービスと強く連携しながら技術開発を進めている点がユニークです。

5.学術的な技術情報

・『Rakuten AI 7B: Extending Large Language Models for Japanese』という論文をはじめ、学術界向けにも詳しいレポートが公開されています。
・たとえば『トークナイザ』の語彙数を大幅に増やし、日本語の文字あたりのトークンを少なくする工夫で処理効率が上がったことが報告されています。
・ベンチマークテストでは、日本語スコアが他の7Bモデルより3ポイント以上高かったほか、英語でも同クラスのモデル中トップに近い成績を示したとのこと。
・『Instructモデル』や『Chatモデル』など、使いみちに合わせて微調整する際に、最新手法『SimPO』を取り入れていることも大きな特徴です。
楽天はコミュニティとの情報共有を重視しており、Hugging FaceやGitHubでモデルの仕様やコードを公開。研究者や開発者が自由にテストや改良を行える環境を整えています。
・社内の大規模クラウド環境やGPUインフラの構築・運用に関する知見も、技術カンファレンスや学会で発表し、オープンに議論している段階です。

まとめ

 楽天が開発する生成AIは、日本語と英語に特化した高性能な大規模言語モデルを軸に、EC(楽天市場)や旅行予約(楽天トラベル)、金融(楽天証券・楽天カード)など自社のサービス全体と連携する形で進化を続けています。

 オープンソースとしてモデルを公開し、他社とも連携・活用できる柔軟な体制を採るのが特徴です。大型モデル『Rakuten AI 2.0』や超小型モデル『Rakuten AI 2.0mini』など、用途に応じたバリエーションが整備されることで、ECの新しい買い物体験、カスタマーサポートの自動化、マーケティングの効率化など幅広い場面での活用が期待されています。

 また、ChatGPTなどグローバル大手の生成AIと比較すると、『日本語とEC領域への最適化』『オープンソースで商用利用OK』という点で差別化が図られており、今後も国内外のAI競争の中で注目される存在となるでしょう。
楽天としては、『AIの民主化』を掲げ、誰もが手軽にAIを使える社会を目指す戦略を明確にしており、EC業界はもちろん、日本のデジタルトランスフォーメーション全体を牽引していく動きが期待されています。

武智倫太郎

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