第80話 【婚活の闇】モテテクを全部使ったら“怪しい動きの男”扱いされた話
【もとしの爆笑日記 第80話】
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■導入(つかみ)
婚活パーティーの受付で、僕はすでに係員に二度見された。
いや、まだ何もしてない。
ただ立っていただけだ。
……のはずなのに、受付のお姉さんは僕を見るなり、少し警戒したように言った。
「えっと…初参加ですよね? 今日はリラックスして大丈夫ですからね」
いや、なんで僕は励まされてるんだろう。
その瞬間、胸の奥でイヤな予感がした。
今日の僕は、ネットで仕入れた “モテテクニック” を全身にまとってきている。
・目を細めて笑う(優しく見えるらしい)
・歩幅は女性より半歩後ろ(紳士らしい)
・相手の動きを “ミラーリング”
・話すときは相手の名前を多用
・聞き上手を演出する “うなずき3段階法”
・距離を縮める “クロス・アーム法”
昨日読んだ「モテ理論大全300」によれば、これらをフル活用すれば女性の心は自然に開くという。
しかし、胸の奥で何かがつぶやいた。
──全部やったら逆に怪しくね?
いや、でも僕は今日こそ恋をつかみ取りたい。
27歳・独身・趣味は読書と朝散歩とプラモデル作り。
家族は4人、父・母・弟。
両親からは「そろそろ孫の顔を…」と圧をかけられ、街コン・婚活の参加歴だけが無駄に増えていく。
今日は本気で“変わりたい”。
その思いだけで、僕は「モテテク全部乗せ」の危険な男になってしまった。
ただ、この時の僕はまだ知らなかった。
このモテテクたちが、後半で “恐ろしい誤解” を生み出し、僕が会場中の女性に “怪しい動きの男” と認定される未来を……。
──地獄の始まりは、すぐそこだった。
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【第一章】最初の一歩から、なんかズレてる
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会場に入ると、すでに男女が10組ほど、軽食をつまみながら談笑していた。
僕はまず、「歩幅は女性より半歩後ろ」テクニックを試そうとした。
近くにいた女性の横を通るとき、そっと半歩後ろを歩いてみた。
すると、その女性は一瞬こちらを振り返り、サッと距離をとった。
(あれ…? もう怪しまれてる?)
たぶん大丈夫だ、と自分に言い聞かせる。
まだ始まったばかりだし、これはただのウォーミングアップに過ぎない。
次のターゲット(←言い方が悪い)が入室してきた女性だったので、僕は自然に横に立ち、ミラーリングの準備をした。
女性が髪を触ったら僕も触る。
女性が飲み物を取ったら僕も取る。
女性が頷いたら僕も頷く。
──完璧。
モテ理論では、ミラーリングは「運命感じる効果」があるらしい。
だが、ここで問題が起きた。
女性が肩を軽く回したので、僕も回した。
女性がストレッチのように腕を伸ばしたので、僕も伸ばした。
女性がスマホを確認したので、僕も確認した。
……やりすぎた。
完全にラジオ体操をする怪しい男になってしまった。
女性は「えっ…」と声を漏らして、またしても距離を置いた。
(うん。たぶん、初動ミスった。)
でもまだ前半。ここから挽回できるはずだ。
なぜなら僕には “うなずき3段階法” という最強の武器がある。
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【第二章】うなずき3段階法が、もはやホラー
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会話相手として向かいに座った女性・りかさんは、優しそうな雰囲気だった。
ここで決めたい。
僕は満面の笑みで、
「こんにちは、もとしと言います」
りかさんも笑顔で返してくれた。
「はじめまして、りかです」
よし、ここからだ。
僕は “うなずき3段階法” を発動した。
① 小さくコク(相手に安心感)
② 大きくゆっくりコク(共感の演出)
③ 速く3回コクコクコク(テンションの上昇)
りかさん「仕事は何されてるんですか?」
僕「(①コク)IT関係で…(②コク)エンジニア系の仕事で…(③コクコクコク)」
りかさんの目が明らかに泳いだ。
いや、泳ぐどころじゃない。
完全に“話しかけてはいけない人”を見る目だった。
(あれ…? うなずき3段階法、怖い?)
それでも理論上は正しい。
僕はさらに名前を多用する “ネームリピート技法” を重ねた。
「そうなんですね、りかさん!」
「わかりますよ、りかさん!!」
「りかさんはどう思いますか!? りかさんは!!!」
りかさん「え…あ、はい……」
完全に引かれている。
(落ち着け、もとし……まだ終わりじゃない……)
しかし、りかさんの視線は僕の動きを警戒し始めていた。
まるで、会話中に突然踊り出すかもしれない男を見るような目だ。
ここで僕は、奥の手 “クロス・アーム法” を使おうとした。
相手の腕や姿勢に合わせて、自分の体の向きを変えることで距離を縮めるテクニックらしい。
りかさんが左腕に触れたので、僕も触れた。
りかさんが背筋を伸ばしたので、僕も伸ばした。
りかさんが飲み物を取ったので、僕も取った。
……結果、完全に “変な動きで周波数を合わせてくる不気味な男” と化した。
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【第三章】司会者の目線が、明らかに僕をマークし始めた
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休憩時間、僕は会場を歩いていた。
すると、司会者の女性がこちらをジッと見てきた。
いや、正確には「観察している目」だった。
(……なんで僕、監視されてるの?)
思い当たる節はある。
モテテクのせいで、一部の女性から距離を置かれまくっている。
“ラジオ体操男”
“うなずき高速コク男”
“名前連打マン”
……こんな男、確実に怪しい。
司会者はスタッフと何か話している。
「さっきの男性……」「動きがちょっと……」
「挙動が……」「問題が起きる前に……」
全部は聞き取れないが、どう考えても僕のことだ。
(ちょっと待って、僕ただモテたいだけなのに!?)
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【第四章】決定打となる「悲劇のミラーリング事件」
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次のテーブルで話した女性・みほさんは、すごく落ち着いた感じだった。
ここで挽回しないと、今日が終わる。
僕はミラーリングを丁寧に行うことを決意した。
・相手の動作を1テンポ遅らせる
・自然に見える角度を意識
・呼吸の速度も合わせる
完璧なはずだった。
しかし、みほさんが急に咳き込んだ。
僕は反射的に同じように咳き込んだ。
みほさん「えっ……大丈夫ですか?」
僕「い、いや……つい……」
みほさん「つい……?」
(まずい……!)
次にみほさんが席の位置を少しずらした。
僕もずらした。
みほさんは眉をひそめた。
「さっきから……なんで全部真似してくるんですか?」
ついに言われた。
(あっ……やばい、これ……後半の大爆発につながる……)
司会者もこちらを見ている。
ここで起きた “ある誤解” が、後半の地獄を生み出すのだが──
その真相は、有料部分(後半)で語ることになる。
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