第240話 【爆死】褒め言葉を噛みすぎて別の意味になった話
【もとしの爆笑日記 第240話】
導入(最初の5行)
人は、口を開いた瞬間に人生を終わらせることがある。
それを、27歳の俺は知らなかった。
いや、正確には——
「褒めただけ」で地獄に落ちる可能性を、想定していなかった。
この時の俺はまだ、
自分が“赤っ恥の入口”に立っていることにすら気づいていなかった。
「褒めれば空気は良くなる」という致命的な勘違い
その日、俺・もとしは
昼下がりのちょっとした集まりに参加していた。
場所は駅近の小さなカフェ。
時間は14時ちょうど。
アイスコーヒーの氷が、カランと音を立てる。
父・母・弟の4人家族で育ち、
読書と朝散歩とプラモデルしかしてこなかった俺にとって、
こういう“人との距離が近い場”は、正直ちょっと緊張する。
でもその日は違った。
「今日はちゃんと話そう」
「感じ良くいこう」
「褒める側に回ろう」
そんな前向きな決意を胸に、
俺は椅子に腰を下ろしていた。
期待:ここは大人として、褒めておく場面だ
話題は軽い雑談。
仕事のこと、最近の出来事、ちょっとした近況。
場の空気は悪くない。
むしろ、少しだけ“よそよそしい”程度。
(ここだな)
(ここで一言、感じのいいこと言えば流れが良くなる)
俺はそう判断した。
相手が話し終わった、その一瞬。
0.5秒ほどの沈黙。
全員がコーヒーに視線を落とした、
あの“間”。
——今なら、はっきり分かる。
あれは、何も言わなくていい間だった。
不安:口を開く直前に、嫌な予感がよぎる
でも俺は、
その沈黙を“チャンス”だと勘違いした。
喉が少し乾く。
舌の位置が、なんか定まらない。
(あれ、今どんな言い方が自然だっけ)
(褒め言葉って、どこから口に出すんだっけ)
頭の中で、
言葉が一瞬だけ渋滞する。
それでも俺は、
口を開いてしまった。
安心:ちゃんと言えてる…はずだった
最初の数音は、完璧だった。
自分でも分かる。
声のトーンも悪くない。
表情も、たぶん笑顔。
(よし、いけてる)
(ちゃんと大人の対応できてる)
その瞬間、
俺は完全に油断した。
言葉は、
最後まで気を抜かずに運ばなければいけない。
途中で噛むと、
意味が“別物”になる。
混乱:自分の耳が言葉を理解するのに遅れた
言い終わった直後。
一瞬だけ、
世界が静止した。
誰も笑わない。
誰も相槌を打たない。
さっきまでカランと鳴っていた氷の音が、
やけに大きく聞こえる。
(……あれ?)
頭の中で、
今言った言葉を再生する。
(え、俺、今……
褒めた、よな?)
自分の発言が、
“褒め言葉だったかどうか”
急に自信がなくなる。
絶望の入口:視線が合わない
相手は、
一瞬だけ目を伏せたあと、
ゆっくりと顔を上げた。
表情が、読めない。
笑っているようでもあり、
笑っていないようでもある。
周囲の人たちが、
なぜか全員、黙ったまま。
誰かが助け舟を出してくれる気配もない。
(おい)
(なんで誰もフォローしない)
(俺、今、何を言った)
背中に、
じわっと汗がにじむ。
その沈黙を破るように、
相手が口を開いた。
このあと、
“最悪の一言”が飛んできた。
(※続きは有料パートで)
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