第180話 【爆笑赤っ恥】ナンパ迷走|褒め言葉が噛み噛みで伝わらなかった日
【もとしの爆笑日記 第180話】
導入(最初の5行で勝負)
人に好意を伝える瞬間ほど、
人は自分でも引くくらい不器用になる。
「落ち着いて。言うだけだ」
そう言い聞かせた直後に、
口が裏切る未来が待っているとも知らずに。
これは、
27歳・もとしが
「褒めるだけ」のつもりで地獄に向かった日の話だ。
1. 今日こそは“普通に”いける気がした
平日の夕方。
駅前のちょっとした広場。
ベンチ、街路樹、自販機、
人通りは多いけど、騒がしすぎない時間帯。
(この空気ならいける)
朝散歩で無駄に整ったメンタル。
読書で仕入れた謎の自信。
プラモデル作りで鍛えた集中力(※無関係)。
今日は、
話しかける → 褒める → 撤退
このシンプル三段構えでいく。
狙いすぎない。
盛らない。
ただ、感じたことを言うだけ。
(俺、成長してる)
2. 視界に入った“ちょうどいい人”
少し前方。
スマホを見ながら歩いている女性。
派手じゃない。
でも、雰囲気がやわらかい。
服装もシンプルで、清潔感がある。
(こういう人に、
「素敵ですね」って言える男になりたい)
別に連絡先とかじゃない。
ただ一言、褒める。
それだけ。
なのに、
心拍数が数字で見えそうなくらい上がる。
(今ならまだ引き返せる)
(でも、引き返したら今日の俺は何だったんだ)
3. 一歩目は完璧だった(この時点では)
距離、約2メートル。
歩幅を合わせる。
声量をイメージする。
「す、すみません」
――出た。
声、震えてない。
噛んでない。
(いける)
女性が振り返る。
目が合う。
表情は普通。警戒も少なめ。
ここだ。
ここで褒めるだけ。
4. 褒め言葉が、脳内で渋滞する
本当は、こう言う予定だった。
「雰囲気、素敵だなと思って」
短い。
シンプル。
逃げ道もある。
なのに。
口を開いた瞬間、
脳内で言葉が事故を起こす。
「ふ、雰囲気が…その…
えっと…すごく…あの…」
(待って待って待って)
(まだ何も言ってないのに時間だけ進んでる)
沈黙。
3秒。
女性の目が、
「?」になる。
5. なぜか“説明”を始めてしまう
焦りは、人を饒舌にする。
しかも、意味のない方向に。
「いや、あの、変な意味じゃなくて、
その、服とか、えっと、全体の、
バランスっていうか…」
(何を説明してるんだ俺は)
自分でも分からない言葉が、
自分の口から流れていく。
女性は、
笑っていいのか、困っていいのか、
判断を保留している顔。
空気が、
じわっと重くなる。
6. 一瞬の“安心”が、最悪の油断だった
ここで、奇跡が起きる。
女性が、
小さく頷いた。
「あ、ありがとうございます…?」
(通じた…?)
(もしかして、伝わった…?)
胸の奥が、
一瞬だけ軽くなる。
(よし、ここで終わろう)
(「失礼しました」で撤退だ)
そう思った、
その瞬間だった。
7. 口が、勝手に“次の一言”を選ぶ
安心すると、
人は余計なことを言う。
なぜか、
「締め」の一言を足したくなる。
(最後にもう一言だけ)
(ちゃんと褒めたって分かるように)
そして、
もとしの口が開いた。
噛み噛みのまま、
整理されていないまま、
最悪の語順で。
このあと、
空気を完全に殺す一言が飛び出た。
女性の表情が止まり、
通行人の視線が、
なぜか一斉にこちらへ向いた。
――ここからが、本当の地獄だった。
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