ハンカチ 【Keikoの小さな話 #003】
お金というのは、いつも潤沢にあるのが理想ですが、なかなかそうもいきません。
何か欲しいものが見つかった時に限って別の出費があったり、少し余裕ができたと思ったら思いがけないことが起こったりします。
振り返れば、人生とはそういうものだったような気がします。
実は私、昔からウィンドーショッピングをしたり、デパートをあてもなくブラブラするのが好きなんです。
何を買うでもありませんが、美しい品々を眺めているだけで、目の保養になります。
そしてほとんどの場合、見るだけで終わります。
季節が変わる頃、どこかへ出掛けたくなる日、気持ちが軽やかな時。
そんな時は、売場を思うままに見て回るだけでも楽しいものです。
ところがたまに、「何か買いたいなぁ」という気持ちが、ふわりと湧いてくることがあります。
不思議なことに私の場合、その気持ちになる時は、たいてい元気な時なんです。
高価な物が欲しいというのとは少し違います。
「何か買いたいなぁ」というのは、必ずしも「何か大きな買い物をしたい」というのでもありません。
そんな時、私はハンカチ売場へ向かうのです。
若い頃は、500円ほどの花柄のハンカチをよく買いました。
淡いピンクだったり、小さな花が散っていたり。
可愛いハンカチが何十種類も並ぶ中から、一枚を選びます。
レジに持って行くと、日本のデパートらしく、店員さんがとても丁寧に包んでくださる。
その様子を眺めている時間も、私は好きでした。
ハンカチを手に入れることだけではなく、選んで、包んでもらって、持ち帰る。
一連の時間を通じて、気持ちが満たされるのです。
ハンカチが欲しかったのか、それとも何かを選ぶ楽しさが欲しかったのか、今でも分かりません。
けれども、お気に入りの一枚をバッグに入れて帰る私の足取りは、確かに軽くなったのでした。
我ながら単純なものですね。
そんな私ですが、若い頃は〝フェイラー〟などの高級なタオルハンカチの値打ちがちっとも分かりませんでした。
ところが、更年期というものを経験した50代の頃。
いわゆる「ホットフラッシュ」で、急にのぼせて思いがけず汗をかくことが度々ありました。
その時になって初めて、フェイラーの素晴らしさが身に沁みて分かったのです!
使ってみると吸水性は見事ですし、とても丈夫。
長く使えることを考えると、なるほど愛され続ける理由があるのだなぁと感心しました。
最近は可愛らしい柄も増えていますしね。
花柄のハンカチも、ちょっと高級なタオルハンカチも、私にとっては暮らしをほんの少し彩ってくれる存在です。
決して人生を大きく変えるようなものではありません。
けれども、その日の気分や体調に合うハンカチを一枚バッグに入れて出掛けるだけで、ふわっと心が軽くなります。
そんな小さな喜びをひとつずつ集めながら生きていくのも、なかなか悪くないものだと、76歳になった今、しみじみ思うのです。

