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3週間で新型投入、でも主力Proは音沙汰なし。揺れるGoogle DeepMindの内情

Googleが8月13日、新しいAIモデル「Gemini 3.7 Flash」を発表した。前のモデルであるGemini 3.6 Flashからわずか23日というスピードでの投入だ。コーディングやエージェント的なタスク向けに設計された「働き者」モデルという位置づけで、ソフトウェア開発や業務自動化での利用を主なターゲットにしている。

ベンチマークは着実に伸びている

今回のアップデートで特に強調されているのが、コーディング関連の性能向上だ。バグ修正や不具合対応を測るDeepSWE v1.1のスコアは49.0%から65.3%へ、実務に近いコーディング能力を測るFrontierCode 1.1 Mainは34.4%から43.6%へと、それぞれ大きく伸びている。自動化タスクの遂行能力を測るAutomationBenchに至っては、17.0%から30.4%とほぼ倍増したという。

独立系のベンチマーク機関Artificial Analysisによる評価でも、前モデルの52点から56点への上昇が確認されており、しかも186のモデルの中で出力速度が最速(1秒あたり340.1トークン)だったと報告されている。Web開発の分野でも、WebDev ArenaのEloスコアが1538から1588へと上昇し、より少ないプロンプト回数で実用的なアプリケーションを作れるようになったとGoogleは説明している。

価格は半額。ただし「期間限定」の注記あり


価格面でも積極的な設定がされている。入力100万トークンあたり0.75ドル、出力100万トークンあたり3.75ドルという価格は、前モデルの導入時と比べて半額に抑えられている。しかしこの価格はあくまで導入記念価格であり、2026年12月31日をもって終了し、2027年1月1日からは1.50ドル・7.50ドルへと、ちょうど倍額に値上がりする予定になっている。

海外メディアの分析では、この値上げのタイミングについて「ローンチ当日はほとんど報じられなかった」点が指摘されている。さらに、Gemini 3.7 Flashが利用できる唯一の一般消費者向け窓口である「Gemini Spark」については、EU加盟国、英国、スイス、ナイジェリアのユーザーが対象外になっているという注記も、同様に見過ごされがちなポイントとして挙げられている。

「Claude Sonnet 5より優秀」という主張


Googleは今回、業務ワークフローの自動化においてClaude Sonnet 5やGPT-5.6 Terraを上回るとも主張している。ただし、この手のベンチマーク上の優位性の主張については、これまでも各社が自社に都合の良い指標を選んで比較する傾向があり、額面通りに受け取るのは早計だろう。実際の開発現場でどう評価されるかは、今後の利用者からのフィードバックを待つ必要がある。

本命モデルが「なぜかまだ出てこない」という空気


今回の発表で一部の関係者や投資家が気にしているのは、Gemini 3.7 Flash自体の出来ではなく、むしろ「主力モデルがまだ来ない」という点だ。GoogleのDeepMind部門が開発している上位モデル「Gemini 3.5 Pro」は、7月の時点でパートナー企業とのテストが進められ「近日中」に登場するとされていたが、8月に入っても正式なリリース日は明かされていない。

投資家たちは、この主力モデルの投入がAnthropicやOpenAIとの競争でGoogleがペースを維持できるかどうかを占う試金石として注視している。CEOのサンダー・ピチャイ氏は7月の決算発表の中で、開発の遅れやコーディング分野での出遅れに関する懸念に対して、Googleの戦略への自信を強く示していた。

組織の揺らぎと、開発ペースの奇妙な同居


今回のFlashモデルのリリースは、Google DeepMind内部で相次いだ組織的な動揺のすぐ後というタイミングでもある。8月5日、DeepMindを率いてきたデミス・ハサビス氏が日常業務から一歩退き、会長職へと移ることが発表された。日々の実務は副官だったコライ・カヴクチュオール氏がCEOのピチャイ氏に直接報告する形で引き継いでいる。

さらに、Geminiの技術面を率いていた2人の共同リーダーのうち、オリオル・ヴィニャルス氏に続き、Transformerアーキテクチャの共同考案者として知られるノーム・シェイザー氏も6月にGoogleを離れ、OpenAIへ移籍したことが分かっている。今回のFlashモデルの発表時点で、Geminiを立ち上げた当初の技術トップ2人は、どちらもすでにGoogleに在籍していないことになる。この人事の動揺を受けて、Alphabetの株価は8月5日に約4%下落し、6月の人材流出以降の下落分と合わせて、時価総額でおよそ2700億ドル相当を失ったとも報じられている。

共同創業者のセルゲイ・ブリン氏がここ最近、Geminiの中核開発に一段と関与を強めているとも報じられており、組織のトップ層が揺れ動く中でも、3週間というハイペースでの新モデル投入自体は途切れずに続いている。この開発ペースの速さが、組織の混乱を覆い隠すためのものなのか、それとも混乱をものともしない開発体制の強さの証明なのか、評価は今後の展開次第だろう。

なぜ「Flash」ばかりを急ぐのか


今回のリリースパターンからは、Googleの戦略的な優先順位もうかがえる。Gemini 3.5 Proのような重量級モデルは、大規模な学習・検証コストがかかる分、開発サイクルも長くなる。一方でFlashのような軽量モデルは、比較的短い期間で改良を重ねやすく、ベンチマーク上のスコアを継続的に押し上げていくには都合が良い。

3週間に1度というペースでFlashモデルを刷新し続けることで、Googleは「開発が止まっていない」という印象を市場に発信し続けることができる。実際、AnthropicやOpenAIがそれぞれの主力モデルを巡る安全性問題やモデル間の対立実験といった話題で世間の耳目を集めている間、Googleはこうした地道なアップデートの積み重ねで存在感を維持しようとしているようにも見える。もっとも、多くの開発者や企業が本当に待ち望んでいるのは、複雑な推論タスクをこなせる主力モデルの方だという点に変わりはなく、Flashの改良だけでこの期待に応え続けるのは難しいだろう。

まとめ


コーディング性能の着実な向上と、積極的な値下げという打ち出し方は、短期的にはGoogleにとって好材料に映る。しかし、値上げ後の実質価格や利用地域の制限といった「小さな注記」、そして技術リーダー層の相次ぐ離脱という「大きな空白」の両方に目を向けると、今回の発表を額面通りに好材料と受け取っていいのか、慎重に見ていく必要がありそうだ。本命であるGemini 3.5 Proがいつ、どんな形で登場するのかが、Googleの今後を占う最大の焦点であり続けている。

参照元

9to5Google(2026年8月13日):https://9to5google.com/2026/08/13/gemini-3-7-flash-launch/
TechTimes(2026年8月13日):https://www.techtimes.com/articles/324387/20260813/google-cuts-gemini-37-flash-price-half-it-claims-top-claude-business-workflows.htm
felloai.com:https://felloai.com/gemini-3-7-flash/


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