忌み地 第三章 結花子 ②
冷蔵庫にあるあり合わせのもので、結花子はつまみを作り、冷えた発泡酒を冷蔵庫から出した。結花子と亜美はオレンジジュースをコップに注いで、男たちは発泡酒のプルタブを開けて、乾杯し、四人で酒盛りをした。
壱央がどんな目的で谷地の家に来たか、夫に知られてはいけなかったので、結花子はずっと気が抜けずにいた。夫は上機嫌で酒の相手をしてくれている。ここ最近全く見せなかった夫の様子に、少し安堵する。
「赤崎さんはどんな仕事をしてるの」
酔った夫が壱央に訊ねた。壱央が愛想良く答えている。
「デザイン関係です」
「へぇ、デザインかぁ」
亜美が口を挟む。
「壱央さんは独立してるんだよ、工業デザイナーなんだよね」
「まぁ、そうですね」
話題の中心になっても嫌がらずに受け答えしている壱央に、内心結花子は感嘆する。自分だったらこんなに質問攻めにされると、だんだん答えるのに窮してしまう気がする。壱央のコミュ力がうらやましい。それは亜美にも同じことが言える。亜美も結花子に比べたらとてもコミュ力が高い。行動力もある。優柔不断でもなく、自分の意見をちゃんと持って行動出来る人だ。けれど自分は違う。要領が悪いし、怖じ気づくと何も言えなくて、一つもいいところがない。だからこういう席で積極的に話すことが出来なかったりする。そんなとき夫や亜美を見ているとうらやましい気持ちになった。
「明日はどんな予定なの」
「予定はないです」
「それじゃあ、つまらないだろ、なぁ、結花子」
「うん」
「おまえ、ここら辺の名所を案内してあげろよ」
夫は出掛けるつもりはないらしく、結花子に車を運転して観光案内しろという。
「寿晶さんも一緒にいかない?」
「俺はいいよ」
体調不良が長引いてる夫に無理に出掛けようとは言いづらく、結花子は困ったように笑った。
発泡酒を二缶ほど空けたところで、寝ようと言うことになった。
「亜美は私と一緒に寝よ」
「旦那と寝たらいいのに」
「亜美がうちに泊まるって初めてじゃない」
「しょうがないなぁ」
亜美と結花子は居間に布団を並べて横になり、まるで修学旅行のようだと笑い合った。考えてみれば二人とも仲が良くても一緒に旅行をすることもなかった。壱央をこの家に連れてきて霊視させるという目的のために遊びに来てもらったけれど、亜美がいてくれることで結花子はいつもよりも心強かった。
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