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熊の住処【北海道一周旅行記】

去年は熊のニュースをよく目にした。本来の住処から、人間の活動範囲に出てくることが増えたのだろう。住処が減ったのか、食料の不足か。本来邂逅しないはずの熊と人間が出会い、血が流れた。

・・・さて、社会的な話題もいいが私はあまり自分の意見を持たない人間なので、どうしてもコメントが浅くなってしまう。ではなぜ熊のことを書き始めたのか。それは私が去年、北海道一周の旅をした際、強く思い出に残った場所について書きたいと思ったからである。

去年北海道に行った際、あちこちで『ヒグマ注意!』の看板を見かけた。
ただ、北海道で感じたのは「共存」だ。人間が熊の住処を脅かさない。食べ物を与えない。しっかりと住み分ける。
いや、これは観光客の楽観的な視点かもしれない。実際に住んでいる人はもっと違う思いなのかも。

知床。ここもまさに熊の住処だった。



北海道一周の旅をしている中で強く印象に残った場所はいくつかある。
今回そのうちの一つ、『三毛別熊事件復元地』について書いていきたい。


「三毛別熊事件」とは
大正4年12月、北海道苫前郡苫前村で発生した熊害事件である。巨大な熊が集落を襲い、7人の死者を出した有名な熊害の事件だ。

その現場を復元した場所が『三毛別熊事件復元地』である。

私は北海道を一周するため沿岸部を車で走っていたが、この『三毛別熊事件復元地』へ行くために山へと入った。

少しずつ建物が減っていき、森が近付いてきたように感じた。時折道路脇に立っているデフォルメされた熊の看板がいやに目についたことを覚えている。
もう4月も終わりだというのに、山を進むにつれ残雪が増えていた。
人の気配はなくなり、鹿や狐が木陰からじっとこちらを見ていた。

周辺の藪が濃くなっていく。熊の住処に足を踏み入れているような気がした。この森の奥のどこかにいるのだろう。

20分ほど車を走らせると、未舗装の道路に入る。ここからはあと少し。
こまめに「現地まであと○○㎞」という看板が立っているので、迷わずに行けるだろう。しかし、異様な雰囲気である。

未舗装の道路の両端は完全に森で、伸びきった木々がまるでトンネルのように道路を覆い、まだ日は暮れていないのに薄暗い。

道路を抜けると一気に開けた場所に出る。『三毛別熊事件復元地』である。

この日は平日ということもあり、私以外の観光客はいなかった。
シンとした森に一人。鳥や虫の鳴き声も聞こえない。
いまにも熊が出てきそうな雰囲気に鼓動が早くなった。

現地には開拓小屋が復元され、その小屋を襲う巨大なヒグマの模型もあった。それと事件について書かれた看板。
少し緊張しながらもそれらを見て回った。

熊の模型の大きいこと大きいこと。もはや怪獣である。これに襲われたらひとたまりもないだろう。

あまり長居はできなかった。恥ずかしながら風の音にさえビビっていたのだ。私はそそくさと写真をいくつか撮り、復元地を離れた。

雰囲気も相まって、強く印象に残った場所だった。

熊には熊の、人間には人間の住処があるのだと感じた。そしてそれはきっと交わらせてはいけないのだ。

少し古い看板がまた怖い
復元された小屋と熊
恐ろしい爪と牙


その数日後、知床で熊肉の缶詰を購入した。
大変美味しかった。

熊肉。これが人間の強さかもしれない。

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