一万年の孤独のひかり
孤独のひかり
緑の羽根が生え死が訪れた
いつなんどき川が氾濫し
余つた麺麭は齧られない
どうしようもない静寂が空気を貫いて
逆さまになつたピエロが笑つている
ああ 孤独だ
わたくしのことを知つている者はいない
そして天才でもない
詩は流れてゆく
わたくしの魂はどこへゆくのであろうか
迷つた末にひかつた未来はありますか
こちらの詩は、孤高の天才未満詩人霧島甚兵衛の生前最後に残した詩である。
霧島甚兵衛は生前評価されることはなかった。一部の同業者にのみ天才といわれたが、知る人ぞ知る詩人だった。ほぼ黙殺され世に出ることなくこの世を去った。
しかしなぜかは分からないが、霧島甚兵衛の死後一万年が経った現在、この「孤独のひかり」という詩がバズった。バズりというのはいつなにがきっかけで起こるのか分からない。死後一万年経った現在に、どのようにこの詩が発掘され、なぜ読まれたのかは分からない。
霧島甚兵衛は一冊の本も出していなかった。唯一この詩は、古賀コンという私立古賀裕人文学祭に出した作品で、人気投票五位を獲得しただけである。
どこにログが残っていたかというと、小さく始まった古賀コンではあったが、現在では一万年続く歴史あるコンテストになっていて、各賞と人気投票五位までの作品は伝承による永久保存が国から義務付けられており、霧島甚兵衛が唯一人気投票五位までに入った作品が「孤独のひかり」であったのである。
歴史ある古賀コンの中でも埋もれていた霧島甚兵衛を見つけたのは、インフルエンサーの私である。
