ナッシュのおしごと。
ナッシュは ゆめちゃんのおともだち。
楽しいときも悲しいときも、いつでも黙ってそばにいます。
ゆめちゃんが いつも笑ってるのが、ナッシュのしあわせだから。
まいにち ゆめちゃんに ごはんもらって
まいにち いっしょに たのしく おさんぽして
まいにち ぐうぐう ねてるだけじゃないんだぜ。
だって、おれのしごとは ゆめちゃんを みまもることだから。
ナッシュは、このしごとを とても誇らしく思っているのです。
まいにち ぐうたら のんびりしてるようにみえても
なかなか たいへんなしごとなんだぜ。
でも これを ほかのやつにゆずるきは まったくないけどね。
だって、ゆめちゃんが だいすきだから。
ゆめちゃんを しあわせにできるのは、せかいじゅうでだたひとり。
この おれさまだけ なんだぜ。
ある日、一人きりでのお留守番は寂しかろうと
ゆめちゃんがナッシュに お友達を連れてきました。
お友達は、キリと名付けられました。
ゆめちゃんが こぶんをつれてきた。
べつに さみしくないのになあ。
こいつは どたどた はしりまわって うるさいなあ。
ゆめちゃんは おれに こぶんをつれてきたつもりだろうけど
かえって てまがふえちゃったぞ。
でも まあ わるいやつじゃないみたいだし
おれの じゃまをしなければ ここにいても いいかもな。
それからもうちょっとあとのある日
ゆめちゃんは結婚することになりました。
でも大丈夫。
新しい生活は、ナッシュもキリも一緒です。
なんだなんだ。
また あたらしいこぶんか。
こんな こえのおおきい でりかしーが なさそうなやつに
たいせつな ゆめちゃんを まかせちゃおけないなあ。
きりの めんどうも みなきゃいけないのに
こいつにも いろいろ おしえなきゃいけないなんて
まったく いそがしすぎるぞ。
おいおい、ゆめちゃんが かなしいときには
だまって そばにいるのが いいんだよ。
そんなふうにはげましたって、ゆめちゃんが…
…あれ?
ゆめちゃん、わらってる。
…ふん。まあいいか。
おれのしごとが へって、ちょっとは らくになるってもんだ。
またまた もうちょっとあとの ある日
ゆめちゃんに あかちゃんができました。
ぷっくりした可愛らしい元気な男の子です。
たいき、という名前にしました。
なんだい、このへにょへにょした しんいりは。
ふにゃふにゃ ないてばかりで、なんにも やくにたたないじゃないか。
せっかく すこし しごとがへって らくになったと おもったのに。
…やれやれ。
また いそがしくなりそうだ。
ゆめちゃんは、だんなさんと たいちゃんと ナッシュと キリと
毎日 楽しく暮らしていました。
そして、たいちゃんもずんずん大きくなって
ナッシュのお世話を お手伝いできるようになりました。
(ナッシュは お世話をしてるのは自分の方だ!って言ってますけど)
お散歩だって、ゆめちゃんと一緒にできちゃうんです。
ああ、たいきもおおきくなったなあ。
もう ねんちゅうさんかあ。
おれが いろいろ おしえてやったから
ねんちょうさんになっても しっかりやっていけるだろう。
よしよし。
だんなや きりも
ちょっとは ゆめちゃんをしあわせにできそうになってきたな。
まあ おれほどじゃないけどな。
…おれは、そろそろ このしごとが できなくなりそうだ。
そこまでつぶやくと、ナッシュは大きなため息を ひとつ つきました。
おれは、だいぶ、としを とってしまった…
ゆっくり頭を上げて、ゆめちゃんを見つめます。
だいすきな ゆめちゃんが かちゃかちゃおさらを あらってる。
これが、おれの いちばんの おきにいりの けしきなんだぜ。
ちょっとさみしいけど
あとのことは こぶんたちにまかせて ゆっくりさせてもらうとするか…
ゆめちゃんがなくことは もうきっと、ないだろう。
ナッシュは、ゆっくり目を閉じました。
ゆめちゃん。だんな。たいき。きり。
そして最後にもう1回、大きく息をはきました。
ばいばい。
またいつかあえるよ。
じゃあな。
