『パラレル創作シリーズ|終わった戦争の生き残りたち|世界が壊れた夜』
わぁ〜い✨️あかりのパラレル創作シリーズっ!
いろんなジャンルの短編を、同じキャラたちで書いていく企画だよっ。性格はそのまま、生い立ちだけ変えて、毎回ちがう世界で登場するのっ。話の最後にアンケートがあって、反響が大きかったものだけ続編を書いていくよっ。あなたの一票が、次の物語を決めるっ(๑•̀ㅂ•́)و✧
今回の話はー!
天使と悪魔の戦争は、終わった。
長すぎた戦争のあとに残ったのは、焼けた街と、崩れた国と、行き場をなくした人間たちだけだった。
空には今も、天使が裂いた白い傷が残っている。
大地には、悪魔の魔力に侵された場所が広がっている。
力を持たない人間は、生き残るだけで精一杯だった。
これは、そんな終わった戦争の世界で。
一人の人間が、生き延びようとする話。
世界を壊した天使を、私は殺せなかった
戦争が終わってから、空は静かになった。
静かすぎて、気持ち悪い。
昔は空を見上げれば、何かが落ちてきた。
天使の光槍。
悪魔の黒い火。
砕けた翼。
叫び声。
燃えた人間。
今はもう、何も落ちてこない。
壊れた高層ビルの隙間から見える空には、戦争の傷だけが残っていた。
何百本もの白い亀裂。
天使が空を裂いた跡だ。
その亀裂は、終戦から三年経っても消えない。
夜になると、そこから淡い光が漏れる。
星みたいで綺麗だと言った人もいた。
私は、そうは思わない。
あれは、人間が死んだ夜の色だ。
今日の収穫は、缶詰二つ。
ひしゃげた缶を手の中で転がしながら、私は廃墟になった商店街を歩いていた。
豆の缶詰。
期限なんて、とっくに切れている。
でも膨らんでいない。
匂いも大丈夫そう。
この世界では、それだけで当たりだった。
「……今日は運がいい」
誰に言うでもなく呟く。
返事はない。
人間が減った世界では、独り言を言う回数が増える。
話しかける相手がいると、逆に怖くなるから。
崩れた看板をくぐり、いつもの寝床へ向かう。
古い教会。
屋根は半分落ちているけど、地下室だけは残っていた。
雨を防げる。
風が入りにくい。
入口が一つしかない。
寝る場所としては悪くない。
私は教会の扉を押した。
ぎぃ、と湿った音が響く。
その瞬間。
足を止めた。
……いる。
教会の奥に。
人の気配。
私はすぐに腰のナイフを抜いた。
錆びている。
刃こぼれもある。
それでも、何もないよりはいい。
「出てきて」
返事はない。
壊れた長椅子の影。
そこに、白いものが見えた。
服。
いや。
羽だった。
「……天使」
喉の奥が冷たくなった。
白い羽は、血と煤で汚れていた。
片方は根元から千切れている。
もう片方も、ほとんど焼け落ちていた。
翼を失った天使が、祭壇の前に倒れている。
長い髪。
白い服。
薄く閉じた目。
見た目だけなら、死にかけの人間だった。
でも、人間じゃない。
私は知っている。
人間の背中に、翼は生えない。
「……まだ生きてる?」
聞く意味なんてなかった。
胸が、ゆっくり上下している。
天使は生きていた。
戦争が終わって、三年。
天使族も悪魔族も、ほとんど姿を消した。
死んだのか。
別の場所へ去ったのか。
また戦う準備をしているのか。
生き残った人間には、分からない。
分かっているのは。
この世界をこうしたのは、あいつらだということだけだった。
私はナイフを握り直した。
一歩。
また一歩。
天使のそばへ近づく。
「起きて」
返事はない。
「聞こえてるなら、目を開けて」
天使のまぶたが、わずかに揺れた。
ゆっくりと目が開く。
瞳は、空に残った亀裂みたいな、薄い金色だった。
天使は私を見た。
それから、ナイフを見た。
「……人間」
声はかすれていた。
「そう」
「ここは」
「人間の寝床」
「そうか」
天使は、それだけ言った。
自分がどこにいるのか。
なぜ私がナイフを向けているのか。

何も聞かない。
腹が立った。
「天使は、みんな死んだと思ってた」
私が言うと、天使は天井を見上げた。
屋根の穴から、夕方の赤い光が落ちている。
「……そうだとよかった」
「何人殺した?」
天使は答えなかった。
私はナイフの先を、天使の喉元へ近づける。
「聞こえてる?」
「聞こえている」
「じゃあ答えて」
天使の金色の目が、私を見た。
逃げる気配はなかった。
「数えられない」
「……は?」
「戦場では、数えなくなる」
淡々とした声だった。
悲しそうでもない。
苦しそうでもない。
だから余計に、腹が立った。
「数えられない?」
「そうだ」
「あんなに人間を殺しておいて?」
「殺した」
「街を壊しておいて?」
「壊した」
「何もなかったみたいに言うな」
私の声が、少し大きくなった。
教会の壁に反響する。
天使は黙った。
言い訳をしない。
謝らない。
許してほしいとも言わない。
それが、いちばん気に入らなかった。
「……じゃあ、お前も死ね」
ナイフを振り上げる。
天使は目を閉じた。
抵抗しない。
光の魔法も使わない。
翼もない。
ただ、死ぬのを待っている。
私の手が止まった。
なぜか分からない。
喉元まで下ろした刃が、あと少し動かない
天使の首は細かった
力を込めれば終わる
こいつは天使だ
人間の街を焼いた。じ場所から来た
なのに
目の前にいるのは
翼を失って、血を流して
死ぬのを待っているだけの、弱い誰かだった
「……最悪」
私はナイフを下ろした
天使が目を開ける
「殺さないのか」
「今は」
「なぜ」
「知らない」
本当に、分からなかった
許したわけじゃない
天使が悪くなかったなんて、思っていない
ただ
抵抗もしない相手を刺して、缶詰を食べて、眠る
そんな夜にしたくなかった
それだけだった
「動ける?」
「……無理だ」
「じゃあ、そこにいて」
私はナイフをしまった
「でも、勝手に死なないで。死体があると寝づらい」
天使は、ほんの少しだけ目を細めた
笑ったのかもしれない
気のせいかもしれない
地下室に降りる前、私は教会の入口へ罠を仕掛けた。
錆びた針金。
空き缶。
割れたガラス。
誰かが入ってくれば、音がする。
この世界では、眠る前にやることが多い。
火をつける。
水を確認する。
入口を塞ぐ。
武器を手元に置く。
そして。
一緒にいる相手が、寝ている間に自分を殺さないか考える。
地下室の隅で、私は小さな火を起こした。
火を見ながら、缶詰を温める。
豆の匂いが、少しずつ広がった。
上から、鈍い音がした。
天使が動いたらしい。
「……食べる?」
気づけば、そう聞いていた。
自分でも嫌になる。
天使なんかに、食べ物を分ける余裕はない。
でも、あいつは血を流していた。
あの状態で夜を越せるとは思えなかった。
返事は、しばらくなかった。
「人間の食べ物を、天使が食べられるか知らないけど」
「食べられる」
「じゃあ、半分だけ」
「なぜ」
「質問多い」
私はスプーンを置いた。
「食べるなら来て。食べないなら寝て」
しばらくして
階段を引きずるような音がした
天使が、壁に手をつきながら地下室へ降りてくる。
翼のない背中は、思っていたより小さく見えた
「座って」
「……分かった」
天使は火のそばに座った

温めた豆を、ゆっくり口に運ぶ
その横顔を見ながら、私は聞いた
「名前は」
天使は、少し迷った
「名前を聞くのか」
「呼びにくいから」
「殺すつもりだったのに」
「今は殺してない」
天使は、火を見た。
「……ユリウス」
「天使っぽい名前」
「そうか」
「私はあかり」
「知っている」
空気が止まった
私はスプーンを握り直す
「……なんで?」
ユリウスは、豆の缶詰を見つめたまま言った
「戦場で、何度か見た」
背中が冷たくなる。
「嘘」
「嘘ではない」
「私は戦えない」
「戦っていた」
「人間が天使と悪魔の戦争で、何ができるっていうの」
「お前は死にそうな人間を、何人も運んでいた」
私は何も言えなかった
ユリウスの声は、静かだった
「崩れた建物の下から。燃えた道の向こうから。昼も夜も関係なく」
「……覚えてない」
「覚えてないか…」
「じゃあ見てたなら、なんで見逃した」
ユリウスは答えなかった。
ただ、焼け落ちた自分の翼の根元を見た。
「見逃したわけではない」
その言い方が、気になった
でも聞く前に
教会の上で
がしゃん、と空き缶が鳴った
私は反射的に立ち上がる
誰かが来た
一人じゃない。
足音が二つ
地下室の入口へ続く階段の上で、楽しそうな声がした。
「へぇ。人間の匂いがすると思ったら」
知らない女の声
「天使の匂いもするぞ?」
もう一人が、低い声で笑った。
「戦争は終わったのに。ずいぶん面倒な夜になったな」
ユリウスの顔から、血の気が引いた。
「……悪魔の気配だ」
私はナイフを抜いた。
缶詰は、まだ半分残っていた。
今日は運がいいと思った。
あれは間違いだった。
📊 アンケート
『終わった戦争の生き残りたち』第1話、読んでくれてありがとう✨
あかりが殺せなかった堕天使ユリウス。そして教会に現れた二人の悪魔――続きが気になったら投票してね!
① 悪魔二人との出会いが見たい!
あかりとユリウスの前に現れた悪魔たちは?今後の展開が気になる
② あかりとユリウスの過去を知りたい!
ユリウスはなぜあかりを知っていたのか。戦場で何があったのか読みたい
③ 荒廃した世界をもっと見たい!
天使と悪魔の戦争が残した世界で、生き残った人間たちがどう暮らしているのか知りたい
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