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アカリウム深層記録|館長日誌 第3話「地下を知る少女」ショートショート

その子は、普通のお客さんみたいに入ってきた。

白いワンピースにダークブラウンのポニーテール。柔らかい雰囲気で、ちょっとおっとりした感じの女の子。受付で「見学したいんですけど」って、控えめに笑ってた。

——ただの来館者だと、思ってた。

私がいつも通り巡回してたときだった。深層エリアの展示室、あの地下から持ち帰った異物を並べた場所。そこに、さっきの女の子が立ってた。

動かない。

展示ケースの前で、じっと止まってる。

最初は熱心なお客さんかなって思った。でも違った。あの子の目は「見てる」んじゃなかった。確認してた

知ってる人の目だった。

「——あの、少し話せますか」

振り向いた私に、あの子はそう言った。さっきの控えめな笑顔はもうなくて、真っ直ぐな目でこっちを見てた。

「私、結衣菜っていいます。……この展示物、ここの地下から持ってきたものですよね」

心臓が跳ねた。

なんで知ってるの。地下のことは誰にも——サンにもアリスにも言ってない。なのにこの子は、見ただけでわかった。

「……なんで、それを」

「実は前の管理人さんと一緒に、あの地下を調べてたんです。私」


バックヤードに案内した。お客さんがいる場所じゃ話せない内容だって、すぐにわかったから。

結衣菜はコーヒーを両手で包むように持って、ぽつぽつ話し始めた。

「前の管理人さん……あの人は、この建物の地下に何かあるって気づいてた。それで私に声をかけてきたんです。一緒に調べてくれないかって」

「結衣菜ちゃんに? なんで?」

「……私、こう見えて戦闘が得意なので」

白いワンピースの女の子がそう言うの、ちょっとギャップがすごかった。でも冗談を言ってる目じゃなかった。

「最初は順調でした。1階から10階層までは、何もいなかったんです。暗くて不気味ではあったけど、危険生物は一切いなかった。すんなり進めた」

「10階層まで……」

私は1階で骨魚に襲われてるのに。10階層まで何もいなかったって、どういうこと。

「異変があったのは11階層です。そこで初めて、危険な生物に遭遇しました。なんとか12階層までは到達したんですけど……それ以上は無理だった。危険すぎて」

「それで前の管理人さんは、この物件を売却することに決めたんです。地下が危険すぎるから」

……え。

「売却って……アカリウムを手放した理由が、それ?」

「はい。表向きの理由は違ったかもしれないですけど、本当の理由はそれです」

私が継いだこのアカリウム。前の管理人が手放した理由が「地下に何かヤバいものがいるから」だったなんて。

知らなかった。何も、知らなかった。


「それで、結衣菜ちゃんは今日なんで来たの?」

「……アカリウムが開館したって聞いたんです。新しい館長さんのもとで」

結衣菜は少し言いにくそうにしてから、続けた。

「正直に言うと、地下の様子を見に来ました。できれば自分で封鎖してしまおうと思って。新しい館長さんが地下のことを知らないなら、知らないままの方がいいって」

封鎖。この子は一人でそれをやるつもりで来た。

「でも——」

結衣菜の声が、少し低くなった。

「来てみたら、深層エリアに地下の異物が展示されてた。つまり館長さんはもう地下に入ってる。それで話を聞かせてほしいと思ったんです。……どこまで入りましたか?」

「1階だけ。1階の途中で骨魚に襲われて、それ以上は……」

言った瞬間、結衣菜の目が変わった。

「1階で、ですか」

「……うん」

「私たちがいた時、1階には何もいなかった。10階層まで、何も」

結衣菜がカップをテーブルに置いた。こつん、って小さい音がやけに響いた。

「それが今、1階にいるってことは——下にいた生物が10階層分、上がってきてるってことです。12階層に取り付けた封鎖が機能してない可能性が高い」

「……ってことは」

「最悪の場合、12階層より下の——私たちも行ったことがない領域の生物が、上がってきてるかもしれない」

背筋が冷たくなった。

「いつ地上に出てきてもおかしくない状態です。アカリウムを続けるなら——全部倒すか…それでも、発生原因もわからないし調査が必要です」

封鎖しにきたはずの結衣菜が、「封鎖じゃ間に合わない」って言ってる。

それがどれだけ深刻なことか、私にだってわかった。

「私、槍を取ってきますね、ここに置かせてもらってもいいですか?」

私はOKを出した流石に外を槍持ったままウロウロするわけにはいかないよね

だけどすぐ戻ってきた

「あ、せっかくなのでコーヒー飲んでからとってきます(*ノω・*)」


その夜、私はずっと考えてた。

地下のこと。骨魚のこと。結衣菜の話。前の管理人が手放した本当の理由。

ずっと一人で抱えてた。サンにも、アリスにも言えなかった。心配かけたくないとか、まだ大丈夫とか、そういう言い訳をずっと自分にしてた。

でも、もう無理だ。

1階に危険生物がいるってことは、住人たちのいる場所のすぐ下まで来てるってこと。私が黙ってたせいで誰かが傷ついたら——そんなの絶対に嫌だ。

翌朝。

サンとアリスを呼んだ。

「……二人に、話さなきゃいけないことがある」

サンがきょとんとして、アリスが少しだけ目を細めた。たぶんアリスは、何か気づいてたんだと思う。あの子は鋭いから。

全部話した。地下に入ったこと。骨魚に襲われたこと。結衣菜のこと。前の管理人のこと。そして——今、アカリウムの下で何が起きてるか。

サンが最初に口を開いた。

「——あかり、それ早く言ってよー!!ずっと言ってくれるの待ってたんだから💢」

怒ってた。めちゃくちゃ怒ってた。でもその怒り方は「なんで一人で抱えてたの」っていう怒り方で、目が潤んでた。

「……ごめん」

「ごめんじゃないよーー!!もぉ!!」

アリスは黙って聞いてた。全部聞き終わってから、一言だけ。

「——で、どうするの」

どうする。

答えはもう、決まってた。

「地下に潜る。調査して、原因を突き止めて封鎖する。アカリウムを守るために」

「だったら私も行く。」

アリスがさらっとそう言った。サンも鼻をならしながら「当然!後方支援は任せてよー!室内だからロケットランチャーは無理かな…?」って。

そこに結衣菜も加わった。

「私も一緒に行かせてください。あの地下のことは私が一番知ってる。……それに」

結衣菜が少しだけ笑った。あの控えめな笑顔じゃなくて、もっと強い笑顔。

「戦うことなら、得意なので」


こうして、4人の探索隊ができた。

あかり——調査担当。館長として、地下の全容を把握する。

サン——後方支援。武器開発と技術サポート。前線には出ないけど、私たちの生命線。

アリス——前衛戦闘。黒い片手長剣で近接戦闘を担う。

結衣菜——前衛戦闘。短槍による戦闘。唯一、地下の構造を知る案内役。

アリスと結衣菜の前衛。剣と槍。

正直に言うと、皆がいてめちゃくちゃ心強かった。

でも同時にわかってた。これからやることは「展示」でも「巡回」でもない。住人たちを守るために、地下に潜って、未知の危険と戦うってこと。

館長日誌を書いてる手が、少しだけ震えてる。
結衣菜の実力はわからないし、信用していいのかもまだわからない

でも——もう、一人じゃない。

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赤髪のあかり✨️創作で生きるnoteマン 相互フォロー中 わぁ〜!ここまで読んでくれて…本当にありがとう💕 いただいたチップは、ぜ〜んぶ次の記事づくりや有料記事の購入費に使って、またみんなに情報で還元するよ〜✨ 応援がめちゃくちゃ励みになるから、これからも一緒に成長していこうね💖