出版間に合う!? 0巻|本は、こうして生まれる
本は、静かに生まれるように見える。
けれど実際には、締切、迷い、修正、連絡待ち、たくさんの“ギリギリ”の上にようやく一冊になる。
『出版間に合う!?』は、出版社の編集者・相沢恒一を主人公に、本が世に出るまでの裏側を描く物語です。
間に合わせるだけでは足りない。
けれど、間に合わなければ届かない。
そんな矛盾の中で、編集者は今日も走ります。
出版間に合う!? 0巻|本は、こうして生まれる
朝の編集部は、静かなようでいて落ち着かない。
メールを開けば、装丁の確認、校正の相談、営業からの問い合わせ、作家からの連絡が並んでいる。
そのどれもが少しずつ違う種類の急ぎで、少しずつ本の形に関わっている。
相沢恒一は、出社して最初にパソコンを開き、受信欄を見て小さく息をついた。
昨夜、ようやくまとまったと思った原稿について、作家からこう届いていた。
『すみません。最後の一段落だけ、やっぱり気になってきました』
相沢は画面を見つめたまま、目を閉じたくなる。
出版の現場では、こういうことは珍しくない。
もう少しだけ直したい。
そこだけ気になる。
たぶん大きくは変えない。
その言葉の奥に、本当に必要な修正があることもあれば、ただ不安が膨らんでいるだけのこともある。
そこを見分けるのも、編集者の仕事だった。
本は、原稿だけではできない。
書く人の迷いがあって、作る人の都合があって、売る人の予定があって、ようやく一冊になる。
だから編集者は、待つだけでも、急がせるだけでもだめなのだと思う。
どこまで待つか。
どこで決めるか。
何を守るか。
どうやって間に合わせるか。
きれいに見える本ほど、その前には案外あわただしい時間がある。
書店に並ぶころには整って見える一冊も、その前には誰かが迷い、誰かが走り、誰かが「本当にこれで出していいのか」と立ち止まっている。
それでも、本を出したい人がいる。
届けたい言葉がある。
だから編集者は、今日もまたメールを返し、原稿を読み、会議室へ向かう。
本は、間に合わせるだけでは足りない。
けれど、間に合わなければ届かない。
そのギリギリのあいだで生まれる一冊の物語。
それが、『出版間に合う!?』です。
――続きは、Vol.1『原稿、まだですか』へ。
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