詩人相談室|0巻
静かな路地を少し入ったところに、
“灯り亭”という小さな喫茶店があります。
ふだんはゆったりとした音楽が流れ、
窓際の席には、いつも小さなランプが灯っています。
そのランプの下で、
今日も一冊のノートを開いているのが
この物語の語り手――詩森はるです。
はるは、詩を書く詩人であり、
人の心に触れる“相談役”でもあります。
とはいえ、かた苦しいことは何もしません。
ただ、話を聞き、コーヒーを置き、
必要なときにだけ、そっと言葉を渡すだけ。
灯り亭には、
毎日の小さな悩みを抱えた人がふらりと訪れます。
仕事で気を遣いすぎてしまった人。
過去の失敗に心が縫いつけられている人。
誰かの表情に振り回されてしまう人。
「大丈夫なふり」がくせになって疲れてしまった人。
悩みはいつも大きくなく、
誰にも言えないような“日常の揺れ”ばかり。
だけど、その小さな揺れにこそ
本当の痛みが隠れていることを、
詩森はるは知っています。
たとえば、ある日の相談者は、
「昨日の会話を思い返して落ち込んでしまう」と
ぽつりとこぼしました。
はるは少し笑って、こんな詩を書きました。
――――
帰り道に
心の中で始まる反省会
叱らなくていい
ただ
今日の自分に
“よく頑張ったね”を
ひとつだけ
――――
その人は、深く息をついて帰っていきました。
灯り亭で交わされるのは、
だれかを変える劇的な言葉ではありません。
ただ、すこし息がしやすくなるような、
心の重さをひと匙すくいとるような言葉だけ。
でも、人は時々、
その「ほんのひと匙」を必要とします。
このシリーズでは、
灯り亭を訪れる人々の小さな物語と、
彼らに寄り添う詩森はるの言葉を
5話ずつ収めています。
心がざわつく夜、
寝つけない日、
疲れた帰り道。
そんなときにページを開いてほしい本です。
ここまで読んで、
「もう少し灯り亭の空気を味わいたい」と
思ってくださった方へ。
続きは Kindle版 本編Vol.1 に収めました。
1話目は“人に気を遣いすぎてしまうあなたへ”。
もし、あなたの心にも
そっと触れるものがあれば嬉しいです。
